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【火の鳥未来編】死ぬまでに絶対読め!人類最高傑作の神マンガ降臨!人間はナメクジと同列!
今回は火の鳥未来編の後編お届けいたします。
前回記事をご覧になっていないかたは
こちらをご覧いただきましてから本編をお楽しみください。
それでは後編スタートです
前回は未来編を読み解くポイントとして2点絞りました。
①命の源(コスモゾーンとは)
②戦争の愚かさ
前回は①命の源(コスモゾーンとは)を解説しました
今回はポイントの2つ目みていきます。
②戦争の愚かさ
この反戦へのテーマは戦争経験者である手塚先生が
「戦争の悲惨さは伝えていかなければならない」
と常に手塚作品へ込めていた一貫したテーマであり
その想いがこの「未来編」ではそれが顕著に表れております。
なんせ本編の舞台である西暦3404年では人間は、考えるのを止めて
人類の生き方を決めるのは電子頭脳の世界となっていて
その電子頭脳が追い求めた合理的な選択によって
人類が滅びるという猛烈な世界観が描かれています。
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文明が進歩しすぎた終末世界も強烈ですけど
自分の頭で判断を下さない事による悲劇の方が痛烈
電子頭脳に盲目的に従う人類の愚かさといいますか
人間らしさを失っていく描写が見事です。
作中では
朝食べるパンでさえも電子頭脳の指示に従う社会が描かれています。
こんな社会あり得ない!
なんて思ってしまいますけど
ボクらは今
ぐるなびやネット検索の指示に促されるように食事をしていないでしょうか
あたかもネット検索の「点数が高いご飯が正しい」ような感覚に陥いり
合理的な判断が日常化しています。
着々とあり得ないと思えた世界に近づいているんです。
この無意識の変化が最も恐ろしいのではないでしょうか。
そして
作中の電子頭脳に抵抗する市長のことば
「人間が作った機械のために規制される…
そんなことがもうこれ以上あってはならん」
これの深い意味に「はっ!」とさせられます。
実際に実社会は
アルゴリズムの指示に従って選択させられている現実があります。
合理的とは一体なんなのか?
データ任せの判断によって自分で考えることを放棄した社会は楽です。
そりゃあ便利です。
でもその間違いに人類が気づく日は来るのでしょうか?
猿田博士はこう言います
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「なぜ機械の言うことを聞いたのだ」
「なぜ人間が自分の頭で判断しなかった、ええ?」
そう問うもロックにとってはそれが常識であり違和感を感じていません。
常識化してしまうとその異質さに鈍感になってしまう怖さ。
これはまさしく現代社会にも通づるシーンと言えます。
そしてロックが叫ぶ火の鳥屈指の名シーン
シンプルにして痛烈。
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どんなに電子頭脳に判断をゆだねるようになっても
戦争だけは絶対にいやだと。
これは戦争に至る過程を電子頭脳の判断と揶揄していますが
完全に手塚先生の愚かな人類への強烈なメッセージであります。
戦争の愚かさをドストレートに込めた名シーンは『火の鳥』だけに留まらず
手塚作品の中でも最も印象的とも言えるシーンになっています。
そんな叫びも虚しくついには…
核戦争によって人類が滅びてしまいます。
しかしこの「未来編」はそれで終わりじゃない、
むしろここから。
そこからが遥かに長い(笑)
幸せとは…。
人類滅亡から新しい生命の誕生までの
気の遠くなるような時間経過の描写
想像を超える絶望感、孤独感、終末感
ケタはずれの展開が異次元すぎて
核戦争も電子頭脳に支配された人類も
み~んなちっぽけに見えてくるという超絶な展開が始まります
それが故に生命の神秘がいかに素晴らしいものであるか
浮彫になってくる描写も見事の一言。
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人類として一人残されたマサト
死ねない恐怖という事を通して生命の在り方、
戦争の悲惨さを伝えるメッセージが強烈です。
戦争によって全人類が滅亡してしまい
たった一人だけが残された世界に絶望するマサト
自分以外誰もいない世界なので
怒ったりイライラしたり他人に惑わされることなど一切無くなるんですが
それ以上に狂おしいほどの孤独に悩み苦しみます
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共感する相手がいないことがこれほどまでに
ツライことなのかという現実をたたきつけられます。
結局、人間の求める幸せというのは、人間関係の中で生まれるもので
それを排除することは自らの幸せを奪う行為であることへの裏返し、
争うことが如何に愚かな事であるという反戦へのメッセージにも
なっています。このように何重にも重ねて戦争の悲惨さを伝えてくる
「未来編」
そして新たに
人類に代わって地球を支配する生物が登場します。
出ました。ナメクジの登場です
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知性を手に入れたナメクジが新しい支配者として地球上に君臨します
しかし
結局、知性を手に入れ文明を築くも
ナメクジ内で争いを起こしナメクジたちも滅亡してしまいます。
「われわれは万物の霊長」と調子にのったナメクジたちにマサトは想う
「驕るな」と。
ナメクジも人間も同じ道を辿って滅亡って
どんだけエグイんですかこのマンガ…
知性って一体なんなのって小学生の頃に怖くなりましたよ。マジで。
「戦争の愚かさ」から始まって知性の在り方にまで言及したメッセージは
はっきり言って小学生のボクには理解不能でしたけど
大人になってからもそれがずっと残り続けているんですよね。
表層的な刺激じゃない分、潜在的にくすぶり続けると言いますか
とにかく怖かったです。手塚治虫という大人が怖かったですよ。
なんなのこの人ってマジで思いました(笑)
でもね、ある時来るんですよ。突然。
手塚治虫ってスゲーって。そのケタ違いのポテンシャルに。
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とにかく戦争の愚かさ、驕る知性の愚かさということが
心に沁みるわけですよ。
前編でご紹介した①命の源(コスモゾーンとは)と併せて
②「戦争の愚かさ」
この2つのポイント
未来編を楽しむうえで参考になさってみてください。
円環の物語
本当はここで終わるつもりでした。長々と書いても、とっ散らかるのでここらで締めようと思ったんですけどもうちょっとだけ(笑)。
この「未来編」は人類終末という火の鳥の最後の時代を描いているのですが
最終章を描いているようで実はすべての始まりを描いています。
過去だと思っていたはずの「黎明編」が、
突如として姿を現すあの瞬間に小学生のボクは打ち震えました
まさに常識の価値観を宇宙の外側までぶっ飛ばす衝撃を味わえます。
実は一直線だと思っていた時間軸が輪っかのように繋がっていて
過去の出来事を繰り返していくんです。
無限の生命連鎖つまりは輪廻転生
「永遠」とは無限に続くものではなく
滅びてまた再生する繰り返しによる「永遠」であると。
死と復活こそが『火の鳥』の象徴だというわけです。
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そして「未来編」の結末はこのように締めくくられています
「でも今度こそ」と火の鳥は思う
「今度こそ信じたい」
「今度の人類こそ きっとどこかで間違いに気がついて…」
「生命を正しく使ってくれるようになるだろう」と…
この「今度こそ」の言葉の使い方ね。
この一言でどれほどの時間経過があったのか分かっちゃいますからね。
そして手塚先生本人の思いのすべてが込められている言葉。
マクロからミクロへの超時空的世界観を描いた
手塚治虫の凄さが爆裂したマンガ『火の鳥』
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手塚治虫にしか描けない世界観
手塚治虫でしか成立しない世界観
純粋に持ち得てるポテンシャルがケタ違いです
圧倒的なんて安っぽい言葉では整理できないくらい圧倒的です
とにかく
語っても語り尽くせない「未来編」
マジで5~6時間平気で喋り倒せる圧倒的ボリュームですが
今回はここでおひらきにしたいと思います。
『火の鳥』好きな方も今この時代にもう一回読み返してみてください。
新しい発見が必ずありますから。
読んだことが無い方はもう必読!
この作品の醸し出してる世界観をぜひ体験してほしいと思います。
次回は「ヤマト編」。
ぜひそちらもお楽しみいただければと思います。
最後までご覧くださりありがとうございました