冬場でも食中毒を警戒
寒い時期も注意
東京都内で昨年11月、焼き菓子「マフィン」を食べた複数の人が
嘔吐や腹痛などの食中毒を疑う症状を訴えた。
食中毒は暑い時期、とのイメージがあるが、実は、秋冬の発生も
少なくない。
住宅の気密性が高まり、室温が上昇したこともあり、食中毒は
冬場でも起きるし、加熱したら大丈夫というわけでもない。
このマフィンは、東京都目黒区の焼き菓子店が製造し、昨年11月に
同江東区内のイベント会場で販売したもの。
購入者から「糸を引き、納豆のようなにおいがする」との苦情や、
食べた後に嘔吐や腹痛の症状が出たとの声がX(旧twitter)に上がり、
被害が判明した。
事態を受け、厚生労働省は食品衛生法違反の恐れがあるとして、
約3000個をリコール(回収)対象とし、情報を公開。
危険性が3段階で最も高く、重篤な健康被害になりうる可能性が高い
「CLASS(クラス)Ⅰと認定した。
結局、原因は不明で、細菌類も特定されていない。
年間を通じて発生
気温が下がる秋に、加熱済みの焼き菓子で食中毒が起きるのは
意外に感じる。
しかし、食中毒は1年を通じて起きるもの。
秋冬だから、加熱済みの食品だからといって油断しないことが
必要不可欠である。
食中毒を引き起こす原因は、主に、細菌・ウイルス・寄生虫の
3種類がある。
ノロウイルスによる胃腸炎は、そもそも冬の流行で知られるが、
細菌による食中毒も秋から冬にかけての発生が一定数ある。
細菌で起こる食中毒はカンピロバクターのほか、セレウス菌、
ウェルシュ菌、腸管出血性大腸菌(O157)によるものなどがある。
食中毒防止の3原則の一つ「やっつける」は十分に加熱することを
指す。
ところが、カンピロバクターは加熱を徹底すれば死滅するが、
セレウス菌やウェルシュ菌は、加熱処理で死滅させたり、毒性を
低下させたりすることが難しい。
耐熱性のウエルシュ菌は、100度で数時間加熱しても残存し、
空気がなくても生きられるため、粘度が高いカレーやシチューが
原因食品となりやすい。
一方、セレウス菌が作る毒素は126度で、90分加熱しても活性を
失わない。
この菌は穀類に多く付着し、チャーハン、米飯などによる
食中毒が報告されている。
今回、食中毒が疑われるマフィンについて、中で糸を引き、嘔吐を
伴う症状が出たことから、セレウス菌の繁殖によるものではないか、
と推定できる。
セレウス菌は、9月中旬に青森県の業者が調査した弁当を食べ、
500人以上に健康被害が及んだ集団食中毒でも原因菌の1つとして
判明している。
細菌を増やさない
これらの菌による食中毒を防ぐのは<増やさない>対策を
取るしかない。
細菌を増やさないためには
①調理したらすぐ食べる。
②取り置く場合には速やかに冷まして8度以下の冷蔵庫で
保存する。
8度以下なら細菌の増殖は抑制される。
カレーやシチューは1晩寝かせると美味しくなるとされるが、
鍋のまま常温保存するのではなく、必ず冷まして冷蔵庫に
入れること。
チャーハンやパスタ、焼きそば、弁当類も同様。
おせち料理も、食材や調理法が多様化した現代では、冷蔵
保存が無難だ。
最近の住宅は気密性が高く暖かいので、真冬でも室温に置くのは
厳禁だ。
真冬でも体調を崩さないために「増やさない」対策を徹底したい。
飲食店や調理事業者についても、繁忙期でも衛生管理が行き届か
ないほどの注文を受けないことが重要ではないだろうか。