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【読書感想文】蜜蜂と遠雷/恩田陸

手元に来てからおよそ1年と10か月を経て、500ページの本を読み終わりました。奇しくも世間では映画化された真っ只中で、なんというか”巡り合わせ”だなあという感じがします。

タイトルの通り、恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』を読みました。

レビューとか書評とかそんな高尚なものを書ける気がしないし、読了後もなんともいえない微睡み感があり、ご飯を食べた後だったのでそのまま眠って起きてお風呂に入ってこれを書いています。

まず、読んだことがない人向けに軽くリード文的なのを残しておこうと思います。これ読書感想文じゃなくて、読書記録だ…。

0.作品紹介


『蜜蜂と遠雷』
恩田陸 著(他『夜のピクニック』、『六番目の小夜子』など)
ちなみに本作品は17年に直木賞を受賞。

作品内容としては、成人のピアノコンクールの話です。
『のだめカンタービレ』や『さよならドビュッシー』など、クラシック音楽や楽器演奏(聴くほうも演るほうも)が好きな方ならスッと入ってきそう。

というか直木賞を受賞している上に、2年後に映画公開がされているので、普通に私がぽやぽや積んでるうちにかなり多くの方が読まれたのではないでしょうか…。

それはさておき、2017年当時の私は出版社に入ろうとしていたので、当然、筆記試験で出るであろう、直木賞や芥川賞を始めとする主要な受賞作品のチェックをしていて、文庫になるまで待っていられないので単行本をどかどかと買って積み上げていました。

恩田陸さん自体は、中学生の頃(10年以上前)に学年文庫という学年で共有している本棚に前述の『夜のピクニック』や『六番目の小夜子』が置いてあったので、前者は読んだ記憶がありますが、後者はなんとなく怖いイメージが残っているので読んだかどうか定かではないです。

なので、恩田陸さんの文体に抵抗はなく、『蜜蜂と遠雷』自体は今年の夏くらいに知人に薦められていて、もうすぐ本に関するイベントもやることだし、何かそれにかこつけてやるか~となった矢先に読書候補に上がりました。

元々、小説自体はすごく好きなのですが、大学受験をきっかけに集中力や思考力ががくんと落ちてしまい、集中できなくなっていました。

そのため、本を読んでもあまりその”世界”に沈み込めず、それが苦しく感じて長らくほとんど小説を読んでいなかった(リハビリとして漫画をたくさん読んでいました)ので、今回なんだかとても懐かしい気持ちになることができて嬉しく思います。

文庫本ではたしか上下巻に分かれていて、単行本でも二段組になっているので、他の方のレビューで2時間で読める!と書いてあったのですが、二段組は改行が早く、目玉も忙しないながら、ちょっと時間が経つと「はて、この見開きのどこまで読んでいたっけ」となりました。

もしかしたら、私の記憶力がアレなのかもしれませんが、二段組、読みづらい。

さて、読んでない人向けに並べる御託はこのへんにします。

1.構成の話

音楽コンクールの話と書きましたが、もっと掘り下げると一次予選、二次予選、三次予選、本選があり、その間にいわゆる個人個人でイベントがある、という感じの構成です。

誠に残念なのですが、二次予選を読んでいる最中に巻末の結果一覧のページの下1行が読めてしまい、「今のなし!なし!」と言いたくなるような感じでした。

誰もが一度は考えるであろう話ですが、いわゆる”マイベストな作品をもう一度記憶を消して楽しみたい”的な気持ちです。

自分のお気に入り作品を知人友人などがまだ未体験だった場合、この名作をまだ読んでなくてこれから初体験できるだと!?羨ましすぎる!というのはよく聞きます。

コンクール結果が、読み進めている途中で明らかになってしまうのは悲しいことですが、きちんと救いのある話としてエンドを迎えているというのは強調したいです。

ちなみに今これ書いていて、普段読み終わった本は同じく読んだことある人とここが好き!と語り合う癖があり、それを相手がいない状態で並べるのは意外と難しいな、と気が付きました。

そして、”未読の人”向けにネタバレしない様に書こうとしているのがなんとなくあり、一体これは何なんだろうな…と考えながら好きなポイントを書こうと思います。

2.好きポイント


・言語化しづらい天才がでてきて、周囲に影響を与えがち

音楽テーマの作品が好きなのですが、フィクションあるあるというか現実でも音楽の世界ではあるある、なのかもしれません。

『のだめカンタービレ』でも主人公の野田恵が色々な人に影響を与えたり、逆に受けたりしながら成長していました。

・作中の曲に対してのイメージが深まる

読みながら作品に出てくるクラシック曲をBGMにしていたのですが、曲に対する解釈が書かれている部分で、確かにな、と思ったり、ラヴェルって3曲くらい認識するとほかの曲もあーこれラヴェルっぽい!と分かったりして、なんだかとっても贅沢でした。

ちなみにラヴェル「水の戯れ」「亡き王女のためのパヴァーヌ」「ボレロ」あたりが有名だと思います。全部『のだめカンタービレ』に出てきていたはずなので、私の偏った知識かもしれないけど。

・さあ、音楽を始めよう。

もはやただの『のだめカンタービレ』ファンが作品を重ねて追体験しているだけなのでは、というところもありますが、ご容赦頂きたく。

『のだめ』でもシュトレーゼマンが「楽しい音楽の時間デス」といったようなセリフを開演前に言っているのを思い出してちょっと泣きそうになりました。

これってビートルズの「The Show Must Go On(ショーマストゴーオン)」という曲にも通じるものがあるな、と思っていて、ニュアンス的には「一度始まったら、何があっても続けなくてはいけない」というのがあります。

英単語における"MUST"の話をすると朝が来てしまいそうなので、割愛しますが、演劇や音楽などのエンターテイメントステージから仕事のプレゼンに至るまで、いわゆる”本番”というのは出演者が各々の舞台に向かって一歩踏み出した(正確には踏み出さんと前傾した瞬間)、もう後戻りはできないわけです。

登壇自体を拒否したり、何らかの事情で出来なくなったりすることも十分にあり得ますが、それでも”本番”を行おうと企画が始まった段階で企画が成功しても失敗しても、明日は続いていくわけです。

私はこういうニュアンスを踏まえながら「さあ、音楽を始めよう。」や「楽しい音楽の時間デス」というフレーズを見て、登場人物の覚悟を感じてグッとくるものがあります。

『蜜蜂と遠雷』に関しては主人公の一人(何となくこの物語は主人公が複数いるような気がするし、もはや審査員の三枝子が主人公なのかもしれないと思ったときもありました)、亜夜がこのフレーズを使っています。

彼女は神童と呼ばれたところから、紆余曲折を経て音楽コンクールに出場し、次第に覚醒していくわけですが、コンクールはただの発表会と違って、審査があります。

次第に”コンクールとは何か”を意識していく中で、自分の中での覚悟や祈りが込められていてじんわりきたのでお気に入りの部分になっています。

・宮沢賢治がでてくる

宮沢賢治ファンなので、普通にうれしかったです。率直になるほどな~と思ったのと、『春と修羅』は昔読んだきりな気がして懐かしかった。

宮沢賢治の幻想的な世界観が好きなのですが、時として残酷な現実を突きつけられるような作品もあり、なんとなくそういった作品は思い出さないように振り分けられていたこともあり、作中では様々な解釈によって悲壮感に対して救いがありました。


さて、ネタバレを気にして書くのは、きっと”オタクの癖”ということで落ち着きました。

夜中にnoteを書いていることもあり、無限語れるモードに入ってしまっているので、続きはまたどこかで。

もしこれを読んで、この作品も気に入りそう~!とかあればぜひ教えてください。

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