カミナリ
「これに行きます」
と娘が決定事項を口にする。
娘が手にしていたのは、ハウジングセンターの広告だった。
『出張ワンワン動物園・お散歩体験』と書かれている広告を眺め、僕は小さく頷いた。
娘は、動物が好きだ。
眺める分には。
リードがピンっと張るぐらいの距離感を保てる関係性を築けるのなら、将来的に家族としてペットを迎え入れることも可能だろう。
リードが緩む瞬間、主人公のボディブローで身体が「く」の字に曲がる雑魚キャラぐらい、娘の腰は引ける。
「前世、エビ?」
と妻がボソリと言うので、散歩が終わるころには、それはそれは、もう救いようがないほど、僕は小エビ娘をさらに愛していた。
ハウジングセンターに出かけ、娘の前世が小エビだということ以外にも
わかったことがある。
「お菓子食べてく?」
「ジュース飲んでく?」
「おもちゃあるよ? ゲームやっていかない?」
「ガチャガチャもあるけど、どう? 上がっていかない?」
ハウジングセンター
誘惑がパネェ。。。
そして、うちの子、、、
息子&娘「うん。やる(靴脱ぐ)」
誘惑に弱えぇぇぇ・・・・・・。
彼らの足取りはまるで、
初回プレイでイージートラップに堂々と引っかかる潔い無課金プレイヤー感
に、溢れていた。
ちゃんと防犯の絵本読み、
「お菓子食べてく?」
「ジュース飲んでく?」
「おもちゃあるよ? ゲームやっていかない?」
「ガチャガチャもあるけど、どう? 上がっていかない?」
と言われても、
ついて行ってはダメ
と話した記憶は、どうやら僕の勘違いのようだ。
僕の個人情報を切り売りし、娘と息子は着実にお菓子とジュースとおもちゃの数を増やしていく。
すると、
「これ、何?」
と、ジュースとお菓子の間に一枚ずつ挟まっていたビンゴカードを差し出した。
よくよくパンフレットを見ると、一定の条件を満たすとビンゴカードがもらえ、ハウジングセンター主催のビンゴゲームに参加できるとか。
商品の数は9つ。ハンディーの掃除機に、家電に、すみっこのおもちゃと悪くないラインナップ。
開始時間まで、約15分。
「やろうか」
と言う妻の一声で参加決定。
思えば、
「ビッビッ、ビンゴッ!!」
と挙手して立ち上がる、僅かに興奮した人を隣で見続けて、はや何年経つだろう。
今までに、どれだけのビンゴを経験した?
数回、は嘘だろう。
少なくとも(おそらくだが)人生で三十回はビンゴをしてきた。
幼い記憶を辿ると、それは小学生の子ども会ぐらいから僕のビンゴヒストリーは始まった。
・・・・・・。
そーいえば、オメェ、一回も優勝したことねぇーなっ!!
あっ、僕の中のカミナリ(たくみくん)出ちゃった。
と言うか、そもそも
ビンゴって何なの?
運なの?
じゃあ、運の良さって何なの?
と、5分前となり一人悶々としながら、いざ、決戦の場ビンゴ会場に向かう。
すると・・・。
「えっ、うそ・・・」
思わず、妻が言葉を飲んだ。
厳しい条件をクリアし、
ビンゴカードを手に入れた、
猛者ども(平均年齢5歳とその保護者)
計、、、
8組!!!
結果
1位:優勝・息子&妻ペアー
7位:入賞・娘&パパペアー
・・・・・・全員景品もらえました。
・・・・・・。
そーいえば、オメェそれでも、下から二番目の成績だなっ!!
帰りの娘の冷ややかな、どこか不満そうな視線。
僕は忘れない。。。