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映画感想『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』

原題「THE LAST FULL MEASURE」

◆あらすじ◆
1999年。ペンタゴン空軍省のエリート職員スコット・ハフマンは、ベトナム戦争で活躍した医療兵ウィリアム・H・ピッツェンバーガーの名誉勲章授与についての調査を担当することに。ピッツェンバーガーは前線で孤立した仲間たちを助けるために、自らの命を顧みず献身的な活躍の末に敵の銃弾に倒れた。その功績は名誉勲章に値すると両親や戦友たちは請願を繰りしてきたが、なぜか30年以上も却下され続けてきた。最初は乗り気でなかったハフマンもピッツェンバーガーを知る退役軍人たちの話を聞いて回るうちに、彼の勇気ある行動に心打たれるとともに、やがてそんな彼が叙勲を拒まれ続ける思いもよらぬ秘密の存在に近づいていくのだったが…。




南北戦争後リンカーンが唱えた言葉から取った題名。

自由と平和の元、誰もが安住出来る筈なのに泥沼化したベトナム戦争終結後から30年以上経った今も尚、米国が抱えるベトナム帰還兵(退役軍人)問題。

彼等の現状を軸に置き、出世への野心から国の中心ペンタゴンで働く1人の男の心の変化を描く秀作。

とにかく配役に興奮する!
帰還兵を演じる名優達の顔ぶれが素晴らしくてどんどん引き込まれ、常に目頭が熱かった。

彼等が激戦下で何を見、何を体験したのか?

中でも退役軍人キーパーを演じているジョン・サヴェージの登場には胸が詰まる。あの『ディア・ハンター』で酷い傷を負った帰還兵を演じた経歴を思えばこの重要な役はむしろ彼しか居ないと言える。或る意味名作からの刺客的な?ww

そして【自由なアメリカ】を体現しながら実はその裏にある殺伐さを描いた『イージー☆ライダー』で主人公ワイアット(キャプテン・アメリカ)を演じたピーター・フォンダが重いPTSDに苦しむ退役軍人を演じるのもこの作品なりの過去作へのオマージュか?

サミュエル・L・ジャクソンが現地で戦った者にしか解らない胸の内を吐露するシーンは実に迫真で戦地での判断の重要性やその判断力を保つ精神力や忍耐力、延いてはそれを失う程の戦地の熾烈さにまで観客を誘導する。

共に戦った彼等が30年余りを費やしてまで何故ピッツェンバーガーに名誉勲章を与えたかったのか?

彼等に課せられた極秘作戦『アビリーン』とは?

敵に取り囲まれ、絶体絶命の中『デンジャー・クロース(至近距離への砲弾)』が要請されるが、それが彼等の運命を変える事になる。

この辺のややサスペンス性を含む作りもこの作品の魅力だ。

そして失った仲間の家族(父母)への想い・・・懺悔と後悔。
息子を失った親の想い・・・死を恐れず、負傷した仲間を助け続けた使命感への褒誉。

そして深刻な【戦争の後遺症】を目の当たりにし意欲を宿すスコットをアベンジャーズでキャプテンを過去へ送ったセバスチャン・スタンが演じてるのも何かの巡り合わせなのか?

命を賭け、戦地へ赴いた兵士に対する敬意と遺された者の苦悩が胸を刺す誠意ある一作。

ピーター・フォンダ、クリストファー・プラマーの最後の作品としても観ておきたかった。

ただ惜しむらくは字幕に若干の違和感があった・・・言葉遣いがなんだかなぁ・・・・。


2021/03/13