やっぱりスタローンが恋しくなっちゃう。「クリード 過去の逆襲」感想
悪くはないんですけどね。
というわけで、「ロッキー」シリーズのDNAを受け継ぐこの「クリード」もついに3作目。
本シリーズ、1作目・2作目ともにめちゃくちゃ面白かったので期待してたんですが。
正直、今回は前2作に比べるとイマイチでしたね。
アドニスの過去を扱う、というのはアイデアとしてはありだったんですけども。
戦う相手が歳上な上ブランクもあるっていう設定は正直頂けなかった。
やっぱ、スポーツの映画って主人公が圧倒的な強敵と戦ってなんぼだと思うんですけど。
どう考えても主人公のアドニスの方が対戦相手より強そう、っていうのは大きなマイナスポイント。
アドニスも過去の激戦で身体はボロボロ、引退して3年経ってて身体は衰えているという絶対ですけど。
対戦相手はアドニスよりどう見ても歳上だし、おまけに刑務所に入ってたからブランク18年ですからね。
そいつが、偶然と反則技が重なったとはいえ一試合で世界チャンピオンになっちゃう。
どんなトンデモ設定だよ。
最後はオッサン同士の戦い。
で、実況は「アドニスが圧倒的不利!」って連呼するんですけど。そうか?っていう。笑
アドニスの方が年齢的にも若いし、経験もある。
アドニスが当て馬と言われるのには違和感がありましたね。
聴覚障害を持って生まれたアドニスの娘もストーリーに絡んでくる…のかと思ったけど、結局投げっぱなしで終わる。
「感情の制御とコントロールを教えないと」って言ってましたけど、アドニスが一言二言そういうことを伝えて終了。
娘はあの一瞬で本当に感情の制御を学んだんだろうか。
で、これは制作側が一番言われたくないこと思うんですけど。
やっぱり、このシリーズにはスタローンは必要だなぁと。
彼がいることで、物語に深みが増すというか。
繋いできた伝統を感じることができたんですよね。
どこまでいっても、この「クリード」は「ロッキー」シリーズの系譜であることに変わりはないわけで。
どことなく「ロッキー」の呪縛から解き放たれようという意志を感じたんですけど、そりゃ無理だよっていう。
試合のシーンとか、いつテーマ曲が流れるか待っている自分がいましたからね。
というか、作中で不自然なぐらいロッキーの存在を消し過ぎですよね。
名前出したり、今も連絡を取っているぐらいの話をしても良かったのに。
ロッキーはアドニスが引退しても、アドニスの母が亡くなっても便り一つ寄越さないのか?
その辺り、すごく違和感がありました。
まあ、救いはロッキーが亡くなったという描写がなかったこと。
一応、本人の気が向いたらシリーズに復帰できるように道を残してあるということなんでしょうね。
ボクシングシーンの演出も、これまで以上に仰々しくて若干浮いていたような気が。
主演と監督を兼ねたマイケル・B・ジョーダンは日本のアニメが好きで、本作でもアニメを参考にした演出を取り入れたという話ですが。
ちょっと取り入れ方を間違っているような…笑
スローモーションとかはこれまでのシリーズでもあったのでまだわからなくはないんですけど、これも使い方がいつもと違う。
攻撃を受けた瞬間のダメージを表現するためじゃなく、攻撃のスピード感を表すために使用されている。
コンビネーションの中に通常の速度とスローのパンチが混ざっているので、なんか「マトリックス」ぽいんですよねー。伝わるかなこの違和感。
あれはSFトンデモバトルが売りだから良いんですけど、比較的リアリティのあるファイトシーンが特徴だった本シリーズにはなんだか合わないような。
あと、観客が全部消えて2人だけで戦っているシーンの演出もスベってましたね。笑
おそらく2人の頭の中ではお互いしか見えていない、私怨の戦いということを表現したかったんでしょうけど。
がらんどうのスタジアム内のリングで2人が戦っている映像は、CGの質感の雰囲気も相まってボクシングの試合会場というよりは暗黒武術会とか裏武闘殺陣とか、そういった雰囲気が…伝わるのかこの例え。笑
カットの切り替えやテンポ感、各キャラクターの描写なんかは良かったので、全体的に見るとそこまで悪い出来ではないんですが。
このシリーズは期待値が高かったので、ちょっと残念だったかな。
あと、ストーリーの流れ的にデイミアンを完全悪役にできないのは辛かったですね。
アドニス側にも少し非があるので、徹底した悪役キャラに仕立て上げられないという。
悪役の悪っぷりが弱いと、物語のカタルシスはどうしても弱くなる。
結構悪く作品評を書いたのですが、ロッテン・トマトのデータ上は傑作である1・2作目より今回の方が評価が高いみたいですね。
アメリカ人の評価ポイントはよーわからん。