モーリス・ピアラ監督『悪魔の陽の下に』賛否両論が巻き起こった挑戦的作品
<作品情報>
<作品評価>
70点(100点満点)
オススメ度 ★★☆☆☆
<短評>
おいしい水
『愛の記念に』などのモーリス・ピアラ監督が悪魔と対峙という宗教的なテーマを描いた作品です。上映後は拍手とブーイングが入り乱れるカオス状態だったということです。
神父のパートとムシェットのパートは時代が違うように見えたんだけど気のせいでしょうか?
「神は悪魔に負けた」「神でも悪魔でもいいからこの子を生き返らせてください」というセリフからもジェラール・ドパルデュー演じる神父は悪魔に魂を売ったことが分かります。
サンドリーヌ・ボネールはとてもいいんですが、劇中呼ばれる「少女」というのに引っかかってしまいました。大人顔すぎてどう見ても30歳くらいにしか思えない…
悪魔の誘惑を可視化する表現、場面を飛ばしたりいきなり現れたりする繋ぎが面白いです。
ただ、セリフがあまりに観念的で咀嚼に苦しみます。ベルイマンの見事なストーリーテリングを見慣れていると少し劣るかなと感じます。
ジェラール・ドパルデューの病的な演技やモーリス・ピアラ自身が演じる先輩神父はとてもよく、「悪魔に支配された人間」をなかなか上手く描けていると思います。
ただ悪魔の表象として「同性愛」を持ち出すのはいかがなものかと思いました。
吉原
パルムドール受賞時に賛否両論を巻き起こしたという宣伝文句ばかりが先行する作品。実際、キリスト教圏ではブーイングが起こるのも致し方ない作品なのではないかと思います。
真面目であるが故に信仰の限界に気づいてしまい、神父としての自分に無力感を感じてしまっている主人公が出会ったのは、神の対局に存在する悪魔である。
私は本作を神を盲目的に過信することに対する批判を描いた作品であると捉えました。
神を理由に歴史は作られてきた。「奇跡」と言われる様なことも多々起きたのかもしれませんが、今となっては神の存在を理由にするには少し行き過ぎと思う様なものもある。「決闘裁判」などはまさにその例で、どんなに信じても助けてくれないときは助けてくれない、それでも人は神を信じるのか。
などと、考察することはできるものの、やはり蚊帳の外の世界である故に限界がある。知識無くしてより高次の考察をすることは難しいです…
だけど、そんな考察をさせてくれるほど異文化に簡単にアクセスできる映画はやはり素晴らしいと思います。本作も作品としてはなかなか難しいですが、一見の価値のある作品だと思います。
<おわりに>
モーリス・ピアラが監督し、プレミア時に賛否両論が巻き起こった心理スリラーです。かなり挑戦的でなるほどという感じでした。
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