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多様化が進む時代を見据えた制服製作・後編

こんにちは。ZIPAIR note編集部です。

“時代の先を飛ぶ、エアラインへ。”と掲げるZIPAIRらしい試みとなった、「着回し」をコンセプトにした制服とスニーカーの採用。前編ではそこへ至った背景やデザインに込められた考えをお伝えしました。

後編も引き続き、制服製作に携わった、SIX・矢後直規さん、デザイナー・堀内太郎さん、ZIPAIR・宍戸祐子に話を伺います。製作を経て見えてきたこれからの時代における航空業界の制服のあり方とは?


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プロフィール/矢後直規(SIX)
広告からアーティストのCDジャケットまで、数々のアートワークを手がける世界的アートディレクター。ZIPAIRとの関わりは制服だけでなく、ロゴからブランド全体のアートディレクションも担当。

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プロフィール/堀内太郎(デザイナー)
アントワープ王立芸術アカデミーを首席で卒業。2010年に「TARO HORIUCHI」、2018年に「th products」を立ち上げる。デザインを担当し、得意としている日常に溶け込むシンプルかつ実用的なデザインをZIPAIRの制服にも落とし込んだ。

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プロフィール/宍戸祐子(ZIPAIR)
1997年に客室乗務員としてJAL(日本航空)に入社。2013年に同社を退社後、2018年にティー・ビー・エル(現ZIPAIR Tokyo)に入社。客室乗務員の管理業務や乗務を行う。制服製作においても、豊富な経験と知識をチームの一員として発揮。

画一から個性へ。制服新時代の先駆けに。

―組み合わせシステム、そしてスニーカーの採用と、これまでにない新しい制服を実現した今回。航空業界の制服のあり方における、転換点になったような気がします。

矢後:今回のプロジェクトを進めるにあたり、エアラインの制服の歴史を調べました。それこそJALの歴代制服が展示されているSKY MUSEUMにも足を運んで。

僕の理解では、これまでにも転換点はいくつかありました。例えばファッション性を帯びてくるのは、1969年にエールフランスがバレンシアガにデザインを依頼したあたりから。ミニスカートが採用されたのもその頃です。

―バブルの時代には肩パッド入りの制服もありましたね。

矢後:エアラインの制服は、それぞれの時代性を反映するものなんです。今は働き方や生き方、そしてさまざまなことで多様化が浸透するなかにあって、エアラインの制服もガラリと変わるタイミングだったと思います。

堀内:ファッション業界も同じ。これまではトレンドが重視される世界で、今シーズン買ったものが来年になるともうトレンドアウトしてしまっていました。

でも好きな服ってずっと着ていたいじゃないですか。僕自身のブランドでは、その愛着と新鮮さを両立するために組み合わせで解決してきました。そして今、制服でさえも個人の主観で楽しむことが主流になっていると思います。

矢後:オフィスでいう、フリーアドレスの感覚と似ていますよね。

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―この新型コロナウイルス感染症の影響で価値観や生活様式が刷新されたことを指して“ニューノーマル”という言葉をよく耳にするようになりました。まさにそんな時流と一致する提案ですね。

矢後:製作に取り掛かったのは2018年でしたが、当時から「いずれこのような考え方が広まるはずだ」と話していました。予想よりも随分と早まりましたが、ZIPAIRの制服に対する考え方は、まさに時代と一致していると思います。

堀内:今後、裏付けのない制約はどんどんと淘汰されるでしょうね。ただし、なんでも自由であればいいわけじゃないと思います。制約と自由のバランスが重要です。ある程度の枠のなかで、選択肢を持たせることが理想だと思います。ZIPAIRの制服も、今後さらにバリエーションを拡大していくかもしれません。

スタッフの方が着こなしで迷わないように、一応組み合わせのパターンもいくつか提案しているんです。いわば、おすすめセットのような。そこからどんな新しい着こなし方が生まれるのか楽しみですね。

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シンプルなデザインと色味で統一され、アイテムは全部で15種類(ジャケット2種類、トップス4種類、ボトムズ2種類、スカート、ワンピース、ジレ、スニーカー、スカーフなどの小物が3種類)。ユニークなディテールを取り入れながらも、大きめに作られたポケットなど機能性が考慮されている。

宍戸:シンプルであることも要素になっていると思います。華美な装飾ではなく、いわゆる“わび・さび”を感じさせるデザインは組み合わせがしやすく、またとても日本的でもあります。国際線を運航するZIPAIRとしては、あらゆる面でマッチしていると思います。

―とはいえ、足元がスニーカーだとカジュアルな印象は強まります。それゆえに気をつけていることはありますか?

宍戸:LCC=ローコストキャリアは、そもそもカジュアルなイメージを持たれがちです。それが気軽さや親しみやすさにつながれば幸いですが、チープに見られることは本意ではありません。

スニーカーであるならばいつも以上に手入れをし、そして美しく着こなすことを意識する必要があると思います。シンプルだからこそ、凛とした美しさをより求められる。それは私たちも理解をしていて、たたずまいにはとても気を使っていますね。

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ZIPAIRが打ち出した制服の新しい概念。これからも時代の先をいく提案を。

―旅客便が就航して1年弱。お客さまからの反応はいかがですか?

宍戸:「エアラインの制服らしくない」とのお言葉を多くいただきましたが、そのどれもが肯定的でした。特にスニーカーは好評です。「機内で購入できないのか」とのお問い合わせもあります。

矢後:スニーカーに関しては、今後一般販売もする企画が持ち上がっているとか。ベーシックなデザインなので、いろいろと活躍してくれそうですしね。

堀内:個人的にこの形が好きなんです。スニーカーだけど、どこか革靴に近いスマートさがあるので。

―今回の制服は、エアラインのみならず日本の制服に対する意識も変えそうですね。

矢後:制服の役割は、今後確実に変わると思います。画一化するためのものではなく、ある程度の範囲を決めつつも、最終的には個性を発揮できる形になるのではないでしょうか。そうした新たな集団観は、制服に限らず働き方や生き方も大きく変えていくのでしょうね。

堀内:誰のための制服なのか、何のために着るのか。僕としては、それを突き詰めていった先に、必然的にたどり着いた感があるんです。建前じゃなくて本質が重要だということです。

宍戸:これまでにない新しい提案を積極的に行う。新型コロナウイルス感染症の影響により困難な状況ではあるのですが、制服を通じてZIPAIRのそんな姿勢を感じ取っていただければ幸いです。