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きょうとてあめ
京都に行くと雨が降る。すると、雨が降ると京都を思いだす。
15歳の修学旅行で行った京都では、一日中冷たい雨が降っていた。誰もが傘をさすものだから、歩きづらいことこの上ないし、視界が遮られて金閣寺がよく見えなかった。
三年坂は傘と人で溢れていたが、緩やかに伸びる通りに降る静かな雨は風情があって、店に入ってお土産を見つつ雨宿りをしたい気持ちと、向こうに見える建物を見つめていたい気持ちが闘っていた記憶がある。
21歳の就職活動で行った京都では、以前と季節が同じだったせいか、やはり冷たく静かな雨が降り続いていた。スーツやパンプスは濡れて、片手に傘、反対の手にスーツケースを握ってまっすぐな道を歩いた。喫茶店と漢方を売る店が並ぶ通りだった。雨が降っていても、いや雨が降っているからなのか、それらの匂いー京都の匂いが何度も流れてきた。
今日は雨が降りそうだ。そういえば、雨と京都は似ているところがある。
静けさと、研ぎ澄まされた「何か」。私の場合、何かとは京都では雨で、雨の日では京都なのだが。
京都に行くと雨が降るので、雨が降るとここが京都であればと思う。
お土産のお香は、あと一本。