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「新鮮な野菜がいつでも買える」当たり前が続くように、誰でも・マニュアル通りにやれば・たくさん収穫できる生産方式を作り上げた話

こんにちは。JA全農のFです。

さあ、夕飯の材料を買おうとスーパーに行くと、野菜売り場には、トマトもキャベツもニンジンも玉ねぎもキュウリも長ネギも…いろんな野菜が豊富に並んでいます。

そんな光景が当たり前になっていますね。

でも、実はそれ、当たり前ではなくなるかもしれません。

なぜなら…

野菜を作ってくれる人が激減している

からです。

野菜をつくる農家の数(※)は、2015年から2020年の間に、10万戸も減っています。37万戸→27万戸。一つの市の人口くらい減っています。
(※野菜販売農家数。農林業センサスより)

この勢いで農家がどんどん減り続けたら、スーパーの棚から国産のトマトが消えてしまうかもしれません。あるいは、レストランのサラダに入っていたトマトが、ある日を境に無くなってしまうかも…。

そんな未来にならないように、全農がやっていることがあります。それは、

「野菜を誰でも・マニュアル通りにやれば・たくさん収穫できる生産方式を作り上げて広める」

という取り組みです。
 
そもそもの大前提ですが、野菜に限らず農作物を生産するのはとても難しいことです。
天候に左右される中、病害虫から守りながら栽培する。農場の規模によっては人を雇って労務管理をする必要がある。しかも、作物の生育には時間がかかるので、短期間に何回も練習することはできません(例えばお米なら年に1回だけ!)。

生産が難しいのはトマトやナス、キュウリなどの野菜でも同じこと。
簡単にできるものではありません。

私自身、初めての家庭菜園のミニトマトでは小さーな実が数個しか収穫できなかった思い出があります。。

そんな、一朝一夕には技術を身に着けることができない農業。

一方で、野菜を生産できる人はどんどん減っている。

じゃあどうするか。

「野菜を誰でも・マニュアル通りにやれば・たくさん収穫できる生産方式を作り上げて広め」

ればいいじゃないか!というわけで始まったのが「ゆめファーム全農」という取り組みです。

この「野菜を誰でも・マニュアル通りにやれば・たくさん収穫できる生産方式を作り上げて広め」ること=「ゆめファーム全農」をつうじて、将来にわたって野菜の生産をささえていくという私たちの“ゆめ”、そしてその生産方式を使って野菜を生産する人にとっての“ゆめ”を叶ようとしています。

ゆめファーム全農がやったこと

話が少し専門的になってしまうので、例え話を先にさせてください。

突然ですが、あなたが大好きな食べ物で、食べないともう生きていけない!というほど好きだけれども、自分では作ったことがない食べ物を思い浮かべてみていただけますか。制限時間は10秒です。

それではスタート。

10、

9、

8、

7、

6、

5、

4、

3、

2、

1、

0!

はい!そこまでです。

何か一つ思い浮かんだでしょうか。

私が思い浮かべたのはカニクリームコロッケ。


以降、カニクリームコロッケをご自身の愛してやまない&作ったことがない食べ物に置き換えてお読みください。(せっかくここまで読んでくださったお優しい方に対して、好きな食べ物を思い浮かべろだの、置き換えて読めだの…注文が多くてなんだか申し訳ありませんがもう少しお付き合いくださいませ…)

カニクリームコロッケはあのトロトロのクリームの作り方もよくわからないし、あのほぼ流体なクリームをどうやって衣に包むのかもわからない。そしてもしかしてカニを茹でて身をほぐさなきゃいけない(面倒くさいな…)?!と、かなりハードルを感じる食べ物です。

当然、私は自作したことがありません。(お総菜屋さんのカニクリームコロッケ、最高。お惣菜、万歳。)

さてここでめちゃくちゃな仮定の話をします。

もしももしもあなたが大好きなカニクリームコロッケを作れる人やお店が、世の中から無くなってしまうとしたら。

・・・そう、
 
あなたが先頭に立って、
 
カニクリームコロッケ屋さん開業し、
 
チェーン展開していかなければならないですよね(?!?!?)
 
(突然の飛躍ですが、頭の中の想像力の翼をかきあつめて羽ばたいてついてきてください!)

とにかく、あなたが先頭に立ってカニクリームコロッケ屋さん開業し、チェーン展開していかなければならない。
 
さて。そんな状況になったらどうするか。
 
まずは自分でカニクリームコロッケを作る練習をするはずです。
なんせあなたはカニクリームコロッケを作ったことがないからです。
 
「カニクリームコロッケ レシピ」で検索し、材料を買い、試しに作ってみる。あるいは料理上手な人に習ってみるでしょう。
 
ちなみに不器用な私が挑戦したら、初めてのカニクリームコロッケは絶対に破裂しそうです。

そんな失敗をしたら、「カニクリームコロッケ 破裂しない方法」とかで検索して、方法を改善していくはずです。

で、きっと何回もトライしているうちに、上手にたくさん作れる方法が身に着いてくるはずです。
身に着いてきたら、レシピをチェーン展開することを見越して、作り方や注意点をメモで残すことでしょう。

さて…

「野菜を誰でも・マニュアル通りにやれば・たくさん収穫できる生産方式を作り上げて広める」という本題に戻ります。

 生産方式を広める前に、まずは自分が生産方式を身に着けなければならないのは全農も同じでした。

そこで、「ゆめファーム全農」という実験・練習用のハウスを建設し、トマトの栽培を始めました。これが2014年のことです。
ここでトップレベルの優れた技術を有する生産者に指導を受けながら、安定的にたくさん収穫できる生産方法を職員自ら学んでいきました。かつ、将来的に人に教えられるように、栽培方法を数値化・文章化していきました。

これが「野菜を誰でも・マニュアル通りにやれば・たくさん収穫できる生産方式を作り上げて広める」の1段階目でした。「自分でやってみる」の段階です。

さてさて…

カニクリームコロッケの話に寄り道します。

お家で上手にたくさんのカニクリームコロッケを作れるようになったあなた。その作り方をチェーン展開するには、作り方を洗練する必要がありそうです。
使う道具や材料も、プロ仕様のものに変えたり、ものによってはコストを抑えたものを検討したほうがいいかもしれません。

例えば、コロッケを量産するには家の鍋でやるよりもフライヤーを使った方がいいかもしれない。パン粉はもう少し細かいものの方がおいしいかもしれない。冷蔵庫とコンロと作業台の導線を見直した方がいいかもしれない…など。

ゆめファーム全農でも、1段階目で学んだ栽培方法を、効率化・省力化するために洗練していきました。トマトを収穫するときに使うハサミの種類はどんなものがよいか、栽培をモニタリングするシステムはどれがいいか、人を雇って栽培することを見越したら、労務管理の仕組みも検討しなきゃね…など。

これが「野菜を誰でも・マニュアル通りにやれば・たくさん収穫できる生産方式を作り上げて広める」の2段階目「生産方式を洗練する」の段階でした。

そして、こうしてできた生産方法と設備のセットを「ゆめファーム全農パッケージ」と名付けました。

さてさてさて…

もう1回だけカニクリームコロッケの話に寄り道します。

カニクリームコロッケの作り方を洗練させたあなたは、その作り方を普及させねばなりません。

さあ、どうするか。

方法はいろいろありそうですが、カニクリームコロッケの作り方を覚えてくれる店長候補を集め、研修を受けさせるのが方法の1つかもしれません。さらには店長候補を1か所に集めて研修するためのトレーニングキッチンが必要になるかもしれません。
また、その店長たちが開業するためには、洗練した方式を実現できる設備を備えたお店を建ててあげる必要もあるかもしれません。また、遠方での開業後もスキルアップできるように、遠隔で教える方法も確立したほうがよいかもしれません。

ゆめファーム全農でも、洗練した生産方式を広めるために、研修制度を整え、遠隔で栽培支援ができる方法を確立しました。これが「野菜を誰でも・マニュアル通りにやれば・たくさん収穫できる生産方式を作り上げて広める」の最後、「広める」の段階です。

この「広める」の段階を、ゆめファーム全農ではいま頑張って進めています。

実際に、栃木県や佐賀県では、このパッケージを活用して生産いただく農家さんが少しずつ増えています。

ゆめファーム全農の中身

「野菜を誰でも・マニュアル通りにやれば・たくさん収穫できる生産方式を作り上げて広める」ための「ゆめファーム全農」がどんな場所なのかご紹介します。

実はゆめファーム全農には、トマトだけではなくナスとキュウリのハウスもあります。それぞれ、「広める」の段階にあります。

今回は例として、ナスを生産しているゆめファーム全農こうちをご紹介します。今回は雰囲気をざっとお伝えするのが目的なので、写真でサクサクご紹介していきます!

外観:でっかい。
内観:ずらずらずらーっとナスが生えています。
収穫:立って作業するのにちょうどよい高さに実がつくようにしています。

ハウスの温度や湿度は自動制御:ハウス内の温度、湿度を常にモニタリングし、温度が高すぎれば窓を開けたり、温度が低ければ暖房を入れたり…自動制御しています。

ナスの状態を定期的にモニタリング:病害虫などの影響がないかチェックします。

こんな風に、「ゆめファーム全農」はめちゃめちゃ高機能なハウスなんです。

もしも仮にあなたが明日、「農業をやりたい」と思い立ったとき、それを実現する方法論が、全農にはあるんです。それがゆめファーム全農です。

適切な研修はもちろん必要ですが、従来の就農に比べれば早期に独り立ちできる可能性が高いです。

ちなみに、遠隔で栽培指導する仕組みもあります。

コックピット:遠隔でも栽培指導ができます。
栽培の遠隔指導を受ける側:スマートグラスを装着しながらビデオ通話します。
収穫されたナス:立派でつやつやのナスです。何にしていただきましょう…焼きナス?揚げびたし?マーボーナス?

最後に

(安心してください。もうカニクリームコロッケは出てきませんよ)

「野菜を誰でも・マニュアル通りにやれば・たくさん収穫できる生産方式を作り上げて広める」ためのゆめファーム全農についてご紹介しました。 

ごちゃごちゃと書いてしまいましたが、とにかく「野菜を誰でも・マニュアル通りにやれば・たくさん収穫できる生産方式を作り上げて広め」ているんです。

併せて、生産方法と設備のセットである「ゆめファーム全農パッケージ」の中身も改良を続けています。
(きっとカニクリームコロッケ屋さんの経営でも、レシピや店舗運営の方法改善し続けることが重要ですよね!)

ここまで作り上げてきた、そして今も改良を続けている「ゆめファーム全農パッケージ」を広めることが、将来にわたって、皆さんが野菜を買える未来につながると信じています。さらには、農家にとっても安定的に生産して収益を出すための選択肢の一つになるはずです。

そしてゆめファーム全農では今まさに、「広める」の段階を推し進めるべくいろいろと準備しています。

また遠からず、次のステップの取り組みをご紹介できるかと思います。特に、農業を志す方にとって耳寄りな情報になりそうです。ゆめファーム全農の次の記事をお楽しみに!

「ゆめファーム全農」を推し進める職員たち

最後までお読みくださりありがとうございました。