ガサツ力
皆さんお疲れ様です。仕事に学業に酒に涙に男に女に、目まぐるしく日々を過ごされていることと思います。
社会で属している大多数の方が、必ずどこかで誰かと何らかの関わりを持って過ごしているだろうと常々考えておりまして、そこにはやっぱり上とか下とか横とかのつながりがあるのではないでしょうか。
昔話で恐縮ですが、私が働いていたところに、ある後輩が入ってきたときの話をします。
業界未経験ではありましたが、やる気満々。言葉遣いや礼儀もしっかりしておりさわやかではあるのですが、自分のやることなすことに自信があるのが見え透けるようなそんな彼。まあこの点に関しては、元来私がひねくれものなのでそういう穿った見方をしていただけなのかもしれませんが。
彼はよく言えばエネルギッシュで、悪く言えばガサツでした。デスクが隣になったことで色々と彼の生態を観察する場面があったのですが、とにかくやかましい。というか騒々しい。
椅子をしまうときもガタン!マグカップ置くときもゴトン!ペンケース倒してガシャン!エンターキー押すときもタターン!というかババーン!もはやドカーーーーン!!
一つ一つの行動に漫画の擬音イラストが浮かんでくるようなそんなコミカルな方でした。
最初のうちは直接なにか害があったわけではなく「この人うるせえな~~ニコニコ」くらいの気持ちでずっと過ごしてたんですが、次第に目に、いや耳に余るようになってきてなんだかちょっとしんどくなってきました。
ただ彼は先述の通りエネルギッシュな人なので、一生懸命仕事をしてくれます。ある日のこと、チーム内で使っていたツールがあったのですが、急に彼が「これ、作ってるんでよかったら使ってください!」と独自のものを打ち出してきました。あまり深堀するとややこしいので、今回は単なるエクセルの表ということにさせてもらいます。彼が自分でそのエクセル表を作り直して、いきなり私含む先人たちに提案してきたのです。
「おおう」と思わず口から洩れてしまったのは私だけなのかは知る由もありませんが、そのツールが使えるか使えないかはさておき、その出来栄えは彼のガサツさを裏付けるのに有用なものとなりました。
以下のは私が作ったサンプルですけど
しいて言うならこんなんでした。
何が言いたいかわかりますか?よくわからんところで罫線の太さが違うんです。一応先輩とかに提案するものなのに、こういうの気にしないんだなあ、と思いました。加えて、それ以外の部分も取り立てて便利というものでもなく、これまで使っていたものと何が違うねん、くらいの代物でした。
私だったらこんなことできないな、と改めて彼のガサツさを実感したものの、一方では「若いっていいなあ」と心の底から感じた自分もいました。
キラキラした目で「見てください!」とまっすぐに提案できる怖い物知らずのハートを、私が失ったのはいつ頃なのでしょうか。
そんな彼をみて、うらやましくも感じてしまったのは事実であり、同時に彼を見習ってもっとエネルギッシュに仕事をすることも大切なのだと考えた次第です。
人間関係も同じで、多少ガサツであるくらいのほうが、細かいことは気にせず案外うまく回っていくのかなと思います。
距離をとることが必ずしも正解じゃないのかな、と。
自分の心に土足で入られるのは嫌ですが、かといって靴下を履いて心に踏み込むのもやりすぎなのかなと。
素足にスリッパくらいがちょうどいいのかもしれませんね。
とりあえずエンターキーを爆音でたたく練習をするところからだな、と当時の私は思ったのでした。
※タイトルは『ガサツ力(がさつりょく)』とお読みください。
校了…っと。(タターン)