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「酒は百薬の長」のルーツをさぐる
こんにちは、244です。今日は何やら大げさそうなタイトルでお話しします。
あなたはこの言葉を少なくともどこかで一度以上は聞いたことがあるかと思います。
そうです「適量の酒はどんな良薬よりも効果がある」とお酒を賛美したフレーズですね。飲兵衛の皆さんにとっては金看板。これがあるから酒が堂々と飲める(と言いつつ、飲んだくれは絶対数杯程度でやめないから、実質有名無実化しております)。
Jカーブ効果
この言葉も聞いたことがあるかもしれません。酒はゼロより少量を嗜む方がより健康的になれるというアレです。
↓ここに何やら業界の人が頑張って書かれております。
Jカーブ効果については、後述するとしましょう。
誰が言い出したものか
そもそもこの「酒は百薬の長」という慣用句、発祥元はどこにあったかご存知でしょうか。
中国の皇帝(を名乗り「新」を建国したという)・王莽(おうもう)が酒を称えていった言葉で、『漢書・食貨志下』には「夫れ塩は食肴の将、酒は百薬の長、嘉会の好、鉄は田農の本」とある。
酒は百薬の長 南野徹 アンチ・エイジング医学
Vol.8 No.5, 107-107, 2012
そうです、やはりルーツは中国。三国志よりちょっと前の時代の新という時代に遡る話です。
「塩は穀物以外の食物の将帥、酒はあらゆる薬の長で、めでたい宴会にも欠くことができない。鉄は農耕具の基本である」
自称?皇帝の王莽という人物は上記を掲げ、この3つを産業の礎(王朝=政府の専売品)として推し進めようとしていました。
つまるところ、「酒は健康に良いから飲もうぜ」というのは主張としてはありますが、あくまでもセールスコピーであって、酒で税をむしり取るためにこんな言葉を王莽さんは思いついて(周りの家臣が言ったのかもしれませんが)推し進めたということが推測できます。
つまり、庶民には酒をたんまり飲ませ、税金取るぞ!と言いたかったということのようでした。
嘘つきめ、全然健康じゃないだろ
そもそも王莽とはどのような人物だったのでしょうか。
前漢末頃から朝廷の実権を握り, ついには平帝を毒殺して「新」を建国、そこの皇帝を名乗った。
前皇帝を毒殺とは、時代が時代とはいえ、あまり穏やかな人物ではなさそうですね。
王莽は連年矢継ぎ早に変革を行っていったものの、それらを断行する実力もなく、またあまりにも性急な変革のためにすべて失敗した。
おまけに対外政策にも失敗したため、辺境では匈奴をはじめとする諸民族の乱が相次いだ。
こうした失政のために人々の生活は当然苦しくなり、「赤眉の乱」などの騒乱・反乱が各地で起こり、結局、王莽は長安で自滅する。
「新」という国はわずか15年の命だった。
見事にやらかしまくってますね
やはり、どうしようもない人物でした。結局、酒は百薬の長作戦も失敗に終わっていました。
ということで、この言葉の正体は古代中国のどうしようもない権力亡者のセールスコピーにすぎませんでした。
ただ、この言葉は王莽の時代から古代の酒好きが上手いこと引き継いで尾ひれをつけ、独り歩きさせ(または勝手に歩いて)、現代まで生き残ったものにすぎないとも言えます。
逆に言ったら、恐るべし酒・・・ですが、いかにも酒さんの考えそうなことです。酒さん自ら考える脳はありませんが、周りが勝手に考えちゃいますからね。
いかに酒のドーパミンが強烈か。王莽よりも、むしろ2千年も前からこの言葉が残り続けていることの方が凄い。
Jカーブ効果の嘘
さて、話をJカーブ効果に戻します。割と最近ですが、この言葉も嘘であることが暴かれました。
非飲酒者と比較すると、少量しか飲まない人でもそれらのリスクは高く、飲酒量が増えるにつれてリスクは急激に上昇していくと推測されました。心筋梗塞、心不全、脳卒中、心房細動、そして、あらゆる原因による死亡も、飲酒量との間に同様の傾向を示しました。
今回得られた結果は、ごく少量しか飲酒しない人でも非飲酒者と比較した心血管リスクは高くなること、飲酒量とリスクの関係は直線的ではなく指数関数的で、飲酒量の増加がリスクの顕著な増加をもたらす可能性を示し、適度な飲酒が心血管疾患のリスクを減らすという従来の定説を否定しました。
記事の前段に様々な要件定義や実験的見解が書かれていますが、結論はこの通りです。Jカーブ効果は否定されています。
少しでも飲んだらガンや心筋梗塞などの元になります。それが酒さんの正体のひとつです。
結論
酒は百薬の長も嘘
Jカーブ効果も嘘
酒さんが怖いのは、そこに含まれるアルコールそのものが依存物質であるということです。だからどんな毒性があろうと、酒好きな人はこの世にこれだけいるし、何より合法なので、完全な悪者にはされません。またそこが狡猾。
100年前のアメリカでは禁酒法が制定されましたが、それもわずか10年で失敗に終わっています。
今の世の中でも、酒が悪いのではなく酒を飲んだ人を悪く仕立てるようにシステム化されています。
だからこそ酒さんは底知れない恐ろしさを持っています。ある意味、どんな薬物よりもラスボスと言ってよいでしょう。
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「酒と言う名のラスボス」
やっぱり酒は飲まないことに越したことはありませんでした、と私は今日も私に言い聞かせます。
ここまで読んでいただきありがとうございました。よろしければスキをいただけますと執筆の励みになります。ではまた!