丸缶のバターをパンに置きたいのよ
フランス人はフレーバーバターを”食べる”文化があるという話を目にした。
マジかと思って調べたところ、その真偽はさておいて(え?)、バター自体の消費量がものすごいことがわかった。
ブリオッシュやクロワッサンなど、食材そのものにバターがふんだんに使われているのもあるが、例えばパンに塗る量も豪快らしい。それはまるでチーズをのせているかのよう……なんだとか。
それで言ったら、私だってそのくらい分厚く塗りたい、否、置きたいぜ!? パンは土台です、と言わんばかりの勢いでバターをセッティングしたいぜ?!
特に”食べたい”のは、「トラピストバター」である。
北海道は道南・北斗市にあるトラピスト修道院で作られている。
お土産としては常温で持ち運べるトラピストクッキーのほうが有名だろうか。こちらは昔ながらの素朴なバタークッキーで、しみじみとした美味しさが魅力である。しかし私としては、バターのほうを強く推したい。
すっきりしていて、厚く塗ってもクドくないのがポイント。一度食べたら虜になってしまう圧倒的なパワーを秘めている、(良い意味で)危険な代物だ。
このバターを前にすると、トーストは土台と化す。そこにナイフで削り取ったバターをポンポンポンと乗せていくのだ。冷蔵庫から出したばかりだと硬いので薄くしか削れないのだけど、それによってくるんと丸まった姿はまるで羽のようである。
母に咎められそうなので欲望のままにのせたことはないけれど、本当は土台を羽でみっちみちにしてみたかった。熱々とひんやりのコントラストからパンとバターの一体化をグラデーションのように楽しめるんだろうな……じゅるり。
ちなみに、道内住みでありながら(だからこそ?)いただきものでしか食べたことがない。そして道民が道内のお土産をもらうこともほとんどないため、下手したら15年くらい食べてない。
しかし、それでも昨日のことのように食べたときの気持ちを思い出せる。そのくらい美味しいので、機会があったらぜひ食べてみてほしい。
*****
トラピストバターでいうと、トラピスト修道院で売っているトラピストソフトも初めて食べたときは衝撃が走った。修道院の本気、半端ないぞ……。
きめ細やかな質感で、例えるならベロア生地のよう。こちらにももちろんトラピストバターが使用されているし、おまけにトラピストクッキーもささっている。さぞかしバターバターしているのかと思いきや、重たさやクドさは皆無。ミルキーな味わいに邪魔せず、しかし確かに存在感を発揮する、すごい奴なのだ(語彙力)。
残念ながら、このソフトクリームも最後に食べたのは数年前。修道院なので街場からやや離れており、他の目的地と掛け合わせにくいのだ。
販売休止期間に投入するのは11月半ばらしいので、今シーズンはまだ猶予がある。とはいえ……今月はかぼちゃスイーツで手一杯な気がするし、11月に突入するといよいよ寒くなってしまう。売店の設定温度が高めならいけるけど、環境的にも費用的にも厳しいものがあるだろう。
じゃあ立ち返ってバター買うしか(どんな思考回路?)。
単価は高いけど一朝一夕でなくなるものでもない。食パンは1斤100円のにしているのだから、塗るものに高級感持たせてもバチは当たらないのでは。なんというか、日常にひとさじのきらめきをってね?(毎日ご褒美の甘味摂取しておいて、さらになお?)ああ、でも欲望のままに塗っていたらすーぐなくなっちゃうなあ……小心者の私はできないだろうけどさ。
そんな妄想に浸る木曜日の夜。机上旅行のような感じで、これはこれで面白いものですよ?