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【危険】日本の支配者層の闇に触れようとした問題作「一輝まんだら」

今回は「一輝まんだら」をお届けいたします。

これはなかなかに問題作ですよ。
正直これをご紹介するのはちょっとためらっちゃうんですが
可能な限りお伝えできるよう頑張ってみます。

…というのも。
コレ日本の支配者層の闇について触れているんで
正直どこまで書いていいのか分かりません
だから何言ってるのか分からない記事になる確率1000%ですけど
どうぞよろしくお願いします。(笑)


それでは本編行ってみましょう。

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まずは本編あらすじから。

時代は1900年、
清王朝末期の中国
明治、大正時代の日本を舞台に
手塚治虫お得意の史実とフィクションを巧みに織り交ぜた歴史もので
当時の中国の歴史、義和団の乱を中心に
姫三娘(きさんじょう)というとんでもなく
タフな中国人女性を狂言回しに物語が進みます。

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単なる田舎娘だった彼女がどんどん時代の荒波に巻き込まれ
義和団の敗北後、
北京から上海、そしていつしか日本に流れ着き
一人の男に出会います。


その男の名こそ…

「北一輝」

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彼こそ後の日本最大のクーデター未遂事件二・二六事件の
首謀者と言われた男です。

彼と姫三娘の数奇な巡りあわせから
物語が加速度的に面白くなっていくという予感を漂わせつつ…


…なんとここで未完のまま終了となります。


ええええええええええええええええええええええっ!

マジで!

これは非~常に残念。
タイトルからも分かるようにこれは「北一輝」の物語なのですが
なんと「北一輝」が登場してその直後に
連載終了というとんでもない作品であります(笑)

しかもこの「北一輝」の存在感ハンパありません。
登場回数は少ないながら
なにかやらかす感満載の猛烈なキャラクターで
常にヒリヒリする緊張感を漂わせています。

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かの三島由紀夫は北一輝のことを
「天才的思想家」「日本的革命家の理想像」と絶賛しており
そんな「北一輝」が暴れまわり
日本の闇をエグり散らかしたかも知れないであろう作品の続きが
読めないのは残念至極としか言いようがありません。


本作は
『漫画サンデー』にて
1974年9月28日号から1975年4月12日号まで連載されました

いきなり
冒頭から狂言回し姫三娘の無残な描写が炸裂しています。

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強姦、拷問、殺戮と
目を背けたくなる性差別描写はかなりの衝撃度です!

これは戦争下という日常生活がマヒした世界では普通のことだったのかも
知れませんがよくこれを描いたなという感じです。

そして世界史を扱う中で自国の立ち位置をどう描くかというのは
反対勢力や被害者の方々への配慮もあろうかと思いますが
殺るか殺られるかという過酷な現実を描写する…
時代背景を知るということはとても大事だと思いますので
この辺りの立ち位置というのは物語を進めていく上で必要だったのでしょう


1900年初頭
ここら辺の中国の歴史はまさに激動です。
1894年から始まった日清戦争から欧米列強が次々に清に侵攻してきて
それに対抗して起きたのが義和団の乱

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いわゆる「外国反対~」っていうような
農民たちの勢力が一大勢力にまで拡大していくんですね
そして
この熱狂的な排斥運動に時の権力者である西太后も同調。

…いやいや、、、そもそもあんたが原因やん!
腐敗した清王朝に問題があるからこうなっているんですけど…(笑)

…でそんなこと知ったこっちゃなく清王朝は欧米列国に宣戦布告


しかしあえなく返り討ち

すると一転して西太后は義和団を裏切り
義和団は国にも裏切られるという悲惨な末路を迎えちゃいます。
何なんですかこの悲惨さ!めちゃくちゃ悲惨です。

外国が攻めてきて自国がだらしないから義勇兵を立ち上げたら
国のお偉いさんが「お前らすごい」って味方してくれて
「よっしゃ任せとけ!」ってお偉いさんが勝手に喧嘩うったら
ボコボコにやられて、やっぱ「お前らのせい」って
ちゃぶ台ひっくり返される展開。


むちゃくちゃですやん。

この清王朝末期ってほんとにカオスです
そんなとんでもない歴史の渦に姫三娘が巻き込まれていくという
お話が本作なのです。

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ここからは本作では描かれておりませんが
この後、ロシアは満州に兵を駐屯させ実質支配して
これが後の日露戦争の火種になっていくというわけなんですが…

この辺りのロシアのモラルや日本の朝鮮半島へのかかわりについて
当時のアジアのカオスぶりはもう言いたいこと沢山ありますけど
むしろここでは言えないことばかりですからね(笑)

特に米ソが睨みあった朝鮮の分断化なんかは
ちゃんとした歴史認識を日本人は持っておかないといけないと思います
…まぁ変なこというと削除されるんで止めておきますが…


とにかく
アヘン戦争から始まり南京条約
HSBCとかイギリス紅茶メーカーとか
ここら辺のキナ臭さも、倒幕の長州藩に繋がって下関条約でしょ。

めちゃめちゃ関係してますやん。アレが。

そして長州下関といえば岸信介、安部さんのおじいちゃんですよ
現在の日本の政治を作ったとも言われている岸信介が
北一輝の思想を受け継いでいますから
どうしたって繋がってきちゃうんですよね…

北一輝の影響力ってホントに凄まじいものがあります。

特に北一輝が1920年に書いた革命構想、
『日本改造法案大綱』
GHQも参考にしたといわれ日本国憲法の7割くらい含まれているみたいで
かなり時代を先取りするような思想だったようです

北一輝っては右か左か?
なんてこと言われますが…
実は彼は右でも左でもなく
理想が巨大すぎて掴み切れない思想家だった…
大別できないスケール感を持っていたんじゃないかと思います。

そんな人物を手塚治虫が描こうとしていたわけですから
めちゃくちゃ見たかったですよね。

なんせ
お膳立てが整ってさぁここからというところだっただけに残念…

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実は手塚先生は

陽だまりの樹で幕末
シュマリで明治初期
一輝まんだらで大正
アドルフに告ぐで戦前
奇子で戦後
ムウで沖縄返還

という歴史の鎖を描いてきたと語っております。

そしてそのいづれも日本政治の闇を描いているんですね
つまりはこの「一輝まんだら」も、もしかしたら
アドルフに告ぐや陽だまりの樹といった
名作に並び称される作品になり得たかも知れなかったんですよね。


この一連の流れは
劇画に悩んだ手塚先生が「きりひと讃歌」以降徐々に
劇画を自分のものにしていったことで
よりシリアスな物語を発表できる場を構築できた背景があります。

元々人間の業を描くことを得意としていただけに
これまでになかった生々しい描写がより鮮烈になった感はありますね。


そしてなんで「北一輝」を題材にしたのか?
これは勝手な推測ですがやはり日本政治の闇
支配者層の何らかの存在を知っていたんじゃないかな

だって「北一輝」を描くなんて危険ですもん。
非常に危ないテーマだと思いますよ。
手塚治虫ほどの作家が危険を冒してまで書く題材じゃない
得することなんて何もない。

だからこの1巻の表紙なんか見てると
わざとそれを逸らしているようにすら思えます。
どうですかこの表紙
とても日本の闇に見えないでしょ(笑)


考えすぎかもしれませんけど…
表紙のオチャラケぶりに隠された真実
見たかったですね。

事実、手塚先生はあとがきで

「第二部では、日本の軍閥の跋扈と退廃、
北青年の失意と上海での執筆活動、
そして二・二六事件の青年将校の蜂起、
という核心に移していきたいと思っています。
どこかで連載をやらせてくれないでしょうか。」

と綴っておられ
やる気まんまんでしたが続きが見られることは叶いませんでした。
読者に人気がなかったのか
掲載できない理由があったのかまでは
知り得ませんが残念であります。


最後にタイトルの「一輝まんだら」ですが
「まんだら」って(本質を有する)って意味らしいんですけど
「何の本質」をタイトルに込めたんでしょうね。


めちゃくちゃ気になりますよねってとこで
今回はここまでとさせていただきます。


手塚作品には未完作が結構多いんですけど
本作はその中でも非常に歯切れも悪く別の意味で続きの気になる作品です。

作品自体というよりその背景
見え隠れする闇の部分が気になるという意味で続き読みたかったですね。
ぜひみなさんも2巻までしか出ていませんが
手塚先生が描こうとしていたことを感じ取ってみて欲しいと思います。


最後までご覧くださりありがとうございます。
文章が雑で意味不明なところも多かったと思いますが
あえてそうなっていますのでご了承ください(笑)

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