#17.心の余裕〜死ぬこと以外かすり傷〜
2019年4月より介護休業を取得した私は、同年7月より職場復帰した。
3ヶ月間休業することは今までのサラリーマン生活の中でも初めての経験だったし仕事に戻る前は当然不安があった。「職場復帰してブランクがあるのに戦力になるのかな」「ちゃんと仕事はできるのかな」といった思いがあった。その点で私は育児休業明けの女性の気持ちがすごくわかった気がする。
私の会社は一年を上期(4月〜9月)、下期(10月〜3月)に分けて営業目標があった。つまり7月から復帰となると残期間3ヶ月で営業目標を達成させなくてはならなかった。一つの課のマネージャーをやっていた私は、4月〜6月まで3ヶ月間の課の営業成績を見てみて強い危機感を覚えた。
つまり営業目標に対して大幅に遅れていた。
これからの3ヶ月間で「どうやって目標を達成させるか」を考えた。目標は一つではなく複数項目あったので、まずは優先順位を決め、部下へは具体的な指示を行っていった。
それから職場復帰して1ヶ月が経過した2019年7月末から8月末にかけ、営業目標に対しては他の部署と遜色ないくらいに成果が上がっていた。
また期末の2019年9月末には他でもトップ3に入るくらいに課は成績をあげることができ、私は「なんとか仕事は果てせたかな」とほっとした。
そういった環境の中でも「妻のサポート」「育児」「家事」は欠かさずこなし、時間がある時には「仕事」のことを考えていたが、過去とは絶対的に違う点が一つある。
それは危機的な状況の中にも「心の余裕」を持って取り組めたことだ。
介護休業を取得していた3ヶ月間で私は随分と「視野が拡がり」、「心の余裕」ができたと思う。箕輪厚介氏著書の『死ぬこと以外かすり傷』の言葉を習うわけではないのだが、今までは死ぬわけでもないのに「営業目標を達成しなくては…」と追い詰められた様に焦り(金融マンはあるあるだとは思うが…)、成果に関して空回りする場面が多かった様に思う。
仕事に対して私は「心に余裕」ができていたが故に、「短期的な目の前の成果」ではなく、「中長期的に成果がでる仕組み作り」のために客観的かつ冷静に部下とのコミュニケーションや指示を出すことができ、結果としては短期でも最短距離で営業目標が達成できたのではないかと思う。
また「マネジメント/イクボス論」の様な話になってしまうかもしれないが、
今の時代「生活の全てを仕事に注げる人はいない」ということ。
バブル期であれば「24時間働けますか?」といった言葉があった様に、特に男性はいわゆる「体育会系」といった仕事詰めの社員が多かった。
但し現代では女性社員も相応いるし、各人の性格や個人/生活環境に加えて家庭環境まで配慮してマネジメントしていく必要がある。
最終的に継続して成果を挙げ続けるため、成果が出る仕組み作りには「個人の力」はもとより「チームとしての総合力」が重要になってくる。
「1」の成果を挙げれる人材が一人いれば、成果は単純に「1」挙げれる。
またその社員が他の社員より優れ、成果を「3」挙げれる人材もいる。
但し「1」の人材が3人いれば単純に成果は「3」挙げれるし、加えて「チームとしての総合力」があれば相乗効果で「5」とか倍の「6」の成果を挙げれるチームにもなり得る。
但しそこで注意が必要なのは「チームとして機能しているか」ということ。時にはチーム内が割れてしまい、本当であれば単純に「3」の成果が挙げれるはずなのに、「2」とか最悪なケースで言うと「1」しか挙げれないこともある。
マネージャーの仕事はチーム内の連携が取れないことを是正し、加えて相乗効果を出させることだと思う。
加えてその中で各人の成果に対するモチベーションを高く保つこと。
もう少し掘り下げて言うとモチベーションを高くするには、各人の性格や個人/生活環境や家族の環境などの背景を知っておき、そこまでサポートやマネジメントしていくことだと思う。
私は部下各人とよくコミュニケーションをとることを徹底した。仕事のサポートは勿論のことだが、有給休暇の推進や部下が女性の場合には育児や家事がいかに大変かの話しを行い、なるべく家庭上のストレスや愚痴なども聞く様にしていた。部下が風邪などを引いた場合にはその仕事を自身自らが引き受け、休みを取らせることを徹底した。
おけげで部下の成果に対するモチベーションは高く保つことができ、上期の営業目標達成に繋がったと思う。
介護休業は私にとってただ単に「休業」というわけではなく、極端な話で言うと「死ぬこと以外かすり傷」といった「心の余裕」を持って取り組むことができ、最終的には「仕事のやり方」「仕事の質」を高める意味でも勉強になる期間だったと思う。