25-新しい学生生活のスタート!!!
【前回のお話】
(841字・この記事を読む所要時間:約2分 ※1分あたり400字で計算)
温かい笑顔に迎えられ、研究室に入った。
きっちり整理された本棚や資料ラックを見るだけでも、S教授が如何にしっかりとした方なのかが分かった。
「竹子さんですね?お待ちしておりました」
来客用のソファに案内され、自己紹介も兼ねて、より詳しく大学院に入学したい理由やこれからの目標についてヒアリングを受けた。
「こんな動機はどうかと思いますが、日本で再就職する為に、日本語を学び直そうとしておりまして……その、日本語で授業を受けたり論文を書いたりして、日本社会で適応していけるような日本語力を身に付けたいんです」
「そうなんですね!全く、全く問題ないと思いますよ」
私を安心させるかのように、S教授は力を込めて大きく頷き、「大丈夫です」と更に付け加えてくれた。
「うちの大学院は、日本での就職を考えている留学生の方がたくさんいますよ。特に中国からいらした学生が多く、竹子さんも上手く溶け込めそうな感じがします」
そう言いながら、S教授は「よっこらしょ」と身を起こし、本棚から一冊の本を取り出した。
「ではではメールでも説明しましたように、まずはわたくしの元で『研究生』として、1年間勉強をしていきましょう」
スッと、S教授が先ほど本棚から取り出した本を私の前に差し出す。
表紙には大きく『日本語検定問題集』と書いてあった。
「取り敢えずは、日本語の基礎力を身に付けるのです。傍ら、簡単な論文も執筆していただき、1年後の大学院入学試験に向けて対策を行います」
「はいっ!頑張ります!」
「ただし、ご存知のように、『研究生』としての勉強期間は1年。1年しかありませんよ?」
「え、は……はい」
動揺を隠せない私を見て、S教授がにっと笑った。
「これからは毎日、日本語の小テストを受けてもらいます。試験範囲は都度お教え致しますので、次の日までに覚えてきて下さいね。
それと、週に1篇は小論文を書いて提出していただきます。
加えて、わたくしが担当する授業は必ず全て出席するよう……」
来た来た!
これぞ学生生活だぁ!!!
これから大変な日々が待ち受けているのだと覚悟を持ちつつも、私の心はやる気でいっぱいになった。
(つづく)