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アニメがメキシコのアングラカルチャーに与えた影響とは:メキシコの音楽

おはようございます、だいぜんです。
わたしは音楽が大好きで、インディーからポップ、民族音楽まで大好きです。広く浅く聴くタイプです。

さて、このnoteは、わたしの友人リチャードがBandcanpに公開した記事を翻訳したものです。
(彼は特にラテンアメリカの音楽に精通しており、インディーアーティストなどのインタビューも行っていて、彼はBandcamp以外にも様々なカルチャー系メディアで記事を書いています)

1人でも多くの人にカルチャーを味わってもらいたく、一部注釈をつけています。

本記事は本人の了承をもらって翻訳をしています。
また、上記リンクプラスで本人の好意でリチャードの生原稿をもらってから翻訳をしています。
(彼の音楽オタクっぷりはすごいので、楽しんで読んでみてください)


記事執筆: Richard Villegas
イラスト:María Camila
2021年6月8日に公開された記事です。


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音楽シーンに入り込んだアニメカルチャー

2020年2月、日が落ちた首都メキシコシティにて、*エレクトリック・デイジー・カーニバル(以下EDC)が開催されました。巨大な*ドス・エキスのステージのスクリーンには、ピカチュウが飛び跳ねていて、アニメ調の女子高生たちが踊っているシーンが突如として映し出されます。
そのシュールな光景に続き、目まぐるしく変化する歌声と、ドラムのキックとハイハットのコンボが響く*レゲトンが聴こえてくると、いよいよ Army of Skanksがステージに登場。
メンバーの Sugar Mami こと Pat Ana Castellanos と Cepillo Cuevas は、キラキラしたメイクと反射する蛍光色のスポーツウェアを身にまとい、任天堂のサンプル音楽に合わせて、オタクの傷心とカービーのツンデレをテーマにした刺激的な歌詞を織り込んで、愛情を込めて作った「Perreo Hentai」(訳:ヘンタイのケンカ)で、あっという間に観客を魅了しました。

一見すると、奇妙に思えるかもしれません。しかし、彼らのパフォーマンスは、音楽チャートを席巻するレゲトンから、最先端のミーム文化、アニメやマンガの普遍的な存在まで、メキシコ文化の現代的な特徴を反映しています。

*エレクトリック・デイジー・カーニバル
アメリカ合衆国ネバダ州ラスベガスで毎年5月に開催されているEDMの音楽フェスティバルのことで、世界各国で同名で開催されている。

*ドス・エキス
メキシコのビールメーカー名

*レゲトン
ヒップホップとラテン音楽が融合した音楽。

「泣けました。こんなに大きなステージでパフォーマンスできるなんて信じられませんでした」と語るAmys of ShanksメンバーのCuevas。彼は2000年代後半に爆発的に普及したムーンバートンの最盛期に音楽のプロデュースを始め、このジャンルのパイオニアである Hermanito Label の Dave Nada とコラボレーションをしたことがあるほど。
「大きなオタク文化がここにはあります。自分の場合は、いつも自分のゲームライブラリから直接サウンドファイルを抽出しています。*Perreos(ペレオ)のDJを始めたときに、『聖闘士星矢』のパロディ(『Siente Mi Cosmos Mami』)をよくかけていました。アニメやゲームは昔から定番ですが、今のミュージシャンはノスタルジーな雰囲気を取り入れてプレイしているので、さらに盛り上がっていますね。」

*Perreos(ペレオ)
レゲトンに合わせてダンスする。語源は「Perro(犬)」から来ており、犬の口鼻のようにぴったりとひっついて、腰を動かすことから、そう呼ばれている。

ここ数年、メキシコのアンダーグラウンドに、ノスタルジックさ、オタク的ユーモア、そしてイノベーションが新たなサブカルのエッセンスとして生み出されており、ニッチな電子音楽から同性愛カルチャーまで、あらゆる場所に取り入れられています。
2019年には、モンテレイのDJ兼プロデューサーの Nurrydog が、『新世紀エヴァンゲリオン』の主題歌「残酷な天使のテーゼ」をレゲトンでカバーし、EDCで披露しました。

今どこのレコード店に行っても、J-POPコーナーは充実しています。J-POPの人気により、メキシコ国内ののフューチャー・ファンク・シーンが刺激されています。
また、コロナウイルスの大流行によるナイトライフの無期限の営業活動の停止となる前までは、メキシコシティのソナ・ロサ地区では、トップ40に入るヒット曲やオールディーな名曲、コスプレしたドラァグクイーンなどを織り交ぜたパーティー「フリッキーペレオ」がカルト的な人気を集めていました。

アニメはラテンアメリカで非常に人気があり、さらにメキシコ人はアニメへの思い入れは特別です。さかのぼると、メキシコとアニメの歴史は60年近くにも及びます。


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60年近くにおよぶアニメの歴史

1964年、『鉄腕アトム』が日本のアニメシリーズとして初めてメキシコで吹き替え放送され、テレビ番組の定番となりました。
その後も『スピードレーサー』や『キャプテン翼』などが放送されました。
これらの番組は、メキシコの無料放送テレビ局の柱であるTelevisaや、のちのTV Aztecaで毎日放送され、多くの家庭で、日本のアニメが無料で楽しまれることになります。

これにより、出身地や経済状況にかかわらず、誰もがアニメに親しめるようになり、メキシコの若者たちの意識の中にアニメが定着して行きました。
この平等主義的なモデルはすぐにメキシコ全土で採用され、その過程でアニメにラテンアメリカ特有の質感が吹き込まれていくことになります。
少女漫画の名作『キャンディ・キャンディ』(1975~79年)はアルゼンチンのスペイン語に吹き替えられ、マイアミでは『マジンガーZ』(1972~73年)が国際的な声優陣を起用して、『マジンガーZ』の世界観やキャラクターに反映させていきました。
ペルーやブラジルには日本からの移民が多く、早くからアニメを受け入れていました。
そして、急速に拡大した番組の販路拡大により、90年代のラテンアメリカのアニメとマンガの黄金時代への道を切り開くこととなります。

*Frikiperreo(フリッキーペレオ)
Freak(英語でオタク、マニア、フリーク)とPerreo(上述)の造語。

Gaby Manga とも知られている Gaby Maya(以下マヤ)は、メキシコにおけるマンガ出版の先駆者であり、90年代半ばに Adalisa Zarate とともに人気同人誌 Animanga  を共同で設立しました。
1992年から2004年にかけてその業界で活躍したマヤは、『聖闘士星矢』の塗り絵のライセンス契約を仲介したのをきっかけに、Editorial Toukan や Editorial Mango チームと共に、『ドラゴンボールZ』、『セーラームーン』、『らんま1/2』、『ワンピース』、『カードキャプターさくら』、『ポケモン』、『デジモン』、さらには『*パワーレンジャー』などのタイトルの出版権や販売権を獲得しました。
マヤによると、アニメのストーリーは、メキシコと日本の間で共有されている家族の価値観を反映していること、強いレジリエンス(回復力)を含むメッセージ性があること、ストーリーの典型が人気ドラマのフォーマットと同じであることなどが、アニメがメキシコの視聴者の心に響いた理由と述べています。

*パワーレンジャー
ゴレンジャーのこと

マヤ曰く、「すべてのアニメのストーリーは継続型で、1話完結型ではありません。(ドラゴンボールZの)悟空が世界的な脅威と戦うことは誰もが知っています。しかしそれだけではなく、幼少期から思春期、父親になる、さらには祖父になるまで、悟空とともに、わたしたちも成長していくのです。どのキャラクターも、何年も夢中になれる独自のストーリーを持っているので、テレビ画面の中では常に学びと成長を感じられます。それに、常に逆境を乗り越えなければならないということも、わたしたちの心に響くものがあります。
『家なき子 (Nobody's Boy: Remi)』のレミは不運の避雷針のような存在でした。テーマソングは常に彼とわたしたちを励まし、前に進ませてくれました。特に、番組が放送されていたのは1980年代半ばで、何百万人もの人々に壊滅的な打撃を与えた 1985年の地震と重なっていたため、当時のわたしたちには思入れのある番組だったと思います。」

しかし、みんなが『聖闘士星矢』や『セーラームーン』などの感動的なパワーを信じていたわけではありません。
2000年代半ば、TVアステカの番組制作者である Lolita de la Vega は、アニメの猛烈な敵対者でした。彼女はアニメのヌード描写や下品なユーモアから「悪魔的で若者を堕落させるもの」とレッテルを貼りました。彼女の意見は多くの保護者団体の支持を得て、テレビでのアニメ人気は着実に減少しました。

しかし、唯一『ドラゴンボールZ』は人気がありすぎて放送スケジュールから外されませんでした。
そして、同時期に Cartoon Network、Nickelodeon や Fox Kids などのケーブルチャンネルから『ポケモン』『デジモン』『遊戯王』などの人気番組が放送され、新しい世代のファンを獲得することができました。
同じ頃、Friki Plazas と呼ばれるアニメだけのモールがメキシコの各主要都市に出現し始め、アニメ好きのメッカのようなイベント La MoleLa CONVEExpo TNT が開催され、アニメフリークやオタクにとって健全な空間が醸成されていくことになります。
そして、インターネットの台頭により、YouTube や Crunchyroll のおかげでアニメへのアクセスはさらに広がり、同時にオリジナルコンテンツを配信するためのエコシステムが育まれていきました。

「レジャー施設やショッピングモールでは、大規模なコスプレ文化への道を開拓し、メキシコのマンガにさらに幅広くプラットフォームを提供していくことになります。しかし、多くの海賊版が市場に出回ったことを無視することはできず、日本企業はラテンアメリカへの投資に慎重になっていきます。
ただ海賊版の登場には2つの見方があります。出回ったことで、同時にマンガやアニメ文化が社会構造に入り込んでいくことになったのです。
例えば、私が住んでいる地区では、当時改装工事が行われており、朝8時に工事関係者の携帯電話から「La Cumbia de Goku」が流れ始めました。
また、他の日に家の近くのレストランの前を通ると、従業員が「One Punch Man」を見ているのを目撃しました。つまり、アニメはとても身近で、そしてあらゆる場所にまで浸透しているのです。」とマヤは語ります。

アニメや漫画のクリエイターたちもこのムーブメントを後押ししています。
メキシコシティの La Mole では、2018年に「ヘンタイ」のパイオニアである前田俊夫氏を、翌年には士貴智志氏(『神風』『ライオット』『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN: Before The Fall』)をゲストとして招聘。
サンパウロのコミコンCCXP にも、2016年には弐瓶勉氏(『Blame!』、『シドニアの騎士』)、東映アニメーションの副社長・森下 孝三氏(『ドラゴンボール』、『聖闘士星矢』、『デジモン』)らが注目するほど。
ある意味、ラテンアメリカが大御所たちから特別な注目を集めたのは、放送局が彼らのマンガや番組のオリジナル版をリスペクトし、彼らの作品が米国市場に入る際に受けた激しい編集や検閲とは対照的に、より深い自然なつながりを育んだからだと言えます。
また、インカ帝国の崩壊を描いた Yoshikito Inamoto 氏の『ナスカ』や、ブラジルを舞台にしたスタジオマングローブのアクション・ロードムービー風アニメ『ミチコとハッチン』など、多くの番組のインスピレーションの源にもなっています。


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パロディクリエイターたちが自国の芸術をつくる

ユーチューバーの Elvakeroporno(The Porno Cowboy)は、アニメの人気キャラクターを中心とした、独創的なレゲトンや流行のファンタジーな雰囲気を持つアーティストで、多くのファンを魅了しています。
モンテレイのカウボーイのような雰囲気が魅力の彼は、「El Corrido de Black Goku」(訳:黒い悟空のバラード)で初めて人気を博すことになります。
この作品は彼がYouTubeにアップロードしたもので、後に同僚の電話で自分の曲の人気に火がついたことに気づきます。

そこから彼のチャンネルは有名になり、中でも最も人気のビデオは、悪役主人公キラ(『デスノート』の主人公)の視点でアウトローな民話を演じた「El Corrido de Death Note」(訳:デスノートのバラード)や、数年前の『聖闘士星矢』の*ミームをベースにした「Caballeros del Reggaeton」シリーズ内で、今では伝説的で耳タコになった言葉「Siente Mi Cosmos Mami」(訳:ヘイ、俺の宇宙を感じろよ)を生み出しました。
「実際には存在しなかったんだけど「セイント・セイヤのグレイテスト・ヒッツ 」というジョークがあって、ビックヒットの可能性を感じたんだ。
そして自分たちの世代は、『セーラームーン』や『聖闘士星矢』、『パワーレンジャー』に育てられたようなもの。
90年代にTVアステカのチャンネル7で放送された『セーラームーン』を見ていたことをよく覚えているよ。
放送が始まった当時は、誰もが男性向けの番組とは思ってなかったけど、ストーリーは最高だった。
自分の友人グループはみんな男の子で、セーラームーンごっこをしようとすると、誰がタキシード仮面を演じるかでいつも喧嘩になっていたよ(笑)。」と Elvakeroporno は語っています。

*ミーム
世間の時事ネタやネットで話題のニュースなどをネタとして取り上げ、皮肉を交え、面白おかしく画像、ビデオ、文章にしたもの。

Elvakeroporno は、Los Weyes Que Tocan(「El Poketribal」)、Lalothing(El Corrido de All Might」)、Maryan MG(「La Cumbia del Otaku」)などのYouTubeクリエイターの仲間入りをし、風変わりなパロディを洗練させ、原作を揶揄する以上に、作品自体がをオリジナル版を凌駕するほどの影響をもたらしました。

メキシコ以外では、チリのシンガーソングライター Me Llamo の Sebastián が、ポケモンやセーラームーンへの愛を歌で表現したり、今年初めには、ドミニカ共和国のプロデューサー Seyer が、地元の歌手 King Boty と組んで、ゲームボーイを使ったセクシーなレゲトン・ジャム 「Solo Si Me Quieres」を発表しました。
また、ブラジル人プロデューサーの DJ Junior Santorini は、テクロノブレガの傑作「Ritmo do Zodiaco」で、『聖闘士星矢』の世界にスローな熱気をもたらしました。
ポップスのスーパースターである Pabllo Vittar 、Anitta 、Luíza Sonza は、『カードキャプターさくら』と『エンジェル ウォーズ』にインスパイアされた「Modo Turbo」という楽曲を発表しました。

「時々、パロディの登場によって、わたしの仕事を妨害していると言われることがあります。でも逆に、外国のものを自分の文化に合わせるということは、まさにわたしたちがこの芸術を完全に自国のものとして取り入れた証拠になるのです」とギャビー・マヤは語ります。

*テクノブレガ
チージーテクノ (Cheesy Techno) とも呼ばれる、北ブラジル ベレンから発生した音楽のジャンルとそのビジネスモデルの形態の事を指す。 テクノブレガは主に80年代ポップス音源をリミックスして作られるというその製作スタイルと、販売方法に特色が見られる。
Wikipediaより


最後に、以下の10人のアーティストたちの楽曲を紹介します。
彼らの曲を聞くことによって、アニメや日本文化への愛情がメキシコのアンダーグラウンドでどのように表現されているのかを、より詳しく知ることができるでしょう。

聞くべきアーティスト① Sailorfag

クィア 活動家であり、美容系インフルエンサーであり、スパイシーなレゲトン・アーティストであるSailorfagは、最先端のファッションと、毒のある男らしさや失敗した人間関係について、ヒステリックな歌と融合させた、バイラルパワーな世界観を持つアーティストとして登場しました。
初期のシングル 「Polo Acartonada」と 「Amiga Date Cuenta」では、初音ミクがバットマンの悪役になったら?という世界観を表現しました。
konnichiwatontas」やパワーパフガールズにインスパイアされた「Bad Girls Go To Cancun」では、ひたすら「カワイイ」を追求した楽曲に仕上がっています。
昨年末、Sailorfagは 「gotiK (papi papito) 」と題したダークテイストの楽曲をリリースしました。メキシコのゴスカルチャーを取り入れ、ファイナルファンタジーやポケモンなどのクラシックRPGをリスペクトしたミュージックビデオも公開しています。


聞くべきアーティスト② Macross 82-99

メキシコでのフューチャー・ファンクの先駆者の一人であるMacross 82-99は、ポップなノスタルジーを表現し、インターネット・カルチャーのエネルギーを吹き込むことで、国内とアジアの両方で着実にファンを育ててきました。

Macross 82-99は『ロボテック』の人気作品「マクロス・サーガ」から名前を取り、「Sailorwave I & II」や「Summer Touch」など、J-Popやディスコサンプルとアンビエントな雰囲気や*ヴェーパーウェイブの美学が融合した一連のカルト的レコードが特徴です。
Macross 82-99は、Night TempoDesired などのプロデューサーと一緒にSailor Team の一員として活動しています。最近では、最新アルバム「Shibuya Meltdown」のような、よりハードなクラブサウンド寄りの音楽を制作しています。

*ヴェーパーウェイブ
2010年代初頭にWeb上の音楽コミュニティから生まれた音楽のジャンルである。過去に大量生産されて忘れ去られた人工物や技術への郷愁、消費資本主義や大衆文化、1980年代のヤッピー文化、ニューエイジへの批評や風刺として特徴づけられる。基本的にパソコンとDAWを用いて、素材の加工と切り貼りだけで制作される。
Wikipediaより


聞くべきアーティスト③ Kodomo Gun

モンテレイ市のミステリアスなパンクスKodomo Gunは、2019年のクリスマス、彼ら名義のデビューEPを世に放ちました。楽曲全体は10分未満の長さで、「カワイイキック」をストレートに届けてくれます。
Tsunami」や「Robot」のようなトラックは、チェーンソーギターとキュートなボーカルを融合させており、Kodomo Gunはモンテレイ市の盛んなパンクシーンの中でも傑出した存在です。
Kodomo Gunのステージ上での生き生きとしたパフォーマンスと、子どもじみた彼らのニヤニヤした表情を、パンデミック後のライブにて楽しんでください。ライブ告知は彼らの Instagram でチェックしてみてください。


聞くべきアーティスト④ Army of Skanks

Army of Skanksは、大きめのフェスに出演し、レゲエ・アンダーグラウンドのニューカマーとして、急速にその地位を確立し、今春末にはデビューEPのリリースを控えていました。
彼らの楽曲には、マリオカートからピカチュウやトゲピーなどのポケモンまで、ゲームやアニメのサンプルがふんだんに使われており、シングル曲の「Perreame Konnichi Wa!」や「Pikachu Quiere Perrear」が代表的な作品です。
その次に発表されたEP「Ejercito de Inventadas」には、フォークポップ歌手のMi Sobrino Memo との異色のコラボや、新進気鋭のペレオ界のボス Charly Gynnの熱烈なフィーチャリングなど、ハイテンションなコラボレーションがふんだんに盛り込まれています。


聞くべきアーティスト⑤ Future Otaku

メキシコシティのFuture Otakuは、Macross 82-99、Sentidos ApuestosCibereality などと並び、国産のフューチャーファンクやヴェーパーウェイブジャンルの魔術師として潮流を作ってきたアーティストの1人。

多作なプロデューサーである彼は、インディペンデント系のほか、Neo Motel や PLAYAWAVE といった人気レーベルから数多くのアルバムをリリースしており、マイケル・ジャクソンや Earth Wind and Fire などのクラシックなディスコやファンクのレコードサンプルにも精通しています。
そして、「SPACE.EXE」や「Future Idols」などの大作アルバムを中心に、夜遅くまで飽きのこないパーティーチューンを展開しています。


聞くべきアーティスト⑥ Makoto Kino

メキシコシティのエレクトロニック・アーティスト Makoto Kino は、日本のアイドル・シーンや解体されたクラブ・サウンドから影響を受け、低音やノイズをベースに、何年も*エクスペリメンタル・アンダーグラウンドに定着してきました。

2016年のデビューアルバム「Eternal Loss」では、彼らのアーティスト名の由来になった「セーラー・ジュピター」の強さと弱さのバランスを表現し、楽曲の中でのシャウトのサンプルが、性的なナーバスさと親密さの雰囲気を醸し出しています。
Makoto Kino が2020年に発表した「Glitter Rose Garden」では、官能的な雰囲気を、揺るぎない落ち着きのある空気に変え、「West Madoka」や「Hànzì Semiotics」などの曲を、エレガントで不穏なサウンドテイストに変えています。

*エクスペリメンタル
日本語で実験音楽。
一般的な作曲と演奏のテクニックの限界を押し広げたり、ジャンルの基本的な要素を元に実験を行ったりするものである。アーティストは、即興演奏、アヴァンギャルドな影響、風変わりな楽器、難解で不透明な歌詞(または楽器演奏)、異質な構造とリズム、そして根本的にコマーシャリズムの拒絶など、そのジャンルの際立った特徴のいくつかを用いて解放と革新を目指している
Wikipediaより


聞くべきアーティスト⑦ Aku P

ボーカロイドとUTAUソフトウェアの無限の海に飛び込んだAku Pは、ハイパーポップ、*チップチューン、パンクをデジタル合成された音声を融合させることで、ビデオゲームのような別世界のクオリティが生まれ、特徴的なサウンドを開発したアーティストです。

2016年のデビューEP「My Reality」は、サイボーグのようなボーカル、粘り気のある甘いシンセサイザー、打ち込みドラムで構成された研磨されたような音で、彼の使命感に満ちた作品になっています。
このEPからうって変わり、シングル曲の 「Azúcar」や 「Café Molcajeteado」では、よりソフトな音を表現しました。

多才で冒険好きなAku Pは、Sailorfagのバイラルな2019年のシングル 「Terrible, Perriemos 」のビートをプロデュースし、彼の豊富なボーカロイドのストックを利用し、レゲトン・スターと夢のダンス・ダンス・レボリューション・アンセムを作り上げました。

*チップチューン
おもに1980年代に発売されたパーソナルコンピューターや家庭用ゲーム機に搭載されていた内蔵音源チップで作られるポップテクノから派生した。
Wikipediaより


聞くべきアーティスト⑧ Trillones & Mary Chan

メキシカリ出身のプロデューサーTrillones は、地元で最もお気楽な子ども時代から、ミーム文化に精通したダンスミュージックオタクへと着実に進化し、多彩なキャリアを持っているアーティストです。

2019年後半には、地元の新人Mary Chan(某人気のインスタントラーメンのブランド名をギュッとして、彼女のアーティスト名になっています。)とコラボし、2人で変わったオタク・ぺレオ・*バンガーを制作することになります。
初のコラボ・シングル 「Ninja Way 」では、Mary Chanが自分を「新しい時代のペレオのセンセイよ」と大胆にも宣言し、Trillonesはクラブ音楽とアニメ的なベースラインを取り入れたワイルドなレゲトンベースを表現しました。
続く「Perreo Kawaii」では、楽器は控えめながらも、首がもげるような殴られるようなビートで、後半のビートチェンジでは昔ながらのトラディショナルなレゲトンの雰囲気を醸し出しています。

2人ともソロ活動をしていますが、このシングルは今年後半にリリースされる予定の*Weeb-tasticなテイストのEPに収録される予定です。

*バンガー
クラブ、ディスコ、パーティ、イベントなどでドカンと盛り上がる人気曲のこと。
洋楽データバンクより
*Weeb-tastic
アニメや「日本」の文化に大きく関連しているように見えるものを表す形容詞。
Urban Dictionary より


聞くべきアーティスト⑨ DΛRKNΣSS

バハ・カリフォルニア州テカテ出身のDΛRKNΣSSは、2019年からノンストップで制作活動を行っているアーティスト。生と死、そしてその間にある不安について、彼女の哲学的な瞑想を表現する新しい音楽やコンピレーションを、世に出し続けています。
彼女のニュー・アルバム「Echoes of Crime」は、アンビエント、ローファイ・ビート、ジャズ・サンプルを網羅しており、多面的でチルな彼女らしさを紹介するのに最適なリストになっています。もちろん、「東京の悲しい早朝3...」や「Suicide Hotline」のような初期のリリースも見逃せません。*ドローン系からフューチャー・ファンクへの衝撃的な変化は、リスナーを決して飽きさせません。

*ドローン
音楽におけるドローン(英: drone)とは、楽曲の中で音高の変化無しに長く持続される音のこと。
Wikipedia より



聞くべきアーティスト⑩ Jesse Cassettes

チワワ出身のJesse Cassettesもまた、ノスタルジーさをリスペクトする、フューチャー・ファンク・プロデューサーの一人です。彼は、アジアの音楽を好んで使う他のプロデューサーとは異なり、ラテン・ポップスの名曲を巧みに再評価した作品が魅力的です。
昨年リリースした「90's, Moda, Rock&Roll (Ft. Iden Kai)」は、80年代のファンダンゴの名曲をハイパーにアレンジしたもので、「L U I S M I W 4 V E」シリーズでは、メキシコのポップアイコンであるLuis Miguelの不朽の名曲を、再復興させ、彼なりのフィーチャーなフィルターを通した作品になっています。
Jesse Cassettesは、Magiobus や Popcornkid! などのプロデューサーと肩を並べ、独自の実験的な特異性を通して、チワワの見落とされがちなエレクトロニック・シーンを活性化させているアーティストです。

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