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大逆転でNo.1になれたのはナゼー「本当にそれは重要なことなのか?」の問いの深さ(前編)
ビリ争いしていた弱小のカーレースチームを責任者就任から1年で優勝させた人がいます。しかも、大きなハンデを背負った状態からです。
彼が就任した当初のチームの状況はこんな感じです。
・エンジンの開発が海外の最先端より10年くらい遅れている
・もし莫大なお金をかけたとしても、1年で最先端のチームはさらに先に行く
・人数も予算も他チームの約6分の1以下
・1年以内に結果を出さなければならない
とてつもない逆境です。
にもかかわらず、1年で見事優勝してしまったわけです。
なぜ、そんなことができたのか?
一見して不合理なことがなぜできたのかを聞けば、論理が美しすぎて感動します。
非常識な本質
のちに”Mr.GT-R”の称号と明快で歯に衣着せぬ語り口で有名になる水野和敏さんの大逆転へのリーダーシップは非常識なものばかりでした。
その一部を紹介すると…
権限が集約する1トップ制
当時社長だったゴーン氏の指示で、従来の「車両開発、商品企画立案責任者、収益・販売目標達成責任者」の3トップ制ではなく、例外的に権限を水野さん1人に集中させました。
チームの人数を減らす
人が多いと管理業務が発生するので、顔がわかってゴールへの熱を共有できる人数にまで一気にスタッフを減らしました。
人数に関してこの非常識ぶりをたとえるならば、15人で戦うラグビーで弱いけど7人でやる!みたいなインパクトです。
「もっとみんなが頑張る」では超えられないレベル、何かしらの別次元のブレークスルーが必要になる選択です。
最も優秀な技術者を現場から外す
ピットで最も優秀な技術者を現場から外し、その技術者が見込んだ4人を教育することだけをやらせました。
最も優秀な人を「プレイヤーとして使いながら教育役もさせる」ではダメだと考え、現場から外してモニタリング(観察)だけに集中させる選択をしました。
優秀だからこそ、強制的に手を止められて観察に集中するといろいろな改善点に気づき、革新的なアイデアが出てきます。
最も優秀な人材を「自分を超える人材を何人も生み出す教育者」にコンバートする。水野さんのこの采配は、チームの飛躍的な技術力向上をもたらします。
本当にそれは重要なのか?
それだけにとどまらず、水野さんは業界の常識の逆を行って、ジャーナリズムには叩かれまくることをします。
✔ 車体の軽量化を追わないようにした
✔ エンジンの高馬力化を追わないようにした
それまで、エンジンの開発とは馬力を上げる開発でした。「馬力を有効活用するためには車体は軽い方がいい」それが常識でした。
でも、それは本当だろうか?
レースで一番早くサーキットを回って一番でゴールするために本当に一番重要なことはなんだろうか…?
水野さんは誰よりも早くゴールするクルマを作るためにレースの本質を徹底的に観察します。
なんどもなんどもサーキットに足を運び、ひたすらレースを観察します。
そして、あることに気が付きます。
(後編に続く… ↓↓↓ )