きみのおめめ　おしゃれなくつした　#18

「おしゃれな服ってどんなの？」
と娘から聞かれたことがある。
聞くと、私がよく夫の服をほめるので気になったらしい。
自分の好きな服を着たらいいよ、と伝えてもしっくりこない顔をしていたので、ととにヒントを聞いたら？と言うと「そうする〜」と軽い足取りで向かっていた。
クローゼットの前で話しているふたりの声が聞こえた。夫は、私と同じように「好きな服を着ればいいと思うけど」と前置きをして、ととが服を選ぶときは、と話し出した。娘は夫を話しを真剣な顔で聞き入っていた。

今朝、急いで急いでと繰り返す私を尻目に、紺色とオレンジ色の靴下を床に並べ思案していた。
グレーと白のボーダーの長袖シャツに、紺色のパンツをはいている。
「ととは、ほかのお洋服にある色の靴下がいいよって言ってたけど、娘ちゃん、オレンジもいいかなって思ってるんだよね」
うーんと唸る娘に、通りがかった夫が、
「紺色いいね、オレンジも差し色にいいね！」
と伝えると颯爽と洗面所へ駆け込んでいった。
はっとした顔の娘に、差し色ってなあに？と聞かれ、うーん、なんか、アクセントになる、おしゃれな色のこと？としどろもどろで答えた。
おしゃれ、とちいさくつぶやいた娘は、
「今日はこれにする！」とオレンジの靴下を手に取った。

玄関で靴を履く。
娘も靴のマジックテープをきゅっと締める。
夫がネクタイをしめ、ばたばたと茶色い革靴をシューズクローゼットから取り出す。
「あ、靴下オレンジにしたんだね」
かわいいね、という夫に、娘は嬉しそうに一度だけ軽く跳ね、
「おしゃれなさしいろ、だからね」
と言い、へへへ、と笑った。