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嵐を聴きながら振り返る、平成という時代〜嵐シングルレビューPart3

今回は、佳作連発のブレイク前夜である2002年から2003年を振り返っていきましょう。

2002年、この頃の嵐はデビュー4年目。
嵐のメンバーはみんな20歳前後、一切関係ないですけど僕が12歳の頃ですね。

世間は日韓共催のワールドカップに沸きまくって、サッカー熱がめちゃくちゃ高まってました。
時事問題でいうと、拉致問題というワードが世間を席巻していましたね。
政治とか時事問題とか全く興味ない僕でもイヤというほどそのワードを聞いた年でした。

そんな2002年、嵐がリリースした8枚目のシングルが「ナイスな心意気」
各方面に衝撃を振りまいた前作「a Day in Our Life」から2ヶ月という短いスパンで発売されめした。

少年ジャンプで連載されていた長寿漫画のアニメ化作品『こちら葛飾区亀有公園前派出所』エンディングテーマに起用された、嵐にとっては初となるアニメタイアップ曲。
同世代の男子であれば、この曲に聞き覚えがある人も多いんじゃないかな。

サウンド全体は明るめの印象なんですが、その実よく聴くとメロディも歌詞もさらっとしてて大人な感じ。
サビメロも単純では終わらず、「わかりにくいのは〜」からもう一展開あることにハッとさせられる。

ベースが主張するAメロやサビの直前で雰囲気を
シックにさせるところとか、明るい中にも随所に落ち着きが垣間見える仕上がりで、これまでの嵐にはなかった大人っぽい抜け感が随所に垣間見える。

歌唱面では、Bメロでソロパートを獲得した大野智が相変わらず獅子奮迅の活躍。
Bメロは最後のサビ前にも登場するため、全編に渡って目立つ。ファルセット必須のメロディを飄々と歌いこなすのはさすが。
ただ、今見ると七三分けスーツの謎衣装このシングルだけカタカナの「アラシ」名義なのは滑ってるなぁ。

続く9枚目のシングル曲は
、初のグループ全員出演映画「ピカ☆ンチ LIFE IS HARDだけどHAPPY」主題歌である「PIKA★NCHI」。

曲は「時代」「a Day in Our Life」を掛け合わせたようなアクの強いミクスチャーロック。

印象的なギターリフで幕を開けるイントロに櫻井のラップと
他メンバーの掛け合い、ヘッドバンキングしたくなるサビ、サビメロの後ろでドカドカ鳴るドラムといい、(しかも最後のサビではテンポアップして激しくなる)ノリは完全にラップロック。
実際に出てくるのはもっと後なんだけど、 ORANGE RANGEとかが歌ってそうな雰囲気。

歌詞は思春期のモヤモヤを吹っ飛ばしたいいかにも若者、という感じの青春ロック調。ヤンキー漫画とかに合いそう。

Bメロのサクラップもキレキレで、先々ニュースのキャスターを務める男が歌ってるとは到底思えないレベルである。

目立っている櫻井の影に隠れがちだが、この時期のパフォーマンスを見ると松本も相当尖っているし、二宮も今だったら絶対しないだろうというぐらい眉間に皺寄せて歌っていたりする。
まあ、当時は櫻井20歳、松本と二宮はまだ19歳だからオラつくのも当然っちゃ当然か。

しかし、
2003年2月にリリースされたちょうど10枚目のシングル「とまどいながら」で、そのオラつきはようやく収束する。



これまでの嵐にはなかった、切ない雰囲気が新鮮な良質ポップス。


この曲は後に「五里霧中」「WISH」を
制作し、
嵐ブレイクの影の立役者となるオオヤギヒロオ氏が
作詞・作曲・編曲全てをひとりで手がけている。

さすがに一人で作っただけあって、詞・曲・アレンジの世界観がバッチリ噛み合っている。

冬の星空を思わせるチャイム音に打ち込み音+アコギの存在感がこの曲の持つ”とまどい”という感情とぴったりマッチ。

「とまどい」とは、辞書で調べると“手段や方法がわからなくてどうしたらよいか迷うこと”だそうで。
この曲からは“迷いを振り切って前に進む”
という気持ちが強く感じられる。



それは歌詞の面でもだし、
嵐自身の歌唱一つとってもそう。


歌割も1番が櫻井・二宮→相葉・松本
→大野ソロ→サビ、
2番が櫻井・松本→相葉・二宮
→大野ソロ→サビという風に
大野のパート以外は歌唱メンバーの
組み合わせがどんどん変わっていく。


歌詞面も含め、
大野以外のメンバーが
入れ替わりながら歌っている部分は
「この胸に抱く 想い隠してる」「昨日より今日が少しつまらなく思えて」「苛立つこの気持ちを抑えきれずにいた」など、まさしく”とまどい”を表現しているかのよう。

そして、そのあとに続く
大野のソロパートの力強さは
その”とまどい”を
振り払うかのような感傷的な雰囲気を帯びている。



2番の大野のソロパートから続く
サビの歌詞、


特別な人じゃないけれどこの手にある自由で
誰よりも高く舞い上がろう
まだ見ないあの場所へ
辿り着くために

の部分は、紆余曲折を経た嵐の音楽性や
グループの遍歴、そしてこの後芸能界のトップに
立つことともリンクしているようで、
今聴くとなんとも感動的。

このシングルはオリコンでは週間1位を
獲得したものの、嵐の作品の中では「PIKA★★NCHI DOUBLE」
「サクラ咲ケ」(どちらも名曲なのに…)
に続きCD売上枚数ではワースト3位。

しかし、楽曲の良さもさることながら前作までのトガった立ち振る舞いが
やや落ち着きを帯び、グループの雰囲気も現在のものにやや近づいてきている。



実際に嵐がブレイクするのは
このシングル発売の
2、3年ほど先だが、
人気が爆発する土壌自体はこの時期あたりから
整い始めていたのかもしれない。

Part1、2はこちら。


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