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張替日記#0 物語のある椅子
マガジン「椅子と手のひら~張替日記~」
はじめに
まだ会社に勤めていた頃のある日、
珍しく一緒に作業していた先輩に、
「キタザワ(私の名前)はどんな椅子がやりたいの?やっぱりアンティーク?」
と聞かれます。
その問いの答えに私はこう答えます。
「物語のある椅子、ですかね。」
私が勤めていた会社は、椅子張り会社としては従業員が10人~20人くらいの中〜小規模くらいの会社でした。
一時は、職人よりも営業さんの人数の方が多く、私が入社した時はまさにそんな感じの時で、仕事が全然終わらない…
専門学校を出たての下積み気分な私は、この目まぐるしさに、あれよあれよと吞み込まれ、本当ならば、何年かは椅子を張るなんてさせてもらえないであろう所を、入社してすぐに即戦力として使ってもらえたのです。
会社の仕事は、そのほとんどが業務関係の仕事でした。
飲食店、カラオケボックス、キッズルーム、ラブホテル、夜のお店…etc
張り替えももちろん、業務用別注の新規製作、現場張替も行っていました。
仕事内容はその中でも、いわゆるBOX椅子と呼ばれる、箱型の木枠を張り込んだソファやベンチが6割~7割くらい。
家具屋さんから持ち込まれる一般家庭や商業施設、病院等の椅子やソファが3割くらい。
その他、もろもろ色んな"張り"の仕事をやっていました。
椅子好きの方や、椅子張り屋になりたい!と独立希望の方々は、やはり業務用のBOX椅子ではなくて、「THE椅子」というような、アンティークやビンテージ、北欧家具や名作家具をやりたい!と思うのでしょうか?
私はどちらかと言えば、椅子が出来るまでのストーリやどんなデザイナーが作ったのか、と言うよりは、誰がどんな理由でこの椅子を買って使ってきたのか、という事に興味があるのです。
大型量販店やネットサイトに大量の安い椅子が並べられ、
張り替える方がはるかに高いじゃないか!と思われる値段で、
それでも張り替えたいと、椅子を持ってきてくれる方がいる。
もちろん、別注で作ってもらったから、
海外の名作でいい椅子を買ったから、
高価だったから、
と言う人もいれば、
高価な椅子じゃないんだけど、思い入れがあるからとか、
結婚した時・家を建てた時にそろえたからとか、
古いものが好きだとか、
おばあちゃんやお師匠さんの形見だとか、
新しいものを買いたくないとか、
そういう時代でしょ?とか。
人には様々な理由があります。
そして、どんな椅子にも、どんな張替工程にも面白い部分はいっぱいあって、
例え業務用の椅子だとしても、
座張り(ボウズ張り)と呼ばれ簡単だと思われている作業だとしても、
こだわりポイントや難しさが、色々あります。
椅子と依頼をくれる方には、色んなストーリーがあるから、
使い続けたいと願っている人に、ぜひあきらめてほしくない。
だから私は、
「この先もこの椅子に座りたい!」と来られる皆さんの椅子を、修理し続けていきたいと思っています。
これから、そんな椅子にまつわる物語と張り替えについて、
「椅子と手のひら~張替日記~」
楽しんで読んでもらえたらうれしいです。
そして、あなたのお尻の下にある椅子にも聞いてみてください。
まだ張り替えなくても大丈夫?と。
PS. どうして「椅子と手のひら」なのかと言うと、小さすぎる私の手について、
「そんなモミジみたいな手をして…」
と、いつも親方が言っていたからです。
古い椅子を張り替えて展示販売する「座と輪の古椅子展Vol.2」の開催を目指しています!