ジャンフランコ・ロージ監督『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』現代のイタリアがみえてくる
<作品情報>
<作品評価>
65点(100点満点)
オススメ度 ★★☆☆☆
<短評>
おいしい水
都市型ドキュメンタリーとして出色の出来でした。最近の『国境の夜想曲』はやや技巧にこりすぎた感があり好きではなかったですが、本作はバランスのとれた良作でした。
歴史あるローマという都市を囲む環状線、中心から離れていることもあり、人も風景も建物も寂れた雰囲気をまとっています。
日々救急活動に従事する隊員、元貴族の屋敷を管理する男、水商売に従事する女など個性豊かな人々がそこで人生を生きています。
決して裕福でもなく華やかでもない人々の暮らしから現代のイタリアが見えてきます。人物と風景をいいバランスで捉え飽きさせないです。編集のテンポもよく、アーティスティックな撮影ながらもダイナミズムを感じさせます。
イタリアの歴史と卑俗すぎる人々のありのままの会話と佇まいというアンバランスさがユーモラスでした。非常に優れたドキュメンタリー作品で金獅子賞は納得です。
吉原
ベルリンで金熊賞を受賞した「アダマン号に乗って」のと同じく特定の場所に集まる様々な人間の人生を描いている作品。
観光名所として有名な土地は決して潤った人だけが住んでいるわけではなく、ある意味ではローマの裏側を覗き込んだような作品なわけですが、ローマを訪れたことがないと興味はわかないかもしれません。90分間、本当に人々を映し出しているだけで、何か一つのテーマに集約するわけではないので結局何を描きたかったのか疑問が残ります。
しかし、ローマを訪れたことがない私が観ても決して退屈な90分ではありませんでした。画面に映し出される人々の何気ない日常の会話を自然と聞き入ってしまう、何とも不思議な魔力を感じる作品でした。
<おわりに>
イタリアの今を描いたドキュメンタリーです。興味を持てるかどうかで評価が変わってきそうです。
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