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熱情を前に、静寂。


ざり、ざり、ざり。
砂利道を歩き、鬱蒼と茂る木々に囲われた古民家に着いた。
古いガラスがはめ込まれた戸は、手を掛けると、ぎい、と鳴く。

「お邪魔します」
しんと静まる薄暗い部屋の奥から、あい、と小さく聞こえる。

三本足のスツールに座り、じっと己の手元を見る作務衣姿の男性がいた。

窯元が絵付けする様子を見たい。

そう思った翌週、佐賀県の有田市へ飛んだ。

落ちてくる光は、深く皺が刻まれた手元を照らす。

漂う粉が、窯元の呼吸に、ふわり、ふわりと舞い、白熱灯の光にきらきらと踊る。

音を立てないよう近づくと、小さな鉢にある薬液が、ツンと鼻を刺した。

窯元が新しい筆を鉢につけ、筆先で、すう、と優しく縁を撫でた。
ゆらり、と、素焼きされた皿の前に筆をかざす。

筆が、ぴたり、と動きを止めた。

熱情を前に、静寂。

私は、息を吸うことを忘れた。

作品に注がれる生一本な瞳は、冷たい雪を溶かすかのごとく、じりじりと、熱い。

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にわのあさ
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