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alinco_life
きみのおめめ 平日の朝に #14
まどろみの中、けたたましく鳴る目覚ましに意識をぐいと引っ張られ、枕元を乱雑にかきまわす。小指に充電ケーブルが触れ、釣り糸のようにスマートフォンをたぐり寄せる。半分ほど顔を上げ、ぶらりと中に浮く液晶画面に表示される、逆さになった時刻を見る。眉間を寄せ、スヌーズにするか否かを一拍、考える。考えても仕方がない。起きなければと判断する。身をよじって右側を向く。うっすら口を開け、すう、すう、と規則正しい寝息を立てながら眠り続けるに娘にどう声を掛けるか。否、どう機嫌よく起きてもらうか。娘の機嫌次第で、朝の徒労は昼まで引きずるものになったり、夕方まで背中にべったり張り付いてくる。朝ごはんはどうしよう。トーストにバターを塗るか、ハチミツを掛けるか、それとも両方か。牛乳は冷たいままか、砂糖を入れてすこし温めるか。そう考える思考の隅で、ただ、この寝顔をもうすこし見ていたいとも思う。
結局、たっぷり10秒数えたあとに、「おはよう、朝だよ」と娘のやわらかい髪の毛をなでる。
ぐっと眉を寄せたあと、流れるまつ毛がふわりと動く。そのまま大きなあくびをしているきみの目が、すっとひらくのを待った。
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