夏の思い出

 夏の空は一段と青が深い。

 プールの水を彷彿とさせる濃い青の蒼穹に、どっしりと重い入道雲が腰を据えている。夏の空と言われると、多くの人間がきっと、そんな夏の空を思いかべると思う。

 日本の空は青く、夏はより一層青い。

 世界で一番美しい夏の風景は、東京の夏だと私は思う。

 目を閉じて、耳に意識を向けてみてほしい。

 聞いているだけで熱くなるアブラゼミの鳴き声と、料理屋の店先に引っ掛けられた風鈴の高い音がする。あなたは、風情ある夏の音だと歓迎する。そこに乗用車が吐き散らすエンジンの低い唸りが混ざり、古き良き風情をぶち壊した混沌の音を生み出す。

 そんな音だけがする、静寂に包まれた東京の裏路地は最高だ。

 個人的に、本郷は良い。本郷は良いところだ。

 夏の文京区は本当に素晴らしいので、ぜひ散歩すべきだ。

 空の青を覆い隠すビル群、斜光を跳ね返す窓ガラス、ビルの隙間から見える広葉樹の葉の緑色、遠くに見えるスカイツリーの掠れた輪郭。

 東京いきたいなぁ。明日は会社かよ。

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