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第100回MMS(2015/03/25対談) 「薄さたった2mmのオシャレな老眼鏡『ペーパーグラス』を生み出した町工場」株式会社 西村プレシジョン 西村昭宏さん

本記事は2015年に対談したものです。情報はその当時のものですので、ご了承ください。

●MMS第100回!

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enmono はい、本日も始まりました。第100回マイクロものづくりストリーミング、本日2015年3月25日は、福井の西村プレシジョンさんからお送りさせていただきます。西村さん、今日はどうもありがとうございます。

西村 よろしくお願いします。

enmono さて、皆様のおかげでこの記念すべき第100回の放送をお送りさせていただくことができました。本当にありがとうございます。これからもよろしくお願いしたいと思います。

enmono 我々のこのマイクロものづくりストリーミングという放送は、「製造業が自分で企画をして、自分で作って、自分で売る」というテーマでやっているんですけど、今西村さんがやってらっしゃることは、まさにマイクロものづくりだと考えています。ということで、どうしても第100回にご出演いただきたいとお願いして、今日はお邪魔いたしました。まずは西村さんに、簡単に会社の紹介とやってらっしゃることの説明をしていただいてよろしいですか?

西村 はい。マイクロストリーミング第100回ということで、本当におめでとうございます。100回記念に登場させていただいて、本当にありがたいなぁと思っています。

enmono ありがとうございます。

西村 私、株式会社西村金属常務取締役と株式会社西村プレシジョンの代表を務めております西村昭宏と申します。

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●西村金属

西村 まず関連会社の西村金属を紹介します。創業は1968年で私の兄、西村憲治が代表を務めております。創業当時から福井県の鯖江市にあるんですけども、眼鏡の部品、ネジだとか丁番だとかそういった部品を作る工場として創業しました。今現在は従業員が25名ほどおりまして、売上高は4億円ほどになっています。

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西村 これらが眼鏡の部品です。こうやってパーツだけ見るとよくわからないかもしれませんが、眼鏡に使われるネジや丁番、智(ヨロイ)と呼ばれる部分であったり、眼鏡のツルであったり――これらの売上は現在、全体の20%ほどでしかありませんが、もともと西村金属はこういった部品を作るメーカーでした。

enmono 以前は何%くらいだったんですか?

西村 以前は100%眼鏡部品です。もともとお客様が鯖江にしかいなかったんですね。眼鏡産業っていうのは鯖江にしかありませんから。その眼鏡産業が衰退していく中で、「じゃあどうしたらいいか」と考えた時に、チタンの加工という自社の強みを活かして眼鏡以外のお仕事をお手伝いするようになりました。インターネットを活用し(ホームページを通じて仕事の幅を広げていき)、10年くらい経つんですけど、今ではこの眼鏡以外の部品の売上が非常に多くてですね、8割くらいを占めるようになっています。

enmono 最初このホームページを作って、今までと全然関係ないお客様が来た時、受注できた時、どう思いました?

西村 当時、自分たちの加工技術が、眼鏡以外のところでどういう風にお手伝いできるかというのは実際わかりませんでした。ですから、とにかく情報発信してみようということで、自分たちの強みは何かと分析しながらホームページを作りました。チタン加工が得意なので、特定の分野のお客様に対しては自分たちの技術が活かせる部分があるかなと、いろいろチャレンジして自社の技術もどんどん上げていきました。

西村 その中でこの医療関係の部品だとか半導体の部品だとか航空機の部品だとか、本当に日本全国、業種業界問わないお仕事をさせていただくことになりました。眼鏡部品100%だった当時は、業界の波にすごく影響されるわけですよね。

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enmono ひとつの業界に左右されるのを、もっと分散して。

西村 そう、分散したい。眼鏡産業というのはいわゆる斜陽産業というか、まぁ生産加工を海外にどんどんシフトしてしまったので……。

enmono その当時からですか?

西村 2000年から2003年にかけて、眼鏡フレームの製造が海外にドンと行っちゃうわけですね。それで鯖江に仕事がなくなってしまった。それだったら眼鏡以外の仕事を取っていかないと、従業員の雇用もありますし、継続的な発展ができない。そこでどうするかと選んだのがインターネットだったわけです。

enmono 2000年頃というのは早いですね。その当時ってBtoCはあったかもしれないけど、BtoBがネットでっていうのはなかなか。

西村 なかったですね。ホームページは2003年に作成しましたが、当時はBtoCがようやく慣れてくるような段階で、BtoBでは「我々の技術という形のないものはインターネットでは売れない、顔合わせてなんぼや」という風に言われるのが常識だった。

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enmono 新規の問い合わせが40件から60件、これは企業ですか?

西村 はい。大手メーカーの開発担当の方であったり工場の担当の方であったり。今でも毎日新規のお問い合わせをいただいておりますし、今インターネットの分野の中ではチタン加工といえば西村金属というブランドはできあがってるんじゃないかなぁと。

enmono うん、そう思いますね

西村 その流れでこの売上高の推移なんですけど。

enmono 公開しちゃっていいんですか?

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西村 (笑)いいですよ。横軸が年度ですね。2012年までしかないのでちょっとデータ古いんですけど。2000年から2003年にかけて売上が半減していくわけです。で、ここからネットの新規開拓の取り組みを開始して約5年で2.5倍にあがった。

enmono 以前よりもあがったと。

西村 そうですね。

enmono 社員さんも増やしたんですか?

西村 はい。それ(2010年)がリーマンショック。

enmono ですね(笑)。でも、落ち込みは少ないですよ。

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西村 そうですね。少ないですね。それはやっぱりこう、分散したからというのがあって、そこからまたグッとあがっていくことになります。

enmono (2006年から2009年にかけての)この伸びがすごいですね。

西村 こういう取り組みをしてきて、おかげさまでいろいろな賞も当時いただきまして、2007年は日経新聞で「日経ものづくり大賞」だとか、経済産業省の「元気なモノ作り中小企業300社」だとか、「IT経営力大賞」などもいただいて。

西村 リーマンショックの時期、2008年~2009年くらいに、一社でやる限界を感じました。そこで異なる技術を持った何社かが共同受注することでスケールメリットを得て、さらに地域の強み・特色を活かしていこうという、今で言う地域ブランドを作りました。それが「チタンクリエイター福井」です。

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enmono 展示会もかなり力が入ってましたね。すごい印象に残ってるんですよ、これ。

西村 ありがとうございます。印象に残るってすごく大事だと思いますね。そこで自分たちの技術をどうPRして記憶に残るか。BtoBっていうのは困った時にしかニーズが生まれないわけです。どこかが「チタンの加工に困ったな」という時を我々は待つしかない。そうした時に、「チタンクリエイター福井、西村金属があるね」と、いかに早く思い出してもらえるか、ということにチャレンジしてきました。

●西村プレシジョン――老眼鏡ペーパーグラス

西村 続いて、株式会社西村プレシジョンなんですけど、実は創業が平成5年で今年で21期になる会社なんです。先程、紹介させていただきました眼鏡部品の西村金属が作るネジとか丁番を中国に輸出する貿易の会社として創業しました。当時まだ中国ではネジや丁番という精度が必要な部品が作れなかったんですね。

西村 事業の内容としては、現在も精密部品の卸という貿易事業は継続してやっていますが、それ以外に今日の本題とも言える「老眼鏡ペーパーグラス」というものも企画・製造・販売を行っております。

西村 従業員数は最初は1名だけで始まりましたが、ペーパーグラスをやりだしてから6名まで増やしまして、売上高は1億6000万円ぐらいになっております。

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西村 で、これがたたむと薄さ2mmになる老眼鏡っていうことで2013年のグッドデザイン賞でBEST100をいただいた商品になります。

enmono これは開発にはどれくらい時間がかかったんですか?

西村 ベースとなる技術・アイデア自体は10年前に存在しておりまして、2008年のリーマンショックを機に自社ブランドを立ち上げたいという思いで発売しました。

enmono 構想が具体化していったのは2008年。

西村 そうです。全体的な商品構成だとか、コンセプト作り、色、形、あと値段含めてブランディングといいますか、決めていって、立ち上げたのが2009年の9月。

enmono それは西村さんお一人で?

西村 そうです。ペーパーグラスという老眼鏡、なにがグッドデザイン賞で評価されたのかというポイントのところだけちょっと話をさせていただきたいなと思います。一般的な老眼鏡で指摘される問題点は、「持ち運びが煩わしい」「着け外しが多いのですぐ壊れてしまう」「お洒落な物が少ない」、この三つです。

西村 我々のペーパーグラスが目指したものは、それに対して極限の薄さで携帯性を実現しつつ、堅牢性があり、使い勝手も良い、そしてお洒落である。そういう老眼鏡です。

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西村 グッドデザイン賞で最終的に評価されたのは、これによってライフスタイルが変わるというところ。老眼鏡ってすごくネガティブなイメージだと思うし、そのシニアライフっていうのはすごくネガティブなものになっているのが現状なんだけども、このペーパーグラスという商品を持つことでネガティブなシニアライフがアクティブに変わる。それぐらい価値を持った商品だということが一番評価に値したポイントであると。

西村 この写真にもありますけども、今まで老眼鏡って自慢してかけられるものではありませんでした。しかし、このペーパーグラスを持つことで老眼鏡というものを自慢できるようになる。

enmono かっこいいでしょうね。

西村 実際自慢してる方がいらっしゃってね。「これ、ペーパーグラス」って。それぐらい社会に対してのインパクトがあるということが評価されました。

enmono あと、アジアのデザイン賞も受賞されてましたよね?

西村 このグッドデザイン賞とは別にまたアジア全域のアジアデザイン賞というのがあるんですけども、その中でも2014年度でブロンズ賞をいただいて。

enmono アジア全域で3番。

西村 はい、銅賞ということで。で、今年の2015年1月31日には、このペーパーグラスだけを販売する直営店も福井の駅前にオープンいたしました。

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enmono ペーパーグラス……だけ?

西村 だけですね。ペーパーグラスしか置いてないです。

enmono すごい、結構思い切ったというか……。福井の駅前、徒歩何分くらいですか?

西村 福井駅から徒歩5分くらいのほんとの駅前にお店がありますので。ペーパーグラスは自ら作って自ら販売するんだというところからスタートしておりますから、発売当初からインターネットによる販売がメインなんですけども、やっぱり「現物が見たい」「実際手にとって購入を判断したい」というお客様はたくさんいらっしゃいます。そういうお客様になんとかお応えしたい、現物を手にとって試して購入できる場所をと、まずは第1号店を福井に作りました。

enmono どっかに置かしてもらうということは?

西村 あ、もちろん販売店さんもあります。ありつつ、直営店もという形です。

●目指すところを明確に

enmono 我々のテーマであるマイクロものづくりという観点からお話を根掘り葉掘り聞いていきたいなと思うんですが、自社商品開発というのはこのペーパーグラスが初めてですか?

西村 そうですね

enmono 作ることに対する自信はあったと思うんですけど、注目すべきは全体のブランディングの仕方と、あと販路をご自分で開拓している、そういった企画から販売までのデザインがしっかり作られていると感じます。

西村 僕は自社製品であったり自社ブランドっていうのは、作ることはすごく簡単だと思うんですね。一番大事なのは、その作ったものがどこを目指すのかをキチッと最初に決めることだと思うんです。それに従って、そのあとの販路であったりブランド力をどこまでつけていくのか、というのが決まると思うんです。ですので、ブランドを立ち上げた時にまず決めたのは、ペーパーグラスが目指すところです。

enmono それはどういうコンセプトで?

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西村 それがこちらです。「私たちのビジョン」「私たちのミッション」と言っていますけども、まずは地元福井、そして日本に愛される世界一の老眼鏡ブランドを目指すんだと。世界一ですね。ペーパーグラスを手にする喜びと感動を世界中にお届けしたい。

enmono 愛されるというのはどういうところで、具現化しつつありますか?

西村 食べものとかお酒とかで表すとわかりやすいと思うんですけど、たとえば福井に来たら「あそこの日本酒がいいよね」っていう、それって地元に愛されるブランドだと思うんですよね。

enmono 福井に来たらまずペーパーグラスを。そのために駅前に置いたということですね。

西村 そうそうそう。だから世界一を目指そうと思ったら、まずやっぱり地元に愛されるブランドじゃないといけない。これだけは私たちのミッションとして強く思っています。商売だけのことを考えれば東京とか首都圏に出店する方がいいに決まってるんです。実際、東京出店のオファーもあったんですよ。あったんだけど、まずは地元を大事にしたいということを優先しました。それはこういうビジョンをしっかり作っているからなんですね。

enmono 「地元に愛される」という方針が固まるまで、いろいろな方とお話をされましたか? あるいはその方針に至るきっかけがなにかありましたか?

西村 歴史というか、違う業種を見ても、やっぱり地元に愛されているブランド・企業だけが世界有数のブランドになってますよね。しかも継続的に発展している。そしたら我々も同じ手法を採るのが王道だと思うんです。

enmono そういう道を選ぶと、グッと上にあがるような成長の仕方にはならないと思いますが、それについてはどう捉えていましたか?

西村 まぁ時間はかかりますよね。ですけど、ペーパーグラスは一時の流行りを目指しているわけではなく、「老眼鏡のスタンダードになる」ことも一つの目標として持っています。

enmono そういう手法を採ってきて、現在ペーパーグラスの出荷は何本くらいでしょうか?

西村 月1000本くらいです。

enmono なにかあることをきっかけに出荷量が多くなったと聞いたんですけども。

西村 一つはグッドデザイン賞、あと「ガイアの夜明け」の放送を経て、やっぱり認知が広がったということが一つ。

enmono グッドデザイン賞の前はどうだったんですか?

西村 1ヶ月4本くらい(笑)。

enmono (笑)結構ヒヤヒヤしないですか、それ。

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西村 ネットで、1ヶ月に4本売れた! ってすごく喜んでたんです。

enmono 想定内ですか?

西村 想定内です。それだけ認知されるっていうのはすごく重要なことだし、ブランドの信用力をつけるっていうのはすごく大事なんですね。

enmono 認知の手段についてはいかがですか? 広告を打つとか、お金かけてとか色んなやり方がありますが。

西村 お金をかけずにグッドデザイン賞であったり、テレビの放送・取材を利用したり。我々にとってはいかにお金をかけず認知を広めて、しかも信用力をあげていくのかというところがすごく重要でした。だから、ものづくりをするのと同じくらい、ブランドの認知と信用力をあげていく活動は、すごく手間がかかるといいますか、力が必要になってくると思います。

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西村 それは西村金属時代に名もない地方の町工場が日本全国を相手に新たな仕事を取っていくという時に経験したんですよね。だから「西村金属になにが足りないの? 技術はある。だけどなにが足りないの?」って考えた時に、やっぱり信用力・認知力なんです。これって両輪なんですよね。

enmono それがブランディングになっていると……勉強になります!

西村 あははっ

enmono ちょっとしたチラシも作り込まれている感じがするので、やっぱりそこは一つ軸が通ってるんだなぁと。

西村 そうですね、ですからチラシに関しても社内で作ることを大事にしていますし、コピーなんかも基本的には自分で考えて、最終的にはリライトしてもらって整えるっていう形でやっています。で、販路もすごく重要になってくるんですけども、販路はこのミッションが前提なんですね。我々は世界中にお届けするんだという風に決めて活動しています。そうした時に自社の販路だけでは、到底世界中に届けていくことはできません。ですから自社の販売だけではなくて、既存の眼鏡小売店さんであったり、ミュージアムショップであったり、百貨店さんであったり、あと海外には代理店を通じてお届けすると。それを自分だけの販路、自分だけで販売するんだってこだわってしまったら、この思いは達成できないわけです。

enmono やっぱり最初に決めたビジョン・ミッションがすべての指針になっているんですね。

西村 そうです。だから我々は自社だけではなくて、販売のパートナーも得ながら世界中にペーパーグラスをお届けする手法を採っています。

enmono 世界への認知の仕方はどういう方法が?

西村 今現在は各国1代理店という方式で、展示会をメインに代理店・パートナー探しをして、その代理店経由で世界中に広めていくという活動をしております。今、海外の代理店は8ヶ国で10の地域にペーパーグラスを出荷しています。

enmono いつ頃からそれをやり始めたんですか?

西村 ここ1年です。

enmono 結構なペースじゃないですか。

西村 はい。去年日本にいませんでしたもんね。

enmono 世界ブランドっていうのはみんなよく言うけども、地元に愛されながら世界一を目指す。ここが僕はポイントだと思います。地元が土台になっている。

西村 そうですね、土台がしっかりしてないと、行ってコケたらもう終わりじゃないですか。コケても地元だけでも生きていけるんだ、みたいな、そういう土台作りっていうのはすごく重要だなと思います。そのためには行動しなきゃいけないと思います。目に見える行動でやっていかないと。我々だったら「第1号店は福井の駅前に出した」、そういう実際の行動が伝わっていくんじゃないかなと。それを口だけで言ってもダメだし、実際の行動が伴ってこそ言葉に重みが出るし、エンドユーザーさんにキチッと伝わっていくんじゃないかなという風に思います。

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西村 ブランドがどこを目指したいのか、その製品で社会に対してどういう影響を与えていくのかっていうのをキチッと明確にすることで、迷った時の判断がすごく楽になるんですよね。それがちょっとズレてようが構わないんですよ。それはまた方向修正しながら、目指すところに行き着いていけばそれでいいと思うし。でもそういう自分たちが目指すところがないと判断がブレてしまって、いつしか反対方向に向いてしまっているとか、そういうことになりかねないので、僕はここが重要ですよと。これがないと作って終わり、単発で終わってしまうと思うので。自社ブランド・自社製品を作るのはいいんだけど、作るのが最終地点ではなくて目指すべきところはなにかを決めてほしいなぁというのは思います。

enmono どこからこういう心境になってきたんですか? 結構若い頃から?

西村 僕は学生時代バックパッカーだったんですよね。放浪の旅に出ていて、2001年、21世紀の初日の出をネパールでシェルパと一緒に見たという。当時から世界中の人たちと交流してきた中で、いろんな国も行ったし、そうすることで今の日本に対する郷土愛というものがすくすくと育っていったんじゃないかなぁと、自分的には分析してるんです。それがあって今こうやって地域のため、鯖江、あと日本のために自分はどういうことをやっていくのかという意識が、若い頃から育てられたんじゃないかなぁと思ってます。

●作って売ることから、一歩進めて新しいサービスを

enmono 今度新しいビジネスプランを考えておられるということで。

西村 はい。これなんですけども。「ペーパーグラスによる老眼鏡サービスパッケージはじめます」――老眼鏡をただ作って売るっていうんじゃなくてサービス化しようと。

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西村 老眼鏡が必要な皆さんがホテル等に宿泊された時、「老眼鏡を持ってくるのを忘れた」というケースはよくあると思います。ホテル側はそういう人たちのために老眼鏡を常備してあって、お客様に対して老眼鏡を貸し出しするサービスがあるんです。で、現状世の中がどうなってるかっていったら、その時に貸し出しする老眼鏡はいわゆる程度の低い100円ショップの老眼鏡なんかを超一流ホテルがサービスとして貸し出してるわけですよ。1泊10数万する宿に泊まっているお客様に対して老眼鏡のサービスの質がすごく低すぎるんですね。要は世の中から、市場から、老眼鏡に対する商品価値というのをすごく低く見られてたんです、今まで。でも、実際そうじゃないでしょうと。きっとお客様は喜んでないですよね、それ。だから貸し出しする老眼鏡というサービスもこういうペーパーグラスという商品を使って革新していきたいと。で、それをこう、ペーパーグラスを買ってくださいっていうのではなくて、月々幾らで契約して我々がメンテナンスをしますと。

enmono メンテナンスもちゃんとやってくれる。それは重要ですね。

西村 はい。常に品質のいい老眼鏡サービスを提供できるようなサポートも含め、それを販売するというのではなくて、サービスとして我々が提供する。ということで、小売業から一歩進んだサービス業化ということを今後やっていきたいなと思っています。

enmono これは非常に参考になることで、マイクロものづくりというと、売って終わりっていう発想が多いんですけども、それをもう売るんじゃなくてサービスとして提供して、そこから収益を得るっていう。ちゃんとそのメンテナンスをしてあげることで、お客様にも快適な老眼鏡を使っていただくっていうのはブランドの維持にも非常に貢献するんじゃないかなと思います。実際このサービスをするというお話をもう何社かには?

西村 そうですね。今モニターとして数ヶ所、ホテルさんであったりミュージアムであったり、そういったところに使用いただいてるんですね。協力しあいながら値段・料金含めサービスパッケージを作っていってる段階で、この春~秋にかけて正式にリリースしていきたいなと。

enmono お客様がサービスを利用したあと、購入もできるんでしょうか?

西村 もちろん。使っていただくと欲しいというお客様が必ず出てきますので、その場で販売できるような仕組みは我々が提供していきます。そうすることでホテルやミュージアムを含め、高度なサービスをお客様に提供しているサービス業の方々がよりよいサービスを提供することができますよと。老眼鏡に関して本当にお客様に喜んでいただけるようなサービスを実現できるのは、正直ペーパーグラスだけじゃないですかね。ということで、サービス業の方に興味をもっていただいています。

●日本のものづくりの未来

enmono もっといろいろお話を伺いたいんですが、そろそろ時間です。最後に「日本のものづくりの未来」について皆様にお話を伺っているのですが、こういう風になっていったらいいんじゃないかといった、西村さんの思いをお願いいたします。

西村 日本のものづくりってこれまでは品質がいいとか安心・安全がお題目だったと思うんですけど、それって結局当たり前だと思うんです。当たり前だけれども、安心・安全・品質がベースにあるというのはものすごい強みです。それプラス、日本だけでなく世界中の人に「日本製って欲しい」「いいよね」と思ってもらえるようなブランド作りをしていけば、日本のものづくりの未来は明るいんじゃないかなぁという風に個人的には思っています。

enmono そのためには軸が必要、モノはいいんだからちゃんとブランディングしてあげることが必要ということですね。

西村 そういうことです。

enmono あと若いウチにバックパッカーしろと。

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一同 (笑)

西村 それはやった方がいいと思います。

enmono ということで西村さん、今日はどうも貴重なお時間をありがとうございました。

西村 ありがとうございました。

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▶対談動画

▶西村さんFACEBOOK

▶老眼鏡ペーパーグラス総本店WEBサイト

▶西村金属WEBサイト

http://www.nsmr.jp/

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