![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/35895576/rectangle_large_type_2_4939b6888e63203a7fd0d8cf7918ea00.jpg?width=1200)
好きなシリーズもの映画PART3 実写版・るろうに剣心シリーズ(2012〜継続中)
2021年に最終章となる4・5作目が公開される予定の「るろうに剣心」シリーズ。
本来は2020年公開予定だったが、新型コロナウイルスの影響で延期。
ようやく公開日が決まったと思ったら、2作目から参加している主要キャストがやらかしたことで違う意味で話題に。
思えば原作者も書類送検されたりヒロインが急にデキ婚したりと不運な映画だが、個人的には邦画で数少ないお気に入りのシリーズ。
最終章公開前に一気にシリーズを振り返りつつ、観てない方にはこのいびつなシリーズの特殊な魅力を伝えていきたい。
るろうに剣心
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/35895589/picture_pc_9919a767e3dab4a714db00c658ad8416.jpg?width=1200)
公開日:2012/8/25
評価:75点
「アクション少年漫画の実写化は失敗する」というジンクスを破ったという意味で、邦画の歴史に残る作品。
しかし、はっきり言って物語の展開は結構杜撰だし、役に合ってないキャスティングや原作ファンならマジかよと思うような設定改変もある。
冒頭に記載した僕の個人的評価も75点だ。
それでも、この作品には何度も繰り返し見たくなる魅力が詰まっている。 その大きな理由は以下の3点。
①漫画→実写へのビジュアル面の落とし込みのうまさ
②アクション監督に谷垣健治を起用したこと
③緋村剣心役に佐藤健、鵜堂刃衛に吉川晃司をチョイスしたこと
まずキャラクターのビジュアル。漫画実写の1番のハードルがこれである。
例えば衣装。原作を完全に再現しようとすると違和感が出るし、かと言って全然違ったらファンに叩かれる。
この落とし所を間違えて、今までの何本の邦画が死んでいったか。
この作品は、一歩間違えればコスプレ大会になりそうなところうまくリアルに落とし込んでいる。
神谷道場や警察署のセットにも汚しを入れることでどれも程よい息遣いがある。
「スター・ウォーズ」や「エイリアン」でも、汚しを入れることで宇宙空間をリアルに見せているが、漫画実写でも必要だったのはこの要素だったのだ。
続いてはアクション。
谷垣健治は、”語るアクション”を作ることができるアクション監督だ。
本作のアクションは、戦闘法や動きからキャラの性格や特徴がしっかり読み取れる。
なおかつ、原作ではおなじみの飛天御剣流の技の数々や拳銃の弾さえ避ける人間離れした剣心の動きを、コントになる”二歩手前”ぐらいでうまく調整。
ワイヤーアクションなのにギリギリ自力で動いているように見える範囲を見極め、人間離れしているのに緊迫感のあるアクションをうまく作り上げている。
また、剣心と斎藤との対決シーンは雨を降らせる、観柳邸に乗り込んだ時はお札を舞わせる、刃衛とのラストバトルでは火花を散らせるなど、視覚的な変化を与えることで同じようなアクションが続くのを避けているのもうまい。
最後は佐藤健・吉川晃司のキャスティング。この映画の成功にこの二人の存在は絶対に欠かせない。
まず、主演の佐藤健。
本作撮影当時22歳の彼が、発行部数7200万部の超人気漫画原作の大作映画に吉川晃司・蒼井優・奥田瑛二・江口洋介・香川照之を脇に回して主演するのは、並々ならぬプレッシャーがあったはずだ。
しかし、作中では漫画の世界から飛び出してきたようなルックスと抜群の身体能力・安定した演技力を披露。
特にほぼ全編ノースタントでこなしたアクションの数々には頭が下がる。
壁走り、宙返り、股抜き…挙げればキリがないが、特に観柳邸での大立ち回りとドリフト走り、外印戦後半の殺陣、初めてフルパワーで戦う刃衛戦は必見。
演技面ではコミカルなシーンがややマンガチックになってしまったり、時折声を張り過ぎ・作りすぎてる感も否めないが、刃衛戦での激昂した様子や斎藤戦で見せるやりきれなさ、初めて赤い着物に着替えたシーンなど、表情の作り方が絶妙。彼なくしてるろ剣の実写化は不可能だっただろう。
そして、漫画の世界から飛び出してきたような男がもう一人。
それが鵜堂刃衛を演じた吉川晃司だ。
下手すればキワモノに見えてしまうこの役を、吉川は自身の持つ浮世離れした存在感を活かし怪演。
気合で相手にプレッシャーを与え、動きを止めるという原作の中でも最もマンガ的な技「心の一方」を使うことに違和感がないのはマジでスゴい。
これはひとえに「こいつなら使えるかも…」と思わせる凄みを吉川が醸し出しているからに他ならない。
アクションシーンではシンバルを蹴り飛ばす身体能力をフルに利用し、原作で「不気味な剣線」と呼ばれる刃衛の剣術を見事に体現。
“背車刀”をあんなに美しくこなせる役者は吉川晃司だけだろう。
このような理由から私はこの映画が基本好きなんですが、愛すべきディスりポイントも多数存在。
道場を乗っ取りに来た観柳の手下がEXILE風半グレ、恵の前に現れた外印(綾野剛)が意味なく仮面を取ってイケメンアピール、
病人が出たら町の人がみんな道場に押しかけて来る、
なんの脈絡もなく左之助(青木崇高)が仲間になる等、全体的に脚本はぐちゃぐちゃ。
原作ではクールな性格と高い戦闘力、一匹狼的な立ち振る舞いで高いに人気を誇るキャラクター・斎藤一の扱いもひどい。
血の気たっぷりでやけに喧嘩っ早いし、上司にはペコっと頭を下げるし、おまけにフワッと牙突で敵ではなくシャンデリアを狙う。
斎藤を演じた江口も含め、おっさんの左之助、狐顔の薫、たぬき顔の恵、タレ目の斎藤、中年体型の観柳とキャスティングは全然合ってない。
なのに、やけに合ってる警察署長。力入れるのそこじゃねーよ!
ヒロイン・武井咲の演技はリアルタイムで観た時、最初に剣心と出会うシーンで笑ちゃった。違和感すげーんだもん。 「土足で上がるな!」連呼もなんか笑えちゃって…続編「京都大火編」以降は少しマシになるんだけど。
この作品は、脚本-70点、アクション100点、佐藤健+吉川晃司が45点で構成されています。
興味がある方は是非ご覧ください。
アクションだけで一見の価値はあることを保証します。
るろうに剣心 京都大火編
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/35895599/picture_pc_a1e0bb997d6cbc33175de3d317233224.jpg?width=1200)
公開日:2014/8/1
評価:90点
個人的には、この2作目が3部作で最も完成度が高いと思う。
来年公開予定の最終章にはこの作品を超えてもらいところだが…
前作を超える超絶アクションに加え、藤原竜也・伊勢谷友介・神木隆之介・土屋太鳳・三浦涼介・滝藤賢一・田中泯と言った超豪華な追加キャストが見どころ。
前回を上回るスケールで展開されるアクションシーンは中毒性バツグンで、僕はこの映画を観に映画館に6回通った。
実写「るろうに剣心」シリーズで毎回問題点となるのが脚本部分なのだが、2作目は比較的出来が良い。
原作の導入から御庭番衆編(1巻〜4巻)と斎藤の登場(7巻)を無理やりドッキングした1作目や、フォローできないぐらいとっ散らかっている3作目とは異なり、原作8巻〜13巻頃の展開を比較的うまく2時間に収めている。
特に、映画オリジナルシーンである斎藤一が志々雄真実のアジトに乗り込むシーンは、映画の導入として非常にクオリティが高い。
志々雄の初登場シーンは、音楽・ロケーション・演出が全てマッチしており鳥肌モノ。
まあ、とは言え問題がないかと言えばそういうわけでもない。
四乃森蒼紫の扱いやなんも成長しないで京都に到着してしまう左之助、謎の志々雄様影分身や実写版神谷薫お得意の同じセリフ連呼に加え師範代のくせにまたしても簡単に敵にさらわれる等、真剣に見れば問題点はたくさんある。
前作同様この作品の売りはぶっ飛びアクションと原作をうまく再現したビジュアルであり、それを活かす脚本であればそれでOK。
そういう意味で、戦闘シーンを違和感なくつなぎ合わせ、原作の要素をうまく掬った2作目の脚本は非常に完成度が高い。
前述の通り、今作では超豪華な追加キャストが佐藤健演じる緋村剣心を包囲するが、中でもラスボスである志々雄真実を演じる藤原竜也の存在感は群を抜いている。
灼熱の炎の中、何人もの僧が念仏を唱えているという外連味たっぷりの初登場シーンも、
彼が真ん中に立ちドスの効いた声を発していると自然に見える。
顔面を包帯で覆われるという役者としてとんでもないハンデを背負いながらも、目の力や立ち姿、声のトーンだけでここまで悪のカリスマ感に説得力を与えるのは見事。
瀬田宗次郎役にビジュアルがぴったりの 神木隆之介は、アクションシーンも器用にこなす。 物語中盤の彼と佐藤健のバトルは本作の見どころの一つ。
他にも、登場シーンは短いながらも独特のビジュアルと自然な関西弁で存在感を発揮した三浦涼介、ヒロイン神谷薫より明らかに難易度の高いアクションに挑んだ土屋太鳳等、キャスト陣の見どころは多い。
そして、今作最大のジョーカーが翁役の田中泯。 本作撮影時69歳とは思えない凄まじいアクションを連発する。 伊勢谷友介との年齢差30歳の戦闘シーンで一歩も引けを取らない風格はお見事。
主演の佐藤健も前作から2年の時を経て、俳優として大きな躍進を遂げた。
前作ではややマンガチックだった剣心の言葉遣いや日常の演技が自然に馴染み、そこに剣心がいるような佇まいを醸し出している。
志々雄と初めて対峙する場面や張との戦闘シーンでのいかにもカッコいいセリフは一歩間違うと寒くなってしまいがちだが、この辺りの調整具合も実にうまい。
俳優として明らかに前回とは違う余裕を感じる。
そして、るろ剣の見どころと言えばやはり超絶アクション。
この作品のアクションシーンは危険度・難易度・手数全てにおいて前作を遥かに上回っているが、佐藤はその全てを見事にこなしている。
前述の宗次郎戦や刀なしの状態で戦う張とのバトル、京都大火を阻止するための大立ち回りや薫を追いかけ瓦屋根の上を激走するシーン等、前編通して見どころ満載。
特に物語中盤、新月村での1対多数のアクションシーンの完成度はシリーズ3部作全ての中でもトップクラス。
個人的には、このシーンだけでも2000円払う価値がある。
3作目「伝説の最期編」の前編に当たる本作は、よくも悪くもダイジェスト的な作品のためとにかくスピード感あふれる展開で、前作のようなグダリ要素が一切ない。
そのツケは後編に回ってくることになる。
るろうに剣心 伝説の最期編
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/35895615/picture_pc_6d8ef593cb7a1c546068290f941f37b4.jpg?width=1200)
公開日:2014/9/13
評価:50点
シリーズ3作目にして一番の問題作。
前2作のレビューでも散々「この作品に脚本の質を求めるな」と書いたが、さすがにここまでひどいとは聞いていない。
アクションは完成度が高いが、2作目と公開感覚が近いこともあり若干食傷気味。それでも、この高レベルアクションと珍しい撮影技法を見るために劇場に6回行った僕は多分変態。
通常、映画の脚本にはアラを探してしまうものだが、この作品の脚本にはまともな部分の方が少ないため、逆にアラが目立たない斬新な作りになっている。
一つ一つ丁寧に書いていくとこの記事が卒業論文みたいになりかねないので、簡単に箇条書きで書いていこう。
・剣心が流された海岸はたまたま師匠(福山雅治)のお散歩スポット。実に運が良い。
・薫も運良く陸地に漂着。実に運が良い。
・とにかく警戒心がなく無能な伊東博文。
・「剣心を探し出してさらし首にしろ」と語る志々雄様。そんなキャラじゃねえだろ。
・無駄に長い修行シーンと師匠の顔寄りスローモーション。邦画のダメなところ全部出てる。
・目覚めたらフラフラで病院を抜け出して心配をかける挙句、物憂げな目で海を見つめた直後に突然「東京に帰るわよ」って言い出す薫。サイコパスかよ。
・剣心の修行がちょうど終わったタイミングでコントみたいに現れる操。
・同じセリフしか喋らない蒼紫。壊れたラジオかよ。
・ボロボロの老人の腕を蹴り飛ばし、自分を慕う女の子の腹を蹴り飛ばす蒼紫。これでは修羅というより人でなしだ。
・翁が死にそうだ…って思ってたら本当に死んだ。どうすんだよ。蒼紫がただの人でなしで終わるぞ。
・どう考えてもヒロインの役割である剣心に赤い着物を渡す役がなぜか恵(蒼井優)。
・処刑場まで連れて行かれる時の剣心の表情。なんで「おろろ」って感じなんだよ。そんなコミカルなシーンじゃねえだろ。
・処刑の時も意味深に名前を出される「清里明良」。実写版じゃ名前出てねえよ!
・処刑シーン、剣心の心情をナレーションで説明。演出がダサい。
・今度はあっさり政府の罠に掛かる志々雄一派の皆様。3作目には間抜けしかいないのか。
・斎藤さん、ジャニーズ顔負けの早着替え。
・十本刀のバックボーンをセリフで説明。もっと見せ方あんだろ。
・雑なバックボーン説明のせいで気が触れたようにしか見えない宗次郎。神木くんが気の毒。
・もっと気の毒なのが十本刀三強の一人、安慈。まさかのコメディ要員。
・結局ラストシーン近くまで放置される(一応)ヒロイン。
・志々雄に「誰だ」呼ばわりされる蒼紫。確かにな。
・締めは謎の敬礼。もう挽回は無理だし、そもそもどういう意味が込められてるんだよ。
総括すると、第2作のスピード感あふれる展開によって廃された要素の後処理と、超豪華キャスト全員に活躍の場を与えることの
どちらにも配慮した結果、脚本の整合性が崩壊したという感じか。
こんな無茶苦茶な脚本でも、主演の佐藤とボスの藤原がしっかりしてるからなんとか観てられる。
逆にいえば、この二人がいなければ一体どんな悲惨な作品になっていたのかちょっと気になるところ。
るろ剣名物の剣心1人VS多数のアクションが劇中2回登場するが、1作目から数えるとそのシチュエーションだけで7回もあるし、完成度が一番高いのは2作目の新月村。はっきり言って今作にはそれを超える見せ場がない。
煉獄でのノーカット長回しは気付けばすごいが、観客に凄さが伝わりづらい気もする。
とはいえ、殺陣自体の難易度は作中最も高そうな剣心と蒼紫のバトルや宗次郎戦のスピード感あふれる独特のカメラワーク、志々雄との最終決戦は出色の出来栄え。
そして、僕がこれだけ映画館に通ってしまったのは剣心・左之助・蒼紫・斎藤vs志々雄の最終決戦が大好きだからに他ならない。
ここ見たさのために、この映画をアホほど見返している。
見た目はスマブラみたいだし、よくよく考えたら主人公たちで志々雄一人をぶっ叩くという卑劣極まりないシーンなのだが、守るべきものを見つけ時代を前に進めようとする者たちと、時代が変わることを認めることができず、一人必死に時計を止めようとする者の戦いと考えて観ると、なんかめっちゃ泣けちゃうのだ。
そう考えると、卑怯だろうがなりふり構わず必死で戦う剣心たちの姿も感動的に見えるし、一人で戦う志々雄の姿もよりかっこよく見える。
まあ、その後の謎の敬礼によってこのシーンの余韻も冷めるんだけどね。
今回も長くなってしまった。
伊勢谷さんにはココイチ食ってねえでこの映画のファンに謝ってほしいとこだ。