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成功企業のブランディング事例 Vol.10 「UNIQLO vs. GU」

成功企業のブランディング事例シリーズのVol.10へようこそ。
(Vol.9を見逃した方は、こちらからお読みください!)

本シリーズでは、様々な企業をピックアップし、その企業のブランディング手法や、それによって得られた効果についてご紹介します。

ニューヨークでサービスをローンチし、一年で約55,000ユーザーを獲得したZeBrandが、ブランディング初心者にもわかりやすい解説を目指します。グローバルで展開するブランディングサービスで提案している3つのステージに基づいて、体系的に企業を分析し紹介していきます。このシリーズを読みながら、ブランディング知識を蓄えていきましょう。

ブランディングに興味はあるものの、
・ブランディングが実際どんなメリットを企業にもたらすのか知りたい方
・ブランディング知識を蓄積したい方
に役立ちます。

ブランディングの概要に関しては、こちらの記事をご参照ください。

Define: ブランドの核となる方向性を整理し、定義する
・ブランドDNA
Design: ビジュアルアイデンティティをデザインする
・ブランドストラテジー
・ビジュアルアイデンティティ
Deliver: ブランドを世界中に届ける
・ブランドアセット

Refine: 世界や顧客の変化に合わせてブランドを見直す(Define, Design, Deliverを繰り返す)
・ブランドコーチセッション
・ブランドフィードバック
・ブランドスコア

ZeBrandによって定められたブランディングのステージの概略
Define、Design、Deliverのサイクルでブランディングを進めます

ユニクロとは

1984年、現社長の柳井氏が広島市に「ユニーク・クロージング・ウェアハウス(UNIQUE CLOTHING WAREHOUSE)」を開始したことから始まりました。日本のアパレル業界においてはトップシェアを誇り、テクノロジーを駆使した高品質なアイテムを低価格で提供しています。代表商品には、ヒートテックやエアリズム、フリースなどが挙げられ、人々の生活をより豊かに、より快適にする究極の普段着を作ることを目指しています。

GUとは

2006年に設立された日本のカジュアルブランドで、ベーシックなアイテムを中心に展開し、株式会社しまむらが運営する「ファッションセンターしまむら」と並んで低価格ファストファッションブランドの代表格とされています。GUと言う名前には、ファッションはもっと『自由』であると言うメッセージが込められているそうです。低価格でありながら高品質なトレンドを押さえた商品が作られており、若い世代や主婦層から高く支持されています。

ユニクロとGUはファーストリテイリングから生まれた姉妹ブランド

両者のブランドに共通することは、どちらもファーストリテイリングの事業であることです。同じ業界にありながらそれぞれが、独立したブランドとして、アパレル業界で高い人気を誇っています。結果として、ファーストリテイリングは、アパレル業界世界売上ランキングで3位、日本国内では1位の地位を誇っています。

ユニクロとGUのDefine 〜ブランドの核となる方向性を整理し、定義する〜

ユニクロ 日常の服

ユニクロは「LifeWear」という言葉を掲げています。LifeWearとは、あらゆる人の生活を豊かにするための服という意味で、生活ニーズを捉えて、細部へのこだわりを持ちながらもシンプルで、進化し続ける「究極の普段着」と言えます。ユニクロは世界中のあらゆる人に、服を着る喜びを提供するために、LifeWearという新しいカテゴリーを確立させようとしています。だからこそ販売される製品は、トレンドを追うというよりは、定番の商品を毎年少しずつ改良していき、スタンダードな商品をアップデートしていくのが特徴と言えます。


GU 自由にトレンドの服を

では、GUにはどのようなコンセプトがあるのでしょうか。ブランドメッセージは「YOUR FREEDOM 自分を新しくする自由を。」というもので、ブランド名にあるように「自由」という言葉がキーワードになっています。全社員が「自由」「スピード」「変化」を大切に考え、「あらゆる人が気楽に楽しめるファッション」という新しい常識を作ることを目指しているそうです。

ユニクロではあえて、流行を追いかけず、流行には左右されないベーシックなファッションを打ち出しているのに対し、GUはトレンドを追求し、流行に乗ったファッションを提案することや、ユニクロでは機能性が重視されるのに対し、GUは機能性よりも品質の維持に注力しているというように、得意としている部分も異なります。このような違いが、ターゲット層を分散し、顧客の奪い合いにならないようになっているのです。

両ブランドのコンセプトのまとめ

ユニクロとGUのDesign 〜ビジュアルアイデンティティをデザインする〜

 ユニクロのロゴの変遷

ユニクロのロゴは出店当初と、現在のものでは全く違ったものとなっています。面白いことに、ロゴのデザインが変わったタイミングと、ユニクロの人気が爆発した時期が同時になっています。これは、ロゴデザインとともにブランド全体のイメージも一新したことも影響しているのですが、ロゴの変遷が企業やその人気にどのように影響を与えたのか、具体的に見ていきましょう。

実はユニクロ初期のロゴは、色味が現在のものより少々えんじがかった色をしており、フォントも現在のものよりも丸みのあるものでした。色に関しては、元々現在と同じ赤と白を使用していたにもかかわらず、なぜかえんじ色に変わっていたそうです。ブランドアセットの一部であるロゴにきちんと意識を向けなければ、ブランドの管理は、一層難しくなります。当時は、ファミリー層を主たるターゲットとし、ベッドタウンの国道沿いに店舗数を拡大しており、現在のユニクロの洗練されたイメージとは異なるものでした。現在ではなかなか聞くことはありませんが、一昔前には「ユニバレ」と言った言葉があり、ユニクロを着ていることがばれてしまうのは恥ずかしいと思われる時期もありました。

そのような影響もあり、ユニクロが重大な経営不振に陥ったことをきっかけに、ユニクロは、企業イメージの刷新を図るべく、アートディレクターの佐藤可士和氏に協力をしてもらいながら、ブランドイメージの刷新、2006年にロゴの変更を行いました。

新しいロゴは、初代のロゴを改変する形で生まれ変わったのですが、色が明るくなるとともに、美しく並んだ文字のレイアウトが、洗練されたイメージを呼び起こします。カタカナと英語の両表記がありますが、どちらも赤と白のシンプルなロゴでありながら、頭の片隅に残る印象的なデザインとなっています。 

誠文堂新光社『究極のロゴデザイン』中面

ユニクロを意識したGUのロゴ

では、GUのロゴはどのような形をしているのでしょうか。ふと思い返すと、ユニクロと同じようなボックスの形をしていることを想起できるのではないでしょうか。GUも、2013年にGUが「g.u.」から、ブランド名を改変する際に、佐藤可士和氏によるデザインのリニューアルがされ、ユニクロとGUの両ブランドが対になるデザインへと変更されたのです。正方形の中に文字を配置することは同じものの、ユニクロのメインカラーである赤と対になるように、GUのロゴでは青を配色しています。"優等生のユニクロを兄に持つ、おしゃれでちょっとやんちゃな妹"というイメージを表現するため、文字色には明るい黄色が採用されたそうです。実際にこのロゴ変更を機に、GUは急成長を遂げていきました。

商品の違い

- ヒートテック、ウルトラライトダウン
ユニクロは現在は、老若男女問わず、すべての人をターゲットにしています。その為、デザインは若者に流行っている、明るくカラーのはっきりしたものというよりは、日常的に着れるレギュラーカラーのものが多いです。また、製品としても、軽いのに暖かいウルトラライトダウンや毎日スーツを着るサラリーマンやその奥さんの負担を軽減させるノンアイロンのビジネスシャツ、夏場も冬場も、もはや人々の生活に欠かせなくなったエアリズムやヒートテックのインナー類など機能性の高い商品が沢山見受けられます。

- 990円ズボン、ガウチョパンツ
一方で、10代や20代といった若者をターゲットとするGUでは、デザイン性の高いアイテムが多く販売されており、トレンドを意識したアイテムに挑戦しています。2週間という短い期間で新規商品を追加していくGUのその姿勢から、トレンドへの高い意識を持っていることが分かるでしょう。
初めの頃は、低価格戦略を軸にした路線が採られており、破格の値段で衝撃を与えた「990円ジーンズ」は業界をざわつかせました。GUは、商品全体のプライシングの大胆さが顧客にウケて、売り上げを伸ばしています。低価格戦略に力を入れるために、GUでは、先に販売価格を決めて、予算内に収まる生産方法を考えているそうです。結果的に、この990円ジーンズは1年間で100万本の売り上げを達成し、社会現象となりました。

また、2015年の4月から放映されたCMが起爆剤となり、990円ジーンズを上回る売り上げスピードで売れた、ガウチョパンツという商品もあります。ガウチョパンツとは、カウボーイのパンツに着想を得た、裾野が広くゆったりしたアイテムです。スカート見えするので、履くだけでフェミニンでエレガントに見える一方パンツだから楽でもあり、オフィスにも来て行ってもいい感じがするといったイメージがあります。また、主婦もおしゃれを楽しみながら、子どもを載せて自転車がこげるので、便利、といった顧客の期待にこたえる商品でターゲット層を拡大させています。

ユニクロとGUのDeliver 〜ブランドを世界中に届ける〜

ユニクロの店舗づくり

ユニクロはユーザーエクスペリエンスを大事にしています。例えば、出店店舗に着目すると、UNIQLO PARKやUT POP OUTといった、ただ購入することだけを目的としない店舗も作っていることがわかります。

UNIQLO PARKとは、横浜ベイサイドにある、ユニクロが建築から手がけているユニクロとGUの併設店舗になります。ただ商品を売る店舗ではなく、なんとスロープ状の屋上面が、すべり台やジャングルジム、ボルダリングやクライミング設備を備えた公園になっています。「PLAY」というグランドコンセプトのもと、人々の日常生活に寄り添うためのユニクロのブランドコンセプト“LifeWear”の体現に注力するとともに、買い物をするだけでなく遊びに来る感覚で来店してもらいたいとの想いを表しています。

UNIQLO PARK

UT POP OUTもUNIQLO PARKと同様に佐藤可士和氏が出店を手がけた、斬新で魅力的な店舗です。原宿にリアルとバーチャルを融合した最新型の近未来的な店舗があるのをご存知の方も多いのではないでしょうか。この店舗には、ユニクロの人気シリーズ、「UT」(さまざまなアーティストやブランドとコラボして作成されるTシャツ)がたくさん並んでいます。ここでは、UTの世界観を体感できるだけでなく、着こなし発見アプリ「StyleHint」と連動した、世界初の売り場「StyleHint原宿」があり、壁一面に240台のディスプレイが並んでいます。ユーザーから投稿された最新の着こなしを自由に検索、閲覧することができるのです。服を買うだけにとどまらない、ワクワクする空間となっています。

UT POP OUT

また、ユーザーエクスペリエンスを作りあげるのは、実際の店舗の場所だけではなく、スタッフのイメージの力も大きいです。ユニクロは接客について細かく設計されたプロセスを確立していて、海外も含め、すべての店舗で「おもてなし」を習得するための、一貫したトレーニングを用意しており、以下のような細かい部分にまで指導がされているそうです。

・買い物後、袋詰めをし、テープで封をする際に、テープの端に折り目を付けてはがしやすいようにしている
・お会計をカードで行い署名する際に、ペンを相手側の持ちやすい方向に向けて渡す
・クレジットカード決済するときに顧客名をチェックし、「○○さま、お買い物ありがとうございました」と声をかける

このようなホスピタリティサービスの徹底で、ブランドを好きになる顧客を増やしているのです。

GUの広報戦略

GUは、2012年10月頃までは、郊外店舗に向けてチラシを配布していたそうですが、ターゲットである10代、20代の若年層のスマートフォン普及にあわせてインターネットを活用した集客へシフトしていきました。

GUのアプリは2012年3月に公開され、LINE公式アカウントが2012年08月21日にスタートしています。LINEなどのソーシャルメディアでは、顧客数が増加するにつれ、クーポンの配布よりも、さまざまな情報を伝えることを重視するようになりました。また同時に、ソーシャルメディアの運営だけでなく、自社メディアやアプリの拡充にも力を入れています。

GUのInstagramアカウントはフォロワーが130万人を超えています。投稿内容は、基本的に実際の商品の着こなしです。ただ、GUが商品を紹介するだけでなく、@gu_for_allといったタグづけをしている人気投稿をリポストするなど、一般のお客さんの着こなしを紹介することで、親しみやすい投稿となっています。ここでも、「誰もが自由に」服を着こなして欲しいというGUのコンセプトがあらわれているように感じます。また、従業員のアカウントに対し、「ジーユー公認スタッフインフルエンサー」という認定制度を採用することで、従業員のコーディネートスナップから、着用商品を見つけることのできる動線を設置しているのです。

Instagram @gu_for_all

まとめ

今回の記事では、ユニクロとGUを比較しながら、それぞれのブランディング戦略を見ていきました。それぞれが確立されたコンセプトのもと、さまざまな方法でブランドのアピールをしていることがわかったのではないでしょうか。また、ユニクロの後にできたGUがいかにして差別化してきたかを知ることは、競合他社との差別化をはかる際のヒントとなるのではないでしょうか。

成功企業のブランディング事例シリーズで多くの事例を知ることで、ブランディングに関する知識やアイディアを蓄えることにつながります。本シリーズの他記事に興味がある方は、こちらからご覧ください。