何かに夢中になるって素晴らしい。映画「メタモルフォーゼの縁側」で泣いた
いやー、涙腺が弱くなったもんです。
STORY:
冴えない高校生活を送る17歳のうららは、アルバイト先の本屋で、BL漫画を堂々と買っていく老婦人・雪と出会う。夫に先立たれ孤独な毎日を送る雪は、BLの意味も知らぬまま、きれいな表紙に惹かれて思わず手に取っただけだった。ところが、思いがけずBLに魅了された雪は再び本屋へ向かい、BLに詳しいうららと意気投合する。そして、2人はいつしか年の差を忘れて友情を育んでいく。
BL漫画、おばあちゃんと女子高生の友情、進路と胸キュン…邦画でしかできない要素を詰め合わせた映画でした。
どうしてもアクションドンパチじゃハリウッドのお金のかけ方には敵わないし、こういう映画を増やしていってほしいところ。
出演者の演技が素晴らしい
ストーリーはもちろん、出演者の演技も素晴らしかったです。
まず、宮本信子演じる雪さんがとにかく愛らしい。
話し方もテンションが上がった時のはしゃぎ方も、すごく可愛らしいんですよね。
私事なんですけど僕はめちゃくちゃおばあちゃんっ子だったので、笑顔を浮かべるだけで泣いちゃいそうでした。
彼女の芝居を受ける芦田愛菜も素晴らしい。
よくぞ順調にここまで大きくなったものです。
同人誌の即売会に出展したものの、勇気が出ず会場に行けず泣いてしまう。あのシーンの演技はかなり泣けました。
この映画の短い尺の間で、うららの成長をしっかり表現できているのは彼女の演技力あってこそ。
そして、個人的に感銘を受けたのはなにわ男子の高橋恭平。
彼のヒーロー力、侮れないですね。
立っているだけで絵になるカッコ良さはもちろん、台詞にもかなり説得力があって。
鼻にかかった声質が役者向けじゃないんじゃないかと思い込んでたんですけど、想像以上に良い芝居をしていました。
ちょい役(でも重要)の古川琴音はさすがです。
というか、もう重鎮の出方じゃんと思いました。
要所に出てきて物語を引き締めるし、彼女の存在が物語の鍵となっています。
何歳であろうと、何かに夢中になることは素晴らしい
話的にはよくある群像劇っていえばそうなんですけど、要素の配置がうまいですよね。
本作では「BL」を好きであることを恥ずかしいと思っている17歳のうららと、好きなものを好きとはっきり言える雪さんの二人が主軸になっています。
うららは思春期真っ只中で、周りの目が気になってしまう年頃。
仄かに憧れを持っている幼馴染は別の女の子と付き合っているし、その女の子の人生が何もかもうまくいっているように思えてしまう。
一方、雪さんはそんな時期を乗り越えた存在。
彼女は「BL」を好きであることを一切恥ずかしいと思わず、好きなことはやってみるようにうららの背中を押す。
彼女と友情を育むことで、うららは一つ成長することになるわけです。
何歳になっても何かを好きになって夢中になれば輝けることは変わらないし、報われる時がくる。
そんなメッセージが込められてる気がして、情けない話ですけど視聴中に3回ぐらい泣いてしまいました。
「うまくいかない」の中に効く一粒の奇跡
こういうストーリーって、「いやいや、それはないでしょ」と思わせないことが一番大事だと思うんですよ。
極端な話、アイアンマンとかスパイダーマンが実在してると思っている人はこの世にいないと思いんですけど、うららや雪さんは実在していてもおかしくない。
これが、こういう現実的なドラマを作る上で一番難しい部分だと思います。
設定が現実的だと、ストーリー的にも「ありえない」を割り切れないのである程度現実に即した話にする必要がある。
でも、その中でうまくカタルシスを作っていかなきゃいけない。
この作品はそこがうまかったです。
比較的現実的なストーリーをうまく組み立てて、最後に奇跡の要素を一粒。これがバッチリ効いています。
観た人は「頑張っている人には、これぐらいの奇跡起きても良いよね」と思えるし、鑑賞後に優しい気持ちになれるはず。
うららと雪さんにどんな奇跡が起こるかは、ぜひ皆さんの目で見てほしい所存です。