21-石橋を叩きつつ、前進、前進あるのみ
【前回のお話】
(777字・この記事を読む所要時間:約2分 ※1分あたり400字で計算)
まずは大学院に連絡だ。
入りたい研究科が複数あるので、それぞれの教授宛にお問い合わせメールを一斉配信することにした。
簡単に事情を説明し、入学希望の旨を伝える。
入学資格について訪ね、私のようなほぼ中国でしか教育を受けて来なかった者にも可能性があるのかを聞いた。
1本のメールを作成するのに、1時間以上もかかった。
まだ日本語で文章を書くのに慣れていなかったのだ。
挨拶文や敬語について調べつつ、知らない単語があれば辞書を引き……大変骨が折れる作業だった。
(大学院では論文も書かなきゃいけないのに……
なんとか作文力を上げないと……先が思いやられる)
メールで日本語の実力が見抜かれ、「この語学力では入学は無理です」と言われないか本当に心配だった。
なんだかんだでようやく書き上げ、繰り返しチェックし、ミスが無いことを確認した。
送信。
後は、返事を待つだけだ。
1箇所。
1箇所でもあれば良い。
どうか私を受け入れてくれる大学院がありますように。
お次はアルバイト先に電話だ。
嗚呼、怖い。
電話は大の苦手なのだ。
退社した会社で働いていた時もそうだったが、私の電話対応は実にたどたどしかった。
日本の電話マナーを良く知らなかっただけでなく、日本語力も足りず、その上お客様相手だと余計に緊張した。
言葉でさえ上手く出なかった程だ。
しょっちゅう怒られていた。
声も弱々しかったせいか、一度「寝起きの子が電話に出ていたんだけど」とクレームが入ったぐらいだ。
でも電話をかけなければアルバイトの応募が出来ない。
やるしかない。やるしかないのだ。
ネットで電話マナーについて再度確認し、セリフを紙に書き出し、何度も何度も練習した。
声がこもらないように、力を入れて。
元気良く、大声で。
(よしっ……大丈夫、大丈夫だ)
深呼吸をし、受話器を取った。
プルルル……プルルル……
ガチャ。
「はい、○○店です」
「...っーーー!」
(つづく)