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好きなシリーズもの映画レビューPart5 トイ・ストーリーシリーズ(1995〜2019)

どうも。
シリーズもの好きのoilです。

今回は「トイ・ストーリー」シリーズをまとめてレビューします。

自分の持っているおもちゃが、見えないところで動いている。

誰もがそんな想像を小さい頃には絶対すると思う…というか、僕はしてました。

そんな子供の夢を具現化するのが
ピクサー・アニメーション・スタジオという会社。

CGを用いた圧倒的な表現力で
虫やモンスターの世界、海の中や宇宙まで描き出す
世界を代表するアニメーション・スタジオの
最初の長編作品が
この「トイ・ストーリー」。

ある意味で映画業界の力関係を変えたとも言えるこのシリーズを、年代順にレビューしていきます。


トイ・ストーリー
(1995)

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評価:90点

第1作で大きなキーワードとなるのが
「おもちゃのルール」
それは、本当は話したり自由に行動することができるのに、それを人間に知られてはいけないというもの。

この縛りがあることで

物語に緊張感が生まれ、子供達が持つ夢の世界観は守られる。更に、観客は自分たちの知らない世界の裏側を覗いているような気分になれる。
一粒で3度美味しい素晴らしい設定
である。



また、登場するおもちゃたちの
キャラクターが漏れなく愛らしいのも
「トイ・ストーリー」の魅力の一つ。

リーダーシップはあるもののお調子者で時にゲスい一面も見せる
ウッディは、友情に熱いカッコ良さとちょっとダメなところのギャップが魅力的。

今後のシリーズで徐々に成長していくのにも、最初のヘタレっぷりが活きていると言える。



終始自信満々な振る舞いのバズも、実際は飛んでいなくても
目を瞑っているため気づかない、という抜けたところがかわいい。
彼がウッディと信頼を築き上げていく様が
バディムービーさながら。


ポテトヘッドとハムの口悪コンビ、臆病なレックスや大人なスリンキー、
そして最後までウッディを信頼する
ボー・ピープと、脇役たちも
それぞれいい味を出している。

ポテトヘッドとスリンキーは
この映画の公開前から
実際に販売されていたおもちゃのため
許可を取るのに苦労したそうだが、彼らのデザインの”いなたさ”がまた良い。

また、
CGの技術に目が行きがちだが、
毎度のことながらピクサー作品は
脚本の完成度がとにかく高い
数多くのエッセンスを
わずか81分の上演時間の中に
慌ただしさやグダりを生むことなく
はめ込んだ脚本のレベルの高さが、
この作品の最たる強み。
CG技術が向上した今でも
この作品が輝いているのは、
話がシンプルに面白いからに他ならない。

もっとも、スタッフロールを見ると
この作品のレベルの高さにも納得できる。

原案・監督を務めた
ジョン・ラセターは2019年に
セクハラ行為で更迭されてしまったが、
映画作りという観点から見れば
紛れもなく天才だし、脚本には後に「アベンジャーズ」の
監督・脚本を担当したジョン・ウェドン、「ファインディング・ニモ」「ウォーリー」の
監督・脚本を務めた後
「ストレンジャー・シングス」で実写作品の監督も行ったアンドリュー・スタントンも
名を連ねており、後に映画界を背負って立つ
人材が集結していたことが伺える。



笑って泣けるエンタメ性抜群の
この作品は、優秀なスタッフの手により
大小の差こそあれど
相当ねじ曲がっている人以外は誰もが楽しめる作品になっているので、
観て損はない作品だと思う。


トイ・ストーリー2(1999)

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評価:87点

前作から4年ぶりとなる続編。
この頃には小学校高学年になり思春期に足を踏み入れていた僕は「ディズニーなんて観れねえぜ」というちょっと早めの中二感を炸裂させ、この作品を劇場で観ることはスルーした。
今、当時の僕が目の前にいたら助走つけてぶん殴りたい気持ちである。

本作では、”おもちゃの寿命”という前作以上に切り込んだテーマが設定されている。
子供に飽きられる、パーツが壊れる、なくなる…おもちゃも多かれ少なかれ
寿命を迎えるものだ。
ペンギン人形のウィージーや、今作以降レギュラーキャラとなるカウガールのジェシーはその象徴である。

ウィージーは物理的に壊れてしまい声(音?)が出せず、ジェシーは子供の成長により飽きられてしまい、おもちゃとしての価値を失う。

そして、それはウッディやバズたちにとってもいずれかは訪れてしまうこと。
その事実に直面したとき、おもちゃにとっての”幸せ”はなんなのかウッディは葛藤する

前作より大人向けに設定された本作のテーマが観客の年齢層上昇に合わせたものかは定かではないが、「3」に向けた伏線としても機能した、極めて優れたテーマだと言える。

前作はアンディの隣人でおもちゃをメチャクチャに扱う少年、シドがヴィランだったが、今作ではおもちゃであるプロスペクターがヴィランの役割を担う。
最初は好々爺然と振る舞うが、ウッディが再びアンディの元へ戻ることを決意した後半から冷酷な本性を見せ始める。

ただ、プロスペクターも考えてみればかわいそうなキャラクターである。
そもそも売れ残りのおもちゃという設定のため、アンディやジェシーとは違い今まで子供に愛されたことが一度もない。
ウッディたちが経験した幸せな時間を一度も味わったことがないと考えると、ああいう偏った考え方を持ってしまうのも自然なことだし、世の中にはきっと売れ残るおもちゃの方が多いのだから、おもちゃの世界の中ではひょっとすると彼の考え方が多数派なのかもしれない。

少なくとも、続編で登場するピンクの残酷グマよりは行動に一貫性もあり、同情の余地があるキャラクター。
最後はわずかに救いが見えるフィナーレを迎える彼が、人間の優しさを知れることを願ってやまない。

前作ではバスに対しておもちゃの意義や持ち主と一緒にいることの大切さを説いたウッディだが、今作ではその心に迷いが生じる。
しかし、その心理状態になっても不自然でないよう脚本はかなり慎重に描かれている。

ウッディにとって、おもちゃの仲間たちはアンディと同じぐらい大事な存在。
トラウマを背負うジェシーや永遠に仲間と一緒にいることを願うプロスペクターの今後が自分の行動一つで決まると思えば、仁義に溢れる彼の心が揺れるのには大いに納得できる。

そこで物語を引っ張っていくのが我らがバズ・ライトイヤー。
前作でウッディに大切なことを教わったバズが、今作ではウッディに大切なことを思い出させる役割を担う。

また、今作にはニュー・バズという二人目のバズも登場。
以前のバズと同じくおもちゃであるという自覚がない彼が、この作品のコメディ・リリーフを一手に引き受けている。
宿敵ザークと彼の「スター・ウォーズ」パロディのシーンは爆笑もの
つまるところ、2では前作以上にバズ大活躍となるのだ。

もちろん、ハム、スリンキー、ポテトヘッド、ハムにもしっかりキャラクターに基づいた見せ場が用意されている。

そして終盤のシークエンスは空港という場所の設定が非常にうまい。
空港の荷物検査場の中って「ダイ・ハード2」でしか見たことなかったけど、おもちゃのサイズから見たらあんなに映える舞台になるんですね。
(まあ多少の脚色はあるだろうけど)

全体的にかなり優れた続編であるが、やはり0からおもちゃの世界を構築した第1作のインパクトを超えるほどではない、というのが正直な感想。

ただ、結果的に言うとこの作品で設けたテーマの延長線上に「3」という傑作が生まれることになるので、3部作の2作目としてこの作品が持つ役割は大きい


トイ・ストーリー3(2010)

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評価:97点

前作から10年と大きなブランクを挟んだが、紛れもなくシリーズ最高傑作。人生で観た映画の中でもかなり上位に入るお気に入りの作品である。

「アベンジャーズ/エンドゲーム」しかり「アラジン」しかり「バック・トゥ・ザ・フューチャー」しかり…やっぱエンタメの基本はしっかり笑えて泣けること。で、一人で観ても誰かもと観ても満足感たっぷりで映画館を出ることができる、そういう作品こそ傑作なんだと思う。
「トイ・ストーリー3」はまさしくそういう作品。

ホロっとさせる導入に中盤はドキドキハラハラと笑いどころの連続、そして溜めに溜めた後半はめちゃくちゃ泣ける。
こんなに色んな感情が盛りだくさんな映画はそうそうない。

「トイ・ストーリー3」は第1作後から10年後の世界が舞台。
ウッディの持ち主であるアンディは大学への入学を控え、昔のようにおもちゃを手に取ることはなくなっていた。
持ち主である子供が大きくなりおもちゃから卒業するとき、おもちゃたちはどういう決断を下すのか。
そのテーマを先延ばしにすることなく真っ向から向き合ったのが本作だ。

本編はド派手なアクションシーンスタート。
実はアンディがウッディたちで遊んでいるシーンなのだが、スケール感ある映像で観客を一気に物語に引き込む。
このシーケンスはわずか10分程度だが、その間に各キャラクターにしっかり見せ場が用意されており、観客に過去作品をしっかり思い出させる。
また「3」がシリーズ初見という人も、このシーンでレギュラーキャラをしっかり把握できるようになっている。

その後、このシーンがアンディの遊びの一環であるというネタバラシとなる演出。ビデオカメラ視点の映像と名曲「君はともだち」のコンボで早くも観客の涙腺を揺さぶってくる

サニーサイド保育園を脱出する際のそれぞれの能力を活かした連携プレーはもう「ミッション・インポッシブル」さながら。
スライドしてきた鍵を足で止めるジェシー超カッコ良い。

今回コメディ要素を数多く担ったMr.ポテトヘッドと、キーパーソンとなったMrs.ポテトヘッド夫妻は影のMVPだし、別行動が多いウッディに代わりリーダーの役割を果たすバズは今回限定のスペイン語モードも披露し、準主役として十分過ぎる活躍を見せる。

後にウッディ達を貰い受けるボニーとの出会いや今作のヴィランである
ロッツォの過去、敵役なのに憎めないケンのコミカルなシーンまで、笑いと涙の応酬を自然に一本化した脚本は匠の技と言っていいだろう。

また、終盤でウッディとバズ、仲間達が焼却炉の燃え盛る火を前に一度は死を覚悟し、手を取り合うシーンはかなり衝撃的

従来のシリーズよりは大人の目を意識しているとはいえ、"死"を受け入れるような描写がディズニー作品に出てくることは非常に珍しい

しかし、この無情とも思える展開を主人公達が受け入れた時こそがトイ・ストーリーという作品が子供向けから脱却した瞬間であり、最高にビターなハッピーエンドへと繋がっていく分岐点なのかもしれない。

話は変わるが、ヴィランのロッツォは前作のプログスペクターとは違い本当に救いようがないやつである。
命を救ってくれたウッディ達を見捨てるのは映画史上でも稀に見る鬼畜っぷり。
ディズニーランドで彼のグッズを身に着けている女子高生とかよく見るけど絶対映画観てねえだろと思う

陳腐な表現だけど、この作品のラストシーンはマジで神
どうやったらこんな脚本思いつくんだろう。

観る前はアンディの子供が生まれてまたウッディと出会う、とかそんな結末を想像してたんだけど、やっぱりピクサーは一味も二味も違う。
僕なんかの想像よりもはるかにリアリティがあってエモーショナルな結末を用意していた。

ウッディは自ら仲間と共にボニーのところに行く道を選ぶけれども、ウッディはあくまで「大学行き」の段ボールから他のおもちゃ達のいる段ボールに移動しただけで、最終的な選択肢はアンディに任せているわけです。

けど、ウッディはアンディが自分と仲間が一緒にいる道を選ばせてくれるだろう、とわかっている。

もちろんアンディはウッディに人格があることなんて知らないけど、自分ではなくウッディのことを考えて手放すことを選ぶ。

そんなことを考えながら、ウッディの「あばよ、相棒」というセリフを聞くと、おもちゃと人間という垣根を超えた本当の絆がアンディとおもちゃの間にはあったんじゃないかなあ、と思うわけです。
アンディがボニーにおもちゃを譲る時、ひとつひとつのおもちゃを紹介するシーンはマジで何回観ても泣ける。

最後の最後、望んでいた通りアンディと最後の遊びを楽しむおもちゃ達。
人間の前だから動くことはできないのに、おもちゃ達が楽しそうに見えたのはきっと僕だけじゃないはず。

当時はこれが最終作と言われていたこともあり、シリーズは最高の形で幕を閉じたと思っていた


トイ・ストーリー4(2019)

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評価:30点

3で終われば最高のシリーズだったのに、と思わせられる4作目。

ただ、1本の映画として観れば面白いんですよ
冒頭の雨のシーンのアニメーションはクオリティ高すぎるし、その後1〜3をダイジェストにしたようなオープニングシークエンスとか最高でしたよ。
全体の展開も飽きないし。

この作品の何が辛いって、前作までで積み上げたシリーズの良さを全部消し去ったことに他ならない。

人間世界に大きな影響を与えない、という暗黙の了解があったおもちゃのルールを今回はバズ達が自ら破壊
さすがに人間が乗っている車を勝手に運転するのはマズイでしょう。
っていうか、普通に見つかるだろ。

で、3まで描いてきたものをガン無視するように仲間と決別して旅立っちゃうウッディね。
誰だお前は、と言いたくなる。
「寄生獣」の田宮玲子のお母さんとかこういう気持ちだったのか、って思いますね。
ガワは一緒なのに中身が違う違和感。
前作、焼却炉で死を前にして
手を取り合ったお前らの絆はどうした。


で、ポリコレ対策としてキャラ変させられたボー
人種差別的な目線を意識して作品を作ること自体は全然悪いことじゃないと思うけど、既存作品の人気キャラクターを歪めてまでやる必要あるか?
だったらまだ新キャラ出せやと言いたいし、ジェシーの出番を増やすとか、いくらでもやり方はあったはず。

挙句、ギャビーギャビーとかいうポッと出のキャラにボイスボックスを渡し、声を失ってしまうウッディ
いや、おもちゃのウッディを持ってる子供とか泣いちゃうよそれ。
うちにもウッディのおもちゃがあるんで、大の大人の僕も泣きそうですよ。

ギャビーギャビーが何のメタファーなのかはおおよそ想像がつくけど、それならありのままの彼女を愛してくれる人間と出会うストーリーにした方が良かったんじゃないのか。
貰い物のボイスボックスで愛されることがそんなに嬉しいことなのか?

あ、フォーキーに関してはノーコメントで。
普通に観ててイライラしたんで。笑

上記の新キャラたちの物語を描くために既存主要キャラの出番が激減
バズはともかく、他のキャラは「いたの?」ってレベル。
ファンが求めてたのは絶対こんなのじゃなかったはず。

この物語を描くために残酷なキャラ設定を強いられたボニーも不憫
「4」のレビューではよく彼女を批判する声が見られるけど、僕には物語の都合上性格を無理にねじ曲げられたように見えてしまって、逆に可哀想に見えた。

彼女を悪く書けば書くほど彼女にウッディたちを譲ったアンディの価値まで下がってしまうこと、「1」〜「3」の否定に繋がることをスタッフは誰も指摘しなかったのだろうか?


散々悪いところばっかり書いてるけど、最初に書いたように「トイ・ストーリー」だと言うことを忘れればストーリーや展開は悪くないんですよ。

この内容をトイ・ストーリーでやるな、って言うのが一番僕の言いたいことであって。
3作を通じて一貫したテーマを描いてきた本シリーズに全く趣の異なる重いメッセージを持たせるのは作品にとってもファンにとってもあまりに酷。

そういえば、Wikipediaに"かねてから指摘されていた「人格を持つものが人間の所有物となって良いのか」というシリーズが孕んでいる倫理的な問題をクローズアップした作品"と書いてあったけど、誰が問題視してたんだろう。
いくら何でも穿って観過ぎじゃない?

まあこの作品もアメリカでは絶賛らしいので、観客の感性は人それぞれってこと。いずれにせよ僕には合わなかったですね。

アニメとしては80点、トイ・ストーリーとしてはマイナス20点ぐらいなので、点数は間をとった30点としました。

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