白無垢の花嫁
わあ、と歓声が響いた。
遠く、朱塗りの廻廊に白無垢の花嫁が見える。
広島湾に浮かぶ宮島。
島の海に面して、厳島神社が立つ。
海は満ち、朱色の廻廊は足元を海水に飲み込まれていた。
下を覗くと、小さな魚が群れになって泳ぐ。
柱の間から差す光が、朱色を照らす。
淡い光は、うっすらと花嫁に降り注ぐ。
その中を、色節の紅白はたおやかに歩む。
しゃなり、しゃなり。
きい、きい、と板を踏む花嫁の足音が近い。
手には、金の刺繍が入った末広が添えられていた。
うつむく綿帽子から、すう、と差された朱い紅が覗く。
純一無雑な白の中に、その赤が、艶やかに光る。
「おめでとうございます」
名前も知らない花嫁の、黒い瞳が揺れる。
一呼吸置いて、口元の朱い線が、きゅっと上を向いた。
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