秋ドラマ 若草物語 最終回 ※辛口めです
日テレ GP帯 秋ドラマ
『若草物語 恋する姉妹と恋せぬ私』
主演/堀田真由 仁村紗和 畑芽育 長濱ねる
初回から4話に渡って感想書いてきたものの、熱量も失せて放置して視聴してきました。(自分で整理しておきたいので最後に参照までに以前の感想リンク貼っておきます)
最終回はある意味衝撃的でした。相変わらず辛辣な事を書いてしまいそうなので「めっちゃ楽しかった、このドラマ大好き〜」な方はお読みにならない方が良いかと思います。自衛なさって下さい、お願いします。
最終回を見て納得しました。1クールかけてこの『若草物語』の脚本家のマスターベーションを見せられてきたのだと思うとなんとも言えない気持ちです。それにしては長かった!
脚本家による脚本家の物語は徹底して主人公である涼を甘やかし続け終わりを迎えました。それというのも未熟で可愛げの無い我儘な涼こそが、このドラマの脚本家の分身に他ならなかったからです。
もともと不快なヒロインである涼の周りには、気持ちの悪い人間ばかりが配置されてきました。信者のように涼を持ち上げる共依存の三女、自己愛の激しい勘違いオトコの律、涼と律の関係と脚本家道を進めるだけの駒であった大平かなえ他。
今期のドラマ『スノードロップの初恋』がちょっとしたエピソードで各登場人物の愛らしさを見事に描いていた作品であるのと真逆に、不快で気持ちの悪い人間ばかりを見せて来た本作。
気持ちの悪い人間をリアルに素晴らしく描いたなら評価しますがそうでも無い。キャラ自体はブレブレで言う事なす事コロコロ変わる、お世辞にもよく描けていたとは言えないし、涼に我が道を行かせる為に都合の良いエピソードで動かされただけの薄っぺらいイエスマン達が不快感を呼んだだけの気持ち悪さでしかありません。
最終回の幕開けで邪魔になった長女と末っ子を結婚と留学でいとも簡単に排除してしまった、これで作者お気に入りの涼をじっくり活躍させる準備が出来ました。その排除のしかたすら、長女には妹への感謝の手紙を読ませて、末っ子は別れ際にハグをして感謝と愛情を示すという周到に涼を持ち上げてのお別れです。(深夜帯のドラマより安っぽい結婚式には驚きましたけど、作者お気に入りの涼の結婚式では無いのでしかたないです)
最後に涼へ、二人の絆の象徴であったペンを突っ返して律も退場となりました。
そして涼のイージーモードな脚本家道の再開です。涼を独り立ちさせるには邪魔だった大平かなえも既に前回で排除してあるので簡単であります。
いとも都合よくクッソつまんなかったスピンオフドラマをきっかけに、新たな仕事のチャンスがやって来ました。
このドラマはもともとお金が入る宛もないのに長女次女が仕事を辞めたり、消費者金融から借金したり、済観念がガバガバな設定ですので、その間の涼の生活費には言及しません。
そんな緩い時間の流れる中、涼の元信者である三女が脚本のネタを持ってやって来ます。これ迄も涼は自分の実体験を書くことでしか脚本を完成させていないので、ご都合主義展開であろうともしょうがないのです。
譲れない理想をぶち壊す裏切り行為を働いた三女と涼はあっさり和解して、信者に戻った妹は再び涼をなんの根拠も無く持ち上げて帰ってゆきます。そして涼は容易く脚本を書き上げます。
涼の書く物語のタイトルが「若草物語」なのも読めてしまって興ざめでありますが、この物語にそんな期待をしてはいけないのです。視聴者に課せられた役割は、三女と同じように涼の才能を無心に信じて彼女の選択した人生を称賛する事だけですから。
このドラマでは涼以外の姉妹ですら、脚本家が自己投影した涼を、自分が心地よい様に動かす為の駒に過ぎません。でも一応最終回なので放置する訳にもいかない。取り敢えず呼び戻しましょう。
そういう訳で都合よくあっちゅーまに末っ子は留学を終えて帰ってきます。シスターフッドコメディと謳っているので四姉妹を仲良く、もとい都合よく物語を終わらせなければいけませんから、その手始めです。帰り道に車内で涼のドラマ「若草物語」の広告を末っ子に気づかせて涼を持ち上げる事は忘れません。
元の鞘に戻った四姉妹揃って仲良く涼のドラマを見始めます。これも想像出来るお約束展開です。
そしてまたしても涼の実体験を描いただけのクッソつまんないドラマを姉妹揃って大絶賛の大団円です。作中の「若草物語」はなんとも言えない痛いドラマでしたが、この脚本家はここまでこのドラマを面白く書く事に成功しているとは言い難いので、その創作物である涼だって面白い話が書ける訳も無くしょうがないのです。何度目のしょうがないになるのかなあ、疲れてきました。
一応、「恋する姉妹と恋せぬ私」の回収をする為に、姉妹以上に手軽な駒である男性陣、長女の元カレと末っ子と関係した沼男をサラリと処理して、涼と律の最終決戦です。
涼は律との友情によって自分がやってこれた事を打ち明け、ペンを差し出し再び友達になって欲しいと懇願します。妙な話ではあります、もともと律にとって涼は友情の対象であったことなど無く、いつか振り向いてくれるかもという下心で付き合ってきただけなんですが、それは涼が知らなくていい事なのでスルーされてしまいます。
涼のドラマを見た事以外に心境の変化を促される特筆すべきエピソードも無いのですが最終回ですから、律も気持ちよく涼の提案を受け入れて二人は友達になります。寒い雑談をさも仲良さそうにする二人はお世辞にも微笑ましいとは言えず、不協和音を感じさせますが最終回だから、もうちょっとで終わるからしょうがないのです。涼が良ければいいんですよこの物語は。
最後に家族ぐるみで皆が仲良く我が家に集まってお終いです。その家族団欒の中に、涼にとってどうでもいい、もしくは内心覚えのよくない三女のオトコはいません。子供は連れてきているのにおかしな話ですが涼が嫌な事はとことんしないこの物語に不必要ですからこれでいいのです。長女の旦那も勿論いないですし。その代わりに距離感の気持ち悪い律はきちんと配置されています。涼に必要ですから。
沼男がお金を受け取っていたのは彼が本当にヒモ男だったからなのか、スマホの待受に弟の写真を使って振った女にヘラヘラ見せびらかすただの無邪気な親バカ風モンペ男だったのか。身内から窃盗働いて自己弁護の手紙を残し消えた恋愛体質の毒親はどうなったのか、そこらへんは「四姉妹」外の事なので放置して置くクセに、大平かなえと黒崎潤に涼の脚本を称賛させる事だけは忘れない、ある意味ご立派です。
脚本家に阿呆みたいに贔屓され倒した涼の物語は、彼女が最も幸せと感じるメンバーに囲まれて終わりました。なんの共感も得られず終わったこの物語、オルコット先生が見る事が出来無いのを幸いといたしましょう。四姉妹と、更にそれぞれの恋するお相手までを描くのは週1回の1時間枠では、かなり難しかったと思われます。
涼がどうしてここまで恋愛を拒んだのか、ネットニュースのライターさんはアセクシュアルの可能性を示唆していましたが、私的には精神的に幼稚で臆病な性質から来る男性という別の生き物への根底にある恐怖と、意固地な性格によるものだと感じました。恋愛の先にある性行為とか含めて自分が変わる事、相手を信頼して心を預ける事とか怖かったんじゃないかなあ。
どこがシスターフッドコメディだったのかは未だに謎です。破天荒ではあるけれど堅苦しくユーモア皆無な涼にも姉妹にもコメディ要素は見つかりませんでした。
以前にも書きましたが、このドラマで唯一心底共感できたのが、いつぞや大平かなえのファンのマッチングアプリ女性が語った「週に1度の大好きなドラマ、その1時間を楽しみに生きている」という旨のセリフだけでした。ドラマ大好きな私はステキなドラマだと、本当にその曜日が楽しみでウキウキワクワクします。でも大変残念な事に最後まで私にとってこの『若草物語』はそういうドラマにはなりませんでした。
前クールの脚本がかなりの傑作だっただけに(『降り積もれ、孤独な死よ』)悪い意味で脚本の拙さが悪目立ちする印象のドラマとなりました。
涼のドラマ版「若草物語」を皆が見て登場人物に絶賛するさせるところなんて完全に自分賛歌ですよ、よく恥ずかしげもなく書けたもんだ。つきあわされる視聴者はたまったもんじゃ無いです、本当に。
この脚本家は恋愛至上主義を暗に非難しているけれど、裏を返すと恋愛より友情のが尊いと言っている友情至上主義でどっちもどっちですよ。たった一例の少数派に肩入れしただけで、決して個人それぞれ自由な生き方を受け入れた話では無いです。
対象相手が異性であれ同性であれ、(禁忌とされているけど)例えば妹など血縁であったとしても、広い意味で人を愛する恋愛感情は友情より下も上も無いものだと私は考えるので、このドラマの偏った思想は不快です。ラストの恋愛も結婚もしない人生を貫いたと自己満でスッキリしている涼に苛立ちを覚えました。律だっていつまでも独身でいないかもしれないし、結婚したらこんな歪な友情関係の異性がいるって家庭不和の元になりかねませんよ。私なら嫌です。
この作品の不出来さは主に脚本家が原因ではありますが(演者さんは頑張っていた)この脚本を面白いドラマになると企画を通したスタッフにも責任ありますから猛省して下さい。万人受けする話は無理でも、ここまで視聴者を選ぶヒロインにしなくても、四姉妹のシスターフッドコメディは成立させられた筈です。脚本家のサクセスストーリーとしてなら、どうしようもなくぬるすぎます。
1クールに渡り茶番につきあわされてきましたが、畑芽育ちゃんの顔が可愛かったので諦めます。9ボーダーでも無駄遣いされてしまったけれども、次は作品と役柄に恵まれます様に。
少年忍者の深田くんもGP帯大抜擢で頑張りました。他の男性陣がキモ過ぎたから(長女の元カレとか律とか)モンペなりに爽やかに見えたわ。でもメイとのワンナイトも必要ないエピソードだったとは思います。沼田、弟しか好きじゃ無いし、性欲バリバリ男でも無いから二度とメイを誘わないし、不自然でしたよ。でもこの程度のキャラのブレはこの物語は山程あってきりがないのでもう突っ込みません。
畑芽育ちゃんが更に売れて主演作『パティスリーMON』がDVD&Blu-ray化されます様に。パティモンは毎週水曜日が楽しみでしかたがないステキなドラマでございました。