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38万円は本当

交通事故にあいました。

その日はいつもの仕事場とは違うところに行く予定がありました。ちょっと気合いのいる場所でして、柄にもなく一張羅のスーツ着て、車の窓ガラスに映る自分を見ながら馬子にも衣装だななんて口にしたりして。駐車場で車のナビをセットして、よっしゃいこかい、と気合い入れて住宅街を走りだします。と言っても細い道なので20kmも出さずにノロノロと走っていたら急に右側からどーーーーーん!!!!ですよ。何が起こったかわからなかったものの、冷静になってみるとそれは、車道を向いて停めるタイプの駐車場から出てこようとした車でした。アクセル一番すごい勢いで運転席に飛び込んできたのでした。完全に車の横側にぶつかってきたわけです。すごい顔してたと思います私。だって右から乗用車ですよ。上からマリコならまだしも。視覚の届かない死角からの四角い刺客。こちらも走行中ではありますが、前方不注意なんか言われたらたまったもんじゃない。自己責任は10:0どころか10000:0だわこんなん(どっちにしろ何も変わらない)と頭を巡らせていたのもつかの間、どんな人がこの事故を起こしてくれたんだいこんちくしょうと、脳内はクールになりました。
事故の瞬間はユニバもびっくりのライド感でグワンと揺れたもんですから私も一瞬は楽しかったのですが、その衝撃の方向をみると「この世の終わり 表情」と画像検索したら左上に出てきそうな顔した女性がハンドルを握っていたわけです。とりあえず降りて警察なり何なり処理を終えて、ひと段落ですが、またあっついの、外が。太陽サンサンサンクトペテルブルクてなもんで、照らしてくる中処理ですからスーツは汗ビショ。一張羅も湿度を帯びる一方。サウナスーツかよ。

んで、イライラも募っていたのは事実なんですが、大変申し訳なさそうになさっているその女性を見るといやにこちらも忍びない気持ちになってきましてね。よくよく見ればかわいらしいお顔立ち。そんな相手を見て「お怪我がなくてよかったです」とか言ってんの、俺。横から突っ込まれたのにさ。超クールでしょ?事故にあっても相手を気遣う。これだよ、これ。モテる男の条件っていうのはそういうことなんですよね。
よくよく考えたら、こんなんも一つの出逢いってやつなんじゃないかと。事故から始まるストーリーがあってもいいじゃないかと。事務的ではありますがお名前と電話番号も交換したわけで、ここから二人の距離を近づける方法なんていくらでもあるじゃないかと。
恋愛漫画の第一話で、走っている男女がぶつかるシーンあるじゃないですか、あれを3倍濃縮したような出会いになったわけです。なんてったて車同士のごっつんこですからね。事故責任なんて50:50ですよこんなもん。事故責任の半分は自己責任。フィフティーフィフティー。そこから始まる恋愛、まさにフィフティー・ラブ。ドラマ化決定。月9はちょっと荷が重いか。せめて木2だな。木曜2時。夜の。

そんなことを考えるうちに、今日の仕事にいけないとか向こうも泣き出す始末でその涙すらもなんだかいとおしく感じてきました。私だって予定が大幅に狂ったわけですが、そんなことどうでもよい。よし、まずは相手を落ち着かせて慰めてあげねば、と私なりに誠意を込めて心配しようと思ったその矢先、

「ちょっと旦那に連絡してきます…」




はあ~~~~~~~~~~!!!???


どう考えても今回の事故責任は10000000:0です!!!!!!!50:50?んなわけあるかいそっちが全部悪いでしょ!!!!なんかドア開きにくくなってるんですけど!!!!ていうかドアボッコボコになっとる!!!!ストリートファイターのボーナスステージかよってくらいボッコボコになっとる!!!!!波動拳食らわせてやろうか!!!泣きたいのはこっちだよ!!!!大事な予定があったのに行けないしスーツも汚れてるし!!!!!!!!ていうかよく見たらそっちの車のフロントもボッコボコ!ていうかバッキバキ!!!!どんなスピードで突っ込んできたんだこの人!!!!!


な~~~~~んてね。
わかってたわかってた。事故から始まるストーリーなんて、サスペンスだけだよね。さ、修理修理と!!!!

修理代金見積もり、38万円。

おやすみ世界。

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