シェア
にわのあさ
2021年9月8日 13:46
木漏れ日が娘の頬に落ちたとき、ふと泣きたくなった。 じいじいと鳴く声をたよりに枝という枝を見つめてセミを探す。伸びた羽に流れる翅脈は木の幹と同化し、生暖かい風に揺られる葉の影がそれを一層見えにくくする。頭上でけたたましく鳴いているのに目を凝らしても見つけられず、10メートルほど離れた場所にいる娘に目をやる。 昨年買った麦わら帽子を深くかぶり、先ほどの私よりも長く、まっすぐに枝を見上げている。