きみのおめめ 私がそれをかわれたら #19
「なんだかあたまがいたい」
心が跳ねると同時に駆け寄った。
リビングに置いているグレーのブランケットにくるまり、ソファの端で体を小さくしていた。
体温計を脇に差し込みながら額に触れた。お昼ごはんを食べたあと、キッチンで洗い物をしていた冷たい手に、じわりと熱が染みわたる。
頭をなでるともたれかかってくる娘は、いつもよりずしりと重い。
病院にいこう、そういうと「ん」と弱々しく返ってきた。
触れた部分だけが、妙に汗ばんでいた。
口数が少なく、うつらうつらとする娘の頬を指の背でなでる。触れた部分が、ちり、と痛んだ。
病院で診断を受けたあと、薬局で薬を受けとる。
細切れにある待ち時間のたび、娘は目を閉じて横になった。
家に帰り、高熱を持った体をベッドへゆっくり降ろす。娘は目を瞑ったままちょうどよい場所をもぞもぞと探し、しばらくして動きを止めた。横になって丸まった体にふとんをかける。
汗ばむ額に前髪が張りついていた。横に座ってその前髪を指で整える。指先に熱がまとわりついた。
寝返りもせず動かない娘の呼吸を確かめるため、何度も口元に手の甲をかざす。
すう、すう、と吐く息までも熱く、その熱が触れるたび、私は繰り返し同じことを思うのだ。
(今は元気になりました!)
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