男なら一回は観るやつ。ボクシング映画の金字塔「ロッキー」(1976)
言わずと知れたボクシング映画の金字塔。
けど、意外と周りでは観たことある人が少ない気がする。
STORY:
三流ボクサーのロッキーは、ボクシングだけでは食べていけず、借金の取立て人をして日銭を稼いでいた。
そんな彼の生きがいは、親友ポーリーの妹であるエイドリアンの存在。
ロッキーは彼女が働くペットショップへ毎日足を運び、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、ヘビー級世界チャンピオン・アポロがタイトルマッチで戦うはずだった相手選手が負傷。
代役探しに奔走するプロモーターたちに、アポロは「無名選手にチャンスを与える」というアイデアを出し、「イタリアの種馬」という変わったニックネームをもつロッキーを対戦相手に指名する。
実力の差が歴然としていることから断ろうとするロッキーだったが、人気獲得のために試合を開催したいアポロやプロモーターは強引にロッキーを説得、試合の開催を決定。ロッキーは世界チャンピオンと戦うことになる…
◆ロッキーの人間臭さが身に染みる
この映画を初めて観たときは高校生ぐらいの時で、その時はそんなにすごい作品か?と感じたことを覚えている。
映像も古臭いし、シナリオにもそこまで心を打たれなかったし。
けど、年齢を重ねるうちにこの作品が評価されている理由が段々わかってきたような気がする。
まず、主人公のロッキーがロクでもないゴロツキっていうのがいい。
口は悪いし態度は粗暴、スポーツ選手としてはピークを過ぎた年齢なのに大した努力もせず、コーチであるミッキーには半ば見捨てられている状態。
闇金の取り立て人として日銭を稼ぐが、根が優しいため踏み倒そうとする人を攻め立てることもできず。仕事も満足にこなせない。この人間臭さ、ダメダメさ。
自分もロッキーと同じく三十路になった今、共感が止まらない。
学生の頃は根拠もなく自分が何でもできると思い込んでたし、何もできないロッキーに自分の姿を重ねることなんてなかった。
この歳になってこそ、彼に自分自身の姿を投影できるようになったんですよね。
◆何かを”やり切る”ことの大切さ
ロッキーに突然舞い込んだ世界チャンピオンとの対戦。
これも、昔観てた時は「すげえラッキーじゃん!」と思ったけど、今見返したらたまったもんじゃないな、と思った。
僕がもし「世界一の文筆家と公開note対決をしてくれ」なんて突然言われたら、恥かくだけだからやめてくれと即刻土下座だ。
しかし、ロッキーはこの試練を通じ自分が孤独ではないことを知り、逃げずに戦うことを選ぶ。
もしかしたら大恥を世界中に晒すことになるかもしれないけど、それでも構わないと。
覚悟を決め、必死にトレーニングを積むけど、愛するエイドリアンには試合前に弱音をこぼしてしまう。
それでも、ロッキーは逃げずにアポロに立ち向かおうとする。
ロッキーは、本来そこまでできた男じゃない。
こういうチャンスが舞い込まなければ努力することもなかっただろう。
ちょっとボクシングが強いだけで、言うなれば僕なんかとさして変わらない人物。
そんな彼が自分の価値を証明しようと必死に努力する姿には男なら絶対グッときちゃうはずだし、自分も何かやらなきゃ、とエネルギーをもらえる。
◆ロッキーとエイドリアン
壮絶な戦いとなった試合の後。
ロッキーが試合の判定結果を全然気にしていない、というのもまたグッとくる。エイドリアンもまた然り。
ロッキーはエイドリアンしか見えていないし、エイドリアンはロッキーしか見ていない。この二人の純愛も「ロッキー」の見所の一つ。
このカップル、見た目的に全然スタイリッシュじゃないんですよね。
ロッキーはタレ目ゴロツキ崩れだし、エイドリアンはめちゃくちゃ陰キャそうだし。
でも、二人が会話を重ねて距離を縮めていく様子は微笑ましいし、よく名シーンとしてあげられるスケートリンクのシーンは不器用さがなんともかわいらしいですよね。映画を観ていると、いつのまにかこの2人を好きになってしまう。
スタローンみたいなゴリマッチョがこんな可愛らしい脚本書いてると思うとビビるけど。笑
映画の最初の方は全然可愛いと思えなかったエイドリアンが、最後には可愛く見えてくるから映画ってすごい。
◆スタローンの人生と重なる作品
続編「ロッキー2」以降は回を追うごとに「やり切る」というテーマが薄れていき結果として凡庸なアクションシリーズに成り下がってしまう。
しかし、30年後の「ロッキー・ザ・ファイナル」は1作目と近しいコンセプトを掲げ大成功。
その後に続くスピンオフ「クリード」シリーズも主人公の設定から本流のシリーズと毛色は少し異なるものの、1作目の遺伝子を継いだ傑作となっている。
ロッキーシリーズは無名の男が一躍スターダムに上り詰める1作目、数字は稼ぐも評価はイマイチな2〜4作目、低迷期に入っていく5作目、第一線に舞い戻ってきた6作目、名優としての地位を築き高い評価を集めたスピンオフシリーズと、スタローン自身の人生の浮き沈みとリンクしているところも胸熱ポイント。
やっぱアメリカン・ドリームはいつ見てもいいんですよね。