ニーズを突き詰めた結果、たどりついた機内設備とは?
こんにちは。ZIPAIR note編集部です。
ZIPAIRでは、日系のLCCとして初めて中型機・ボーイング787-8型機を2機導入しました。フルサービスキャリア同等の快適さとくつろぎの空間を実現するために、「機内での過ごし方の自由度を上げるにはどうしたらいいか」を徹底的に考え、随所にさまざまな工夫を凝らしています。
そこで今回は、企画マーケティング部の太田裕司に、シートや設備の詳細について聞きました !
プロフィール/太田裕司
2003年JAL(日本航空)に入社。新千歳空港と羽田空港で運航管理・オペレーション業務を経験。運航安全推進部や財務部、経営戦略部を経て、2017年に戦略推進部(ティー・ビー・エルの前身であり、後のZIPAIR Tokyo)に所属し、現在に至る。
キーワードは“快適さ”。内装もシンプルな配色に。
―まず、ボーイング787-8型機を導入した経緯を教えてください。
私たちは、日本からアメリカ本土へ飛ぶ、太平洋を渡る世界初のLCCになるという目標を掲げています。そのためには、効率よく長距離飛行が可能な飛行機である必要がありました。ボーイング787-8型機はまさに理想的な飛行機であり、またJALでの運航・整備経験も蓄積されています。客室内の改修にあたっても、技術部門をはじめJALグループのさまざまな部門の協力を得て実現することができました。
細かな仕様はボーイング社と話し合いをしながら決めていきます。「前方にはフルフラットのシートを入れる」「シートピッチ(シートの前後間隔)はフルサービスキャリア並みにする」など、長時間のフライトでも快適に過ごしていただける機内にしようという意識は当初からありましたね。
―客室は、どんな内装になっているのでしょうか。
機内のコンセプトはコーポレートカラーのハーモニー・グレーをベースに、モノトーンで統一して落ち着いた空間をデザインしました。「旅の色を付けるのはお客さま。私たちはリラックスできる空間を提供しますので、ご自身で自由にお楽しみください」というメッセージを込めています。さらに、機内に入った時とシートに座ってから見る光景では、全く異なる印象の色合いにしているんです。ちょっとした遊び心もぜひ注目してみてください。
空の上でも地上と同じぐらい自由に。自分らしく過ごせるシート。
―「LCCとは思えないシートを導入している」という声も業界内で上がったそうですね。
ありがとうございます。シートは2クラス用意し、ワンランク上の“ZIP Full-Flat(ジップ フルフラット)“が18席。世界標準のシートピッチを確保した普通席”Standard(スタンダード)“が272席で、合計290席になります。
―ZIP Full-FlatとStandardについて詳しく教えてください。
ZIP Full-Flatは180度リクライニングが可能なフルフラットになる座席で、パーソナルスペースも確保できるジャムコ製を導入しました。海外大手のエアラインでもビジネスクラスに採用されていて、ソファのようなしっかりした座り心地で高級感のある本革シートです。シートピッチは42インチ(約107cm)、幅は20インチ(約51cm)で、1列あたり1-2-1席に配列。進行方向に対して斜めに配置されるヘリンボーン型ですので、どの席からも簡単に通路へアクセスできます。
上級クラスのZIP Full-Flatは、パーソナルスペースをしっかり確保。ヘッドレストカバーなどディテールの選定や試験などを重ね、飛行機に装着するまでにおよそ1年半かかったという。
一方、上質感ある黒の人工皮革を用いたStandardはレカロ製で、背もたれと座面が同時に動くリクライニング機能を搭載しています。フルサービスキャリアで広く採用されている31インチ(約79cm)のシートピッチを確保。幅は17インチ(約43cm)で、シート配列は1列3-3-3席の9席です。最前列以外の座席にはタブレットホルダーも装備していますので、自分のデバイスを置いて好きな動画を観るなど、長時間のフライトでもお客さまがご自身で自由に空間を作り上げることができると思います。
パソコンを置いて作業をするにも十分なスペースがあるStandard。デバイスを立てられるタブレットホルダーが付けられる点も、レカロ製が選ばれた理由の一つだ。
―シートの前後空間はこだわり抜いたと伺いました。
一般的に“LCC=スペースが狭い”と思う人は多いかもしれません。ですが、私たちはゆったりした空間でリラックスして旅をしてもらいたいと考え、フルサービスキャリアと遜色ないシートピッチを確保することに力を注ぎました。機内食を用意するギャレー(厨房設備)の削減やバーカウンターの撤去、ラバトリー(化粧室)の配置見直しなど、さまざまな改良に取り組むことになりましたが、その結果、世界標準のスペースを確保しながらシート数を大幅に増やすことができたと思います。
時代に合ったサービスやLCC初の設備で、それぞれの旅に寄り添う。
―個人用のシートモニターを外した理由は何でしょう。
シートモニター自体やその配線など、モニターを搭載すると実は相当な重量になります。それらを取り払うことで機体の重量を減らして燃費向上が見込めると同時に、メンテナンスも簡素化できるんです。これらの費用を削減した分を運賃にも還元することができます。
また最近は、機内でスマートフォンやタブレットを使って自分の好きなコンテンツを楽しむ方を多く見かけることも理由の一つです。そこで、両クラスにタブレットホルダーと電源コンセント、充電用のUSB端子を設置しています。日本の国際線では初の衛星回線を使った機内無料Wi-Fiサービスも用意していますので、空の上での過ごし方も幅がグンと広がりますよ。
Standardでは、電源コンセントと充電用USB端子を前席のテーブル下に設置。充電をしながらでも、自分自身のデバイスを好きなように楽しめる。
―ウォシュレット(*1)を装着したラバトリーも完備しているんですよね。
ラバトリーは全7ヵ所あるうち、3ヵ所が温水洗浄便座を完備したウォシュレット付きのラバトリーで、LCCでは世界初の導入となります。また、2つのラバトリーの間にある仕切りを折りたたむことで1つの大型のラバトリーになるコンバーチブルラバトリーを装備していますので、車いすの方も安心してご利用いただけます。
―設備の機能性も高いですよね。快適なフライトを試行錯誤した結果が、あらゆるところに現れている印象を受けます。
ここまでお伝えしてきた設備は、自分たちが世界各国のエアラインに乗ってうれしい、心地よいと思った機内サービスを参考にして、一つずつ形にしてきました。内装もブランディングをお願いしたSIXさんと綿密に話し合いながら、細部に至るまでこだわり抜いて作り上げたものです。
フルサービスキャリアはすべてのサービスをパッケージで提供しますが、ZIPAIRは、シートや機内食などはお客さまに選択していただくオーダーメイド方式としています。パーソナルスペースを意識し、自由度を上げるために工夫を凝らした空間やサービスを体験していただけたらうれしいです。
*1:ウォシュレットはTOTOの登録商標です。