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あたたかい箱
続く真っ暗さがたまに怖くなる映画館で、私は温かい繋がりのようなものを感じていた。そんなことははじめてだった。
その映画は、若い子が2人で観るような、みずみずしい作品だった。
私の左隣には、一つ席を空けて高校生のカップル。
斜め後ろにはまたカップル。
思ったほど居心地は悪くなくて、すんと座ってスクリーンを見つめていた。
例えば、きゅんとするシーン。恋人の間の秘密めいた会話。
若いすれ違い。
そんなシーンが訪れるたびに、横の男の子がジュースを飲む。
前の方に座る誰かが動いた音がする。
多分、高校生の男の子。
映画を観ても、その子たちを見てもうらやましいと穏やかに思う程度で、とにかくそこは微笑ましい空間だった。
最後に近い、気持ちがぎゅっとなるシーンでは、隣の二人が見つめ合ったか、それとも手を繋いだか。
映画に集中していたのに、どこかで同じ箱の中にいる人たちの気配を見守っていた。
スクリーンの中の子たちも、こっちの子たちも一生懸命でかわいい。
こんな感覚ははじめてだ。