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“Nintendo” という国境のない世界。 - 映画マリオを体感して -

公開から一週間以上遅れてやっと『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』を観ました。
5月の大型連休の最終日に重い腰を上げるような私には映画の感想を綴ることさえ憚られる気がしましたが、予想以上に感動し、任天堂に感謝の気持ちさえ抱いたため、この高揚を備忘録として残すことにしました。

映画については様々なところで様々な方が様々な立場と方法で語られていると思いますので、「最高だった!」くらいの感想しか述べられないことをお許しください。
(※少しの映画情報も望まない方はご注意ください。)

Super 個人的評価

まず冒頭で、日本語吹替版台本をヨーロッパ企画の上田誠さんが担当されていると知り、思わぬところでテンションがぶち上がります。⤴︎
ヨーロッパ企画は関西に住んでいた大学時代から大好きで、地方で暮らす今も近くで公演がある時は足を運んでいますので、「おおおおおおおおおおおおおおおヨーロッパ企画の名が遂にユニーバサルに!」と思い勝手に震えました。

そして、エンディングで ”Mr. Blue SKy” が流れた時。同じスクリーンを眺めていた人たちの中で一番交感神経が優位になっていたのは自分だと胸を張れます。
“Mr.Blue Sky” はエレクトリック・ライト・オーケストラ(ELO)の1977年のヒットソングで、MARVELの “Guardians of the Galaxy Vol.2”(2017年) でも大きくフィーチャーされたこともまだ記憶に新しいと思います。

何といっても!作曲者のジェフ・リンは、ビートルズ、そしてジョージ・ハリスンを愛する私にとっては神のような存在なので(長くなるので彼とビートルズの関係については割愛します)、最高の映画のラストに最高のタイミングで思いがけず彼の楽曲が流れてきたら、、、そりゃ泣きますよね。

トレイラーを一度見ただけでほぼ予備知識なしで鑑賞しましたが、映画を見終わってこんなにもスッキリと何も考えず「もう一回観たいー♡」と思ったのは10年ぶりくらいなので、たとえTOMATOMETERがどんなに低かろうと、私にとってはSuper High Scoreの作品となりました。

恥ずかしながら観賞後に英語版のマリオはクリス・プラッドが演じていることを知り、加えて “GotG 3”もまだ観られていないという体たらくですが、シネマでクリプラと何度も見つめ合ってきたので、近い将来再び映画館へ猛ダッシュしたいと思います。

映画マリオの凄さ

何が凄いって、集中力の乏しい子供や現代人を惹きつけるストーリー展開、アニメーション、音楽 =「ゲームから誕生した映画」の93分の完成度。

作品自体の素晴らしさに加えて、この映画には、これまでいくらIMAXや4DXを体験したとてぶち破ることのできなかったヴェールの先へほんの少し誘って貰えた気がします。

鑑賞環境はIMAX3Dでした。
4DXと迷いましたが、水と風があまり得意でない(いつも途中でスイッチをOFFにしてしまう)のと、混雑具合からの選択でした。

IMAXや3Dについては今更言及する必要もないかと思いますが、この映画はどうせ劇場で見るなら音や映像の迫力はあった方がいいかなと個人的には思います。

私がこの作品で生まれて初めての感覚を味わったシーンは、マリオとルイージがブルックリンの地下の排水菅(土管)から異世界へワープするところ

USJのSuper Nintendo Worldを訪れたことがある人にはきっと共感してもらえると思うのですが、その時、私はUSJの土管の中を歩いていた過去の自分と目の前の2人の兄弟がリンクする感覚を得ました。
というと壮大ですが、身も蓋もない言い方をすると「USJに行ったこと思い出した」ってことです。

「そんなこと、映画に自分が訪れたことのある場所が出てきたら良くあることでは?」と思われるかもしれませんが、それとはちょっと感覚が異なるのです。
己の貧しい語彙力と表現力を恨みますが、「USJに行ったことを細胞レベルで思い出した」のです。
伝われ!

任天堂の凄さ

私は映画館に行くのも平均して月に一回程度、サブスクで映画を鑑賞するのもその程度という、到底「映画好き」とは名乗れそうにない人間です。
ゲームに至っては、マリオカートで気づいたらぶっちぎりで逆走しているようなセンスの持ち主で、きょうだいや友人がプレイしているところを見て育ってきました(なので全くの他人が行うゲーム実況動画などには興味が持てません)。

そのため、最近まで “ゲームにハマる” という感覚を想像することが難しかったのですが、パンデミックが私を変えました。
気軽に人と会えない、出掛けられない中、友人に半ば強引に誘われる形で始めたのが Nintendo Switch『あつまれ どうぶつの森』でした。
そして開始一週間後には、朝5時に起床し出勤前に森を駆け回り一通りのアイテムを収集することが習慣となる程に成長していました(引き込んでくれた友人には心から感謝です)。

愛すべき My Girl's Sweet Home

任天堂の考える未来が私のものすごく先を行っていて、その未来が誰も予想しない「新型のウイルスの登場」によってものすごい速さで訪れ、『あつ森』と見事にマッチングしたのかもしれません。

巣ごもりでゲーム業界は市場を大きく拡大しましたが、『あつ森』はその中でもモンスターコンテンツでした。
ステイ・ホームが強要される中、『あつ森』の世界で新しい洋服を買ったり新しい住民と出会うことは間違いなく日々の大きな刺激となっていましたし、花火大会などのイベントは文字通り指折り数えて待っていました。

懐古するような文体であるのは、私が元来熱しやすく冷めやすい人・日本代表候補のような性格であり、ハロウィンの季節を迎える頃にはすっかり我が家にもゴキブリが出るほどのログイン頻度となっていた為で、しかし、そうであったとしても、あの “あつ森と過ごした数ヶ月” はわたしの歴史の中で今も燦々と輝いています。

任天堂は、そんな風にずっと誰かの暮らしに彩りを添えて来たし、きっとこれからもそうでしょう。

夢の国から国境のない世界へ

かつて、私にとって、ディズニーランドは確かに夢の国でした。
しかし今はそうとは言えません。
飽きたから?
老いてきたから?
それらも理由のひとつになるかもしれません。

最近は、ウォルト・ディズニー・カンパニーが建設したハリボテの上から弾ける笑顔のネズミが振りまいてくれていた魔法の効果がどんどん弱くなっている気がします。

「もうディズニーは最強のネズミー帝国としては存続できなくなっているのかも…」という一抹の寂しさと、「強大な帝国も私たちと同じように時代の波に揉まれ、闘い、試行錯誤していくものなんだな」と、その様を間近で見ることができることへの興味を抱いています。

今回、これまでディズニーの映画で体感することのできなかったものが、なぜ "任天堂×イルミネーション" の映画で得ることができたのか?について考えました。

その結果、「題材がマリオだったから」という極めて安直に思える結論が最後に残りました。

あの映画には、スター・マリオ&スター・ルイージだからこそ突破できた(しちゃった)問題がいくつか横たわっているのでしょうが(それがTOMATOMETERの数字に反映されている)、でもマリオの映画なんだからそれでいい、逆にそれがいいのだと思わせてくれる力があります。

最近のディズニー映画は、ある意味で「国境のない世界」を目指した作品作りが為されていますが、わたしが今回のマリオ映画で体験できたのは、そういう概念的なものではなく、具現化された「国境のない世界」でした。
単に「境界のない世界」と言った方が的確かもしません。

これまで散々マーベル作品(所有者はディズニー)で学び、理解したつもりでいたマルチバース的な感覚を、わたしはたった90分程度のマリオ映画で体得することができた気がするのです。

自分の経験という限られた小さな世界の中で、"ゲームで飛び回るマリオへの親近感" と "USJでマリオワールドに迷い込んだと思わせてくれた感動" と "自由に動き自分の意思で進んでいく映画のマリオたちへの愛着" が混ざり合い、実に不思議な「境界のない世界」を漂うことができました。

これはひとえにNintendoの戦略とコンテンツの素晴らしさなのでしょうが、「積み重ねてきた歴史がある」ということと「時代にハマる」ということの掛け合わせが生み出すパワーを目の当たりにした気がします。
(※まさに私がビートルズに魅せられる理由のひとつもこれなのです。)

麗しと混雑の Super Nintendo World!

最後に

映画マリオはきっと続編があるでしょう。
今回の『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』は完成までの製作期間がおよそ6年だそうなので、続編が公開されるとしても数年先だと思いますが、その頃世界はどのようになっていて、2023年版映画マリオがどんな評価になっているのか、新作マリオは私に何を体感させてくれるのか、考えるだけでとてもワクワクします。

マリオの産みの親であり今回の映画製作にもがっつり関わった宮本茂氏はインタビューで『任天堂のマリオを始めとしたキャラクターは、「ああー楽しかった!」と思えるものにしたい』とおっしゃっていて、まさに映画自体もその通りになっているのではないかと思います。

「ああー楽しかった!」っていう感想だけでいいじゃない?と心から思わせてくれる映画を観たのはなんだか久方ぶりのような気もします。

そこまでディープな映画好きではない。
Super Mario Brothers というコンテンツ(ゲームやLEGO, USJ)で少々遊んだ経験がある。

というような属性の私が抱いた感想ですので、もちろん全く違う想いを抱かれた方もいらっしゃると思いますが、私にとっては、「映画を楽しむ」という体験以上のものを与えてくれた初めての作品となりました。
そしてその体験は、多分近い将来私たちにとって当たり前のこととなるのでしょう。

最後に。
映画が始まる直前に、老若男女さまざまな人たちが思い思いにNintendoのゲームで遊ぶ広告動画が大きなスクリーンに流れたのですが、私は彼らの笑顔を見て、本編開始前から思わず涙してしまったことをここに告白します。


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MiHo O'Hara / Mihowell
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