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『伴走者』が教えてくれる事

人は世界を見ている。
誰もがそれぞれの方法で世界を認識している。
見え方が同じである必要はない。

浅生鴨(あそう・かも)
1971年、兵庫県生まれ。作家、広告プランナー。
NHK職員時代の2009年に開設した広報局ツイッター「@NHK_PR」が、公式アカウントらしからぬ「ユルい」ツイートで人気を呼び、中の人1号として大きな話題になる。
2013年に「群像」で発表した初の短編小説「エビくん」は注目を集め、日本文藝家協会編『文学2014』に収録された。
2014年にNHKを退職し、現在は執筆活動を中心に広告やテレビ番組の企画・制作・演出などを手がけている。
著書に『中の人などいない @NHK広報のツイートはなぜユルい?』『二・二六 HUMAN LOST 人間失格』(ともに新潮文庫)、『猫たちの色メガネ』(KADOKAWA)、『どこでもない場所』(左右社)、『面白い!を生み出す妄想術 だから、僕はググらない。』(大和出版)がある。 (伴走者での紹介文より抜粋)


障害者のスポーツと聴いてどんな姿を想像するだろうか、大体の人が義足でのスポーツをイメージするか車イスのスポーツなのではないだろうか。

浅生鴨さんの本作品『伴走者』では視覚障害者に焦点をあてたフルマラソンアルペンスキーの話である。

恥ずかしながら、書いてしまうが私は視覚障害者のこのようなスピードで競うレベルが高いスポーツがあるのを全く知らなかった

何もわかっていなかった

それは視覚障害者の方に対する私の中で、必要以上に苦労をしているイメージがあって本当に何もわかっていなかった
この伴走者を読みすすめながら、健常者の私は伴走者の視点で考える

私が伴走者なら、どう考えるだろうか

そして私が行動をする、それが視覚障害者の方にとってはだいたい望まない答えなのではないかという事もわかる。

彼らにとっては目の代わりになる補助が欲しいだけであってそれ以上の事は望んでいない。

伴走者の気持ちになって視覚障害者の方の気持ちになってどちらの視点からも物事が見えて考えられた時にちょうど本を読み終える。

いつまでも手はページの続きを求めるが、物語は終わりを告げる。
広がる景色と爽快感と読了感。
しばらく唸って動けない状態だった。

伴走者の登場人物も何もわかっていない
私も何もわかっていない
だから凄く感情移入をする

だんだんと視覚障害者の求めるもの考える事。
はじめて本当に理解できた時が本を読み終える時。

伴走者の役割とは何か
本のテーマはそこにある

健常者の私が捉える世界。
健常者の他の人が捉える世界。
視覚障害者が捉える世界。

世界の捉え方は本当に1つだろうか。

世界の共有に必要なコミュニケーションとは何か。
みんなが違う世界を持っているという事実。

人は世界を見ている。
誰もがそれぞれの方法で世界を認識している。
見え方が同じである必要はない。
伴走者 298頁より

このnoteの冒頭に書いたメッセージが伴走者で一番私が刺さった文章で本作品のテーマになるのではと感じた。

目で見えない事
視覚に頼らない感覚
視覚から得る情報は8割や9割などと見かけるが、基になっている文献の記載は、ほとんどない。

しかしながら、視覚によって得た情報量が多いという事には全く異論がない。

それでも視覚について深掘りをして考え続けると、本来の思考をして情報を整理して『考える』という事とは相反する事の多いような気がする。

目に見えている世界を捉えた時に反射的に行動するのではなくて、一度考えてみる事も必要だと思う。
視覚は反射を起こしやすい

少なくとも伴走者の文字を追い、脳裏に映る映像は視覚的に捉えた映像ではない。
この映像の美しさを人に伝えたい


ところでこの伴走者についてBS-TBS開局20周年記念ドラマとして、3月15日(日)夜7時にBS-TBSで放送されます。

伴走者の小説がどのようにドラマになるのかも注目して見てみたいと思う。

■過去に書いた浅生鴨さんの著書レビュー

■浅生鴨さんのnote勉強会のレポート


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石澤大輔
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