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賄賂を渡すトンカツ屋
今日は『賄賂(わいろ)を渡す』奈良市のトンカツ店という、ちょっとユニークな内容です。
元々定食屋として営業していたお店ですが、このコロナ渦で外食需要が縮小しているため、他店に倣って一時的にお持ち帰り専業に切り替えることを決断されたそうです。
元々お持ち帰りも併用して営業はしていたので、レジに『お持ち帰りメニュー』を印刷して並べていても、なかなかメニューを持って帰ってもらえないことが多く“何か工夫が必要だなぁ“と感じている矢先でのお持ち帰り専業への切り替え。
店主はこの店のお待ち帰り需要の低さを目の当たりにしていたため“このままでは経営が成り立たなくなる“という不安を抱き、なんとか「持ち帰りができるトンカツ屋」という認知を広げようと模索した結果『賄賂(わいろ)を渡す』という結論にたどり着いたそうです。
賄賂を渡すとはどういうことかというと、あからさまに『賄賂』と書かれた封筒に、持ち帰りのメニューといくつかの特典を入れてお客様に渡すという至ってシンプルなものなのですが、お渡しするときに『店長からの賄賂です』と言ってお渡しすることで、ほとんどのお客様が笑顔になってくれるそうで『人生で初めて賄賂をもらった!』などと喜んでくださっている方も多く、中には『おぬしも悪よのう』と乗ってくださるお客様もいらして、お客様とのコミュニケーションの機会が増え評判を呼んでいるとのこと。
ツイッターでも「アイデアが秀逸!」「買収されてしまうなんて...」「暗い気持ちが明るくなりました」といったコメントが多く、コロナ渦で飲食店を取り巻く話題が混沌としている中、一際明るく営業をされているユニークなお店です!このような反響に店長も
『少しでも喜んでいただけるのが本当にうれしいです、スタッフも頑張って準備してくれています、実は次の企画も考えています。一瞬でも笑顔になってもらえるように、これからも取り組んで参ります』
とコメントしており、この先どんなアイデアが生み出されるのかとても楽しみです。
僕はこの休業期間に『飲食店の意義』について度々考えるようになりました。
僕たちが生業としている居酒屋という業態は、今の価値観から言えばこの社会にとって不要不急の存在ではありません。
でも日本の食文化は多種多様な業態が独創的な閃きと地道な努力によって、世界でも類をみない『日本独自の文化』としてその価値を高めてきました。
居酒屋もその一員であり、例え不要不急の存在でなくとも、社会にとって必要不可欠な存在だと僕は思っています。
だけど、それは腹を満たすことや酒に酔うことだけでなく、今回紹介したトンカツ屋のように日常生活に何気ない喜びを生み出すことも意義の一つではないでしょうか?
お笑い芸人みたいに爆笑させることはできないし、ディズニーランドみたいに見たことない驚きを演出することもできないけど、何気ない日常にささやかな笑顔とちょっとした感動を生み出すことは僕たちにもできる。
むしろ、それができるのは『食』という欲求を扱う僕たちにしかできない仕事なのかもしれない。