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Vol.5 ステップ④PSISを落下させる

「胴体回旋&落下(Trunk Rotation & Fall:TRF)スキル」とは、胴体の回旋によるエネルギーと、胴体の落下によるエネルギーを掛け合わせることによって、一歩の推進力を改善するスキルです。

ここでは、このスキルにはじめて触れる初心者ランナーでも習得が可能なように、体系立てていくことを目的とします。

前回のステップ③では、腱の弾性エネルギーを有効活用するための「脚の鞭化」についてお話ししました。「筋出力のオン・オフの切り替え」によって、脚が鞭のようにしならせる。

これによって、地面に伝達する力を散らからせることなく集約させることができます。一点集中という感じですね。

一点集中することによって、筋収縮に必要なエネルギーをそこに集約させることができますから、不要な消耗を防ぐことができます。

また、筋出力のオン・オフを切り替えることによって、オフのタイミングでのエネルギー需要を軽減することができますから、この点においてもランニングエコノミー改善に寄与します。

しかし、多くのランナーはこの「筋出力のオン・オフ」の切り替えがうまくできていません。というよりも、パフォーマンスを上げるための動作感覚としてこの点に着眼してもいないのかもしれませんが、これはものすごく大きな損失だと言わざるをえません。

筋腱複合体による出力は、「能動的なもの」ではなく「受動的なもの」であった方が大きく発揮できます。

能動的、つまり「意図的に」筋肉を収縮させて出力するものではなく、受動的、つまり重力による落下によって「結果的に」筋肉が伸ばされながら収縮せざるを得ない状況で出力されるもの。

ちょっと表現が小難しくなってますが、このことについて、今日はもう少し解像度を上げて説明していきます。

それでははじめましょう。

脚の存在感を抑える

脚が鞭化することによって、脚の筋腱複合体は出力の「オン」と「オフ」のメリハリがつきます。

これによって「オン」の際には腱の弾性エネルギーを駆使して地面に伝える力を高め、「オフ」の際に筋腱をリラックスさせ、無駄なエネルギー消費を抑えるのは前述の通り。

そのためには、脚を自らの意思で動かそうとせず、脚を「鞭」だと認識する必要があります。つまり「脚で走る」という認識を放棄する必要があるということです。

では、その「鞭」を、どうやって操作するのか?「鞭」だけでは運動エネルギーは発生しません。その鞭を動かすためのエネルギーを、どこから調達するのか?

ポイントは「PSIS(上後腸骨棘)」への注意です。

下の画像をご覧ください。

上後腸骨棘(PSIS)

PSISとは腸骨(腰骨)の端っこにある突起の部分のことを指します。腸骨を内側にたどっていくと、ポコっとした突起を触れることができるはずです。そこがPSISと呼ばれている部分。

このPSISを、まずは親指で触ってみましょう。この「触覚刺激」が、実はものすごく重要です。というのも…

PSISを触ることによる「手ごたえ」によって、「PSISが移動している」ということを触知することができます。

しかし多くの方が、PSISの動きに注意を向ける時にPSISから親指が離れてしまいます。

そうすると、このあとお話しする操作による「PSISの移動」を、手ごたえとして感じ取れないので、結果、思うように操作できないということが起きてしまいます。

では、ここからはPSISをどのように操作するか?ということについてお話ししていきます。

まず、下の動画をご覧ください。

まず①の操作では、正座した状態で左右のPSISを同時に下方へ移動させています。

これによって腰部の筋肉をストレッチすることになり、結果的に骨盤が後傾し、腰が丸くなります。

ここでは正座してやっていますが、椅子の上でやっていただいてもOKです。

まずは1分程度、ゆっくりとPSISを下方へ移動させる「手ごたえ」を掴んでみましょう。これが今日のテーマのもっとも根幹をなす操作ですので、ゆっくりと丁寧に、手ごたえを掴んでいきます。

さてそれでは②の操作にいきましょう。

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高岡 尚司(たかおか しょうじ) ゼロベースランニングクラブ・オーガナイザー 熊本国府高校陸上競技部長距離ブロックコーチ 鍼灸マッサージ師 ランニング足袋・開発アドバイザー ALTRA JAPAN アンバサダー 合同会社エフエイト・代表社員