ビートルズ【Now And Then】 - 楽曲&ドキュメンタリー公開!
最後のビートルズの新曲 "Now And Then".
ついにリリースされました!
2023年11月2日は、私たちビートルズファンにとって大きなニュースがふたつありました。
まず、“Now And Then – The Last Beatles Song” というドキュメンタリー番組が公開されたこと。
そして、ビートルズの最後の新曲 "Now And Then" がデジタルでリリースされたこと。
アナログ盤とカセットテープ、そして11/1に突如リリースがアナウンスされたシングルCDなど物理フォーマットは11/3発売なので、まだ手元に届いてないという方もいらっしゃると思いますが、ストリーミングやダウンロードによるデジタル音源はすでに公開されています。
今日はドキュメンタリーと音源の所感も少し書こうと思ってるので、まだ見てない、聴いてないという方はご注意ください。
※ MVが 11/3に公開されたミュージック・ビデオやNow And Thenのジャケットについてはこちらの記事をお読みください。
新ドキュメンタリー
まず、11月2日(木)日本時間 朝4時30分、ビートルズの新しいドキュメンタリー映像がビートルズ公式YouTubeチャンネルで公開されました。
このドキュメンタリー "Now And Then – The Last Beatles Song" は、オリヴァー・マレー脚本・監督のおよそ12分半のドキュメンタリーで、独占映像とポール・マッカートニー、リンゴ・スター、ジョージ・ハリソン、ショーン・オノ・レノン、そしてピーター・ジャクソン監督の解説で構成されています。
残念ながらジョン本人のコメントはありませんが、ポールとリンゴと同じようにジョージも登場して「ジョンが残したテープをヨーコにもらったんだ」って話しているのを見ていると、ジョージがまだ生きてるような錯覚に陥りました。
そしてジョージの、「ヨーコと話してたときに『あ。そうえばジョンのテープがあるのよ』って言われたんだ」というコメントを聞いて、この全てのきっかけを作ったのはジョージってことなの??って驚きました。
改めてジョンの不在と寂しさを感じることにもなりましたが、ジョージ・ポール・リンゴのスリートルズが、ジョンのデモテープを元にアンソロジー・プロジェクトで集結できたことは、とても意義深いことだったなと改めて感じさせてくれました。
ジョージが「僕たちが3人で何かするときは、当然ジョンも参加しなきゃならない。僕たちとまた一緒にやれて、ジョンも嬉しく思ったはず」と言っていたり、ポールは「 ジョンに、"この曲を仕上げていい?” って聞いたら、きっと “Yeah!” って言うと思う」って言ってたり、リンゴは「ジョン亡き後、彼をこんなにも身近に感じたことは一度もなかった」って言ってたり。
3人の『またジョンと一緒に曲を作り上げられること』に対する喜びと興奮が伝わってきました。
僕たちはまったく違った個性の集まりだった
4人集まると特別な化学反応が起こった
彼らと出会い強い絆で一緒に音楽を作れてなんて幸せだったんだろう
とポールは語っていますが、「ビートルズと出会って、彼らの奇跡的な人間関係を見られて、素晴らしい音楽を聴くことができて、私はなんて幸せなんだろう」って思います。
アンソロジー・プロジェクトの時に、リンゴが「ジョンお湯沸かしてよ」ってヤカンを持ち上げてる映像も使われていて、ぐっときてしまいました。
いい具合に60年代のビートルズ・イエローサブマリンのアニメーション・ソロ期の各メンバーのホームビデオ・アンソロジーの映像・そして今のポール・リンゴの姿が組み合わされていて、ポールとリンゴが今も元気にミュージシャンをしてくれていることに改めて感謝の気持ちが湧いてきました。
そして私の中で、ピーター・ジャクソン監督とプロデューサーのジャイルズ・マーティンは【5人目のビートルズ】に完全にリストアップされました。
このドキュメンタリーは、なぜピーター・ジャクソン監督に制作を依頼しなかったんだろう?とちょっと不思議に思ったりもしていましたが、その理由は、ドキュメンタリーを見てよく分かりました。
ピーター・ジャクソン監督が "The BEATLES: Get Back" の監督をしてくれたからこそ 音声を分離する"MAL" の技術が生まれ、それがあったからこそ、ポールの "Now And Then" を完成させたいという悲願が達成されました。
そしてきっと誰もが 二の足を踏むような、ビートルズの最後の4人の楽曲の MVを作るという非常にプレッシャーの大きい仕事も引き受けてくれたピーター・ジャクソン監督。
彼はまさに、この "Now And Then" のプロジェクトにおいて必要不可欠な人間で、ドキュメンタリーに出演しなくてはならない側の人物です。
だから、彼が脚本と監督を務めるわけにはいかなかったんだと思います。
今回オリヴァー・マレー監督は、ビートルズと ”Now And Then” の歴史を客観的な視点でまとめ、この楽曲がどんなストーリーを持ち、なぜ今リリースされるのか、コンパクトにとてもわかり易くまとめてくれています。
ドキュメンタリーを見て、特にジョージがこの楽曲のリリースに反対していた理由というのは、完全に『デモテープのコンディションの悪さ』と『それを正す技術が当時なかったこと』なんだなと理解できました。
"Now And Then" に関わった全ての人のビートルズへの愛と責任感と叡智と労力がなければ、私たちは今この楽曲を耳にすることができてなかったんだと思うと本当に感謝しかありません。
そんな気持ちが湧いてくるドキュメンタリーでした。
このドキュメンタリーは、全世界のテレビでも放送されることになっていて、日本ではまだ時間は明らかになっていませんが、11/18(土)に日本テレビで放送予定です。
新曲 "Now And Then"
そして、そのビートルズのラスト・ソング "Now And Then”.
制作の経緯
ジョンが1977年(78年説もあり)にデモテープを作り、1994年にヨーコからポールジョージリンゴの手に渡り、プロデューサーにジェフ・リンを迎え一度はアンソロジー・プロジェクトで "Free As A Bird"と"Real Love" に続く3曲目のビートルズの新曲として発表しようとしていたのが、この "Now And Then" でした。
その元音源の酷いノイズを理由に一度は頓挫した "Now And Then" が、ビートルズを愛しまくっているピーター・ジャクソン監督が製作した "Get Back" のオーディオチームによって開発されたマシンランニング技術MALにより、およそ40年の時を超えてビートルズの新曲としてこの度爆誕しました。
クレジット
作曲したジョンは、ボーカルのみでの参加です。
お騒がせマジシャンのペン・ジレットの話から、なんとなくジョンのピアノも採用されているのかな?と思っていましたが、ピアノはポールが担当しています。
“Now And Then – The Last Beatles Song” のドキュメンタリーの最後で、1995年頃のアンソロジー・プロジェクトでスリートルズが "Now And Then" に取り組んでた時の会話かな?という内容がちらっと聞こえてきますが、その中でポールが「オリジナルデモで彼がピアノをどんな感じで弾いてるか、もうちょっと聞かせて」みたいに言ってるところがあって、ポールはジョンの演奏に寄せてピアノを弾いたのかなと想像できて、かなり胸熱です。
ジョンの歌に、ジョージのギター。加えて、ポールとリンゴは個別に2022年に新たにレコーディングを行っています。
プロデューサーは、ポール・マッカートニーと、ジャイルズ・マーティン。ここにポールの名前が入ってくるのが新鮮です。
プロデューサーとしてのポールはとても仕事が早く、ジャイルズによると
『曲を聴いた時、彼はすでに曲構成を変更して新たなパートを書き、ギターソロを録り、ボーカルもギターもほぼ仕上げていた。僕は彼と一緒に作業しながら少し手を加えただけ』なんだそうです。
そんなポールからは、四半世紀の間この "Now And Then" の完成に向けて あたため続けてきた並々ならぬ熱意を感じます。
ジャイルズは "Now And Then" の制作に取り掛かるにあたって、1995年にレコーディングしていた音源から、例えば『ストリングスを入れるからシンセサイザーを外す』など、「必要なものを残し不要なものを削除した」とも話しています。
またジャイルズはローリングストーン誌のインタビューで、「リンゴはリンゴであるべきで、いつものようにドラムを叩くべきだ。彼はクリックなしでドラムを叩き、それはリンゴの音以外の何者でもなかった。代役はいないんだよ」と語っていますが本当にその通りで、ドキュメンタリーを見た時も、リンゴが叩くスネアの音をきくだけで「あ、ビートルズのサウンドが始まる!」と感じました。
c/w Love Me Do 2023 Mix
"Now And Then" の両A面カップリングのビートルズの1962年のデビュー曲 “Love Me Do“ のドラムも、もちろんリンゴのバージョンです!
"Love Me Do -2023Mix" は、ジョンとポールががっつり一緒に歌ってくれていて嬉しくなります。
ちょっと"Love Me Do" の本来の黒っぽさが薄まっていて、ややこぎれいなお行儀の良い "Love Me Do" に聞こえます。
個人的には、もう少しギターの音が聴きたいなって思いました。
この辺りはまた赤盤がリリースした時に聴き込みたいと思います。
レコーディングと素材
"Now And Then" のジョンの歌声は、デモテープからクリスタルクリーンな状態で取り出してきただけで、なんの加工も編集も必要とせず、楽曲もジャイルズが言うように『中途半端に今っぽい感じだったりトリビュート風にする必要もありません』でした。
THIS IS IT.
4人は時空を超えてレコーディングしているけど、これこそがビートルズだって思わせてくれます。
ジャイルズのインタビューによると、ポールは1995年のジョージのギターサウンドをとても大事にしていて、またジャイルズも、「ジョージが90年代に残してくれていたギターとコーラスの素材がなければこの楽曲は完成しなかった」と話しています。
ポールはベースの他に、ジョージへのトリビュートの気持ちを込めてスライドギターも弾いています。
ビートルズのスライドギターといえば "Free As a Bird".
アンソロジーから実は脈々と続いていたビートルズの歴史を感じることができます。
ポールは他にもピアノ、エレクトリックハープシコード、シェイカー、そしてストリングスのアレンジもジャイルズと共に行っていて、八面六臂の活躍を見せています。
リンゴもドラム、タンバリン、シェイカーを演奏しています。
4人のバックコーラス
そして大注目なのは、ジョンポールジョージ、リンゴのバッキングコーラスが聴けるということです。
私がビートルズの音楽を愛する大きな理由のひとつが彼らの素晴らしいコーラスワークなんですが、今回ジャイルズマーティンは「ビートルズならここで ah- とか Ooo- とかコーラスを入れるだろう」と考え、新たにジョン・ジョージの声を録ることができない状況下で、ある秘策を講じました。
それは、過去のビートルズの楽曲の中から "Now And Then" に合うキーのコーラスを持ってきて重ねたのです。
使われている楽曲は、“Because,” “Here, There & Everywhere” そして ”Eleanor Rigby” です。
どこでどの楽曲のコーラスが使われているのか聞き当てるのも楽しみのひとつになりそうです。
最初ポールはこのジャイルズの提案に難色を示したようですが、かつてジャイルズが父ジョージ・マーティンと一緒に "LOVE" のアルバム製作の時に培った技術を使うことで、2023年にビートリーな美しい三声コーラスを再び聴くことが叶いました。
さらに、ポールとリンゴが去年新たに録音したコーラスが、それらのコーラスを引き立てているようです。
ストリングス
そして、ジャイルズが「父のやり方をできる限り真似ようとした」というストリングスもとても印象的です。
この楽曲の雰囲気にとても合っていますし、私たちに気持ちに寄り添い、色々なことに思いを馳せる手助けをしてくれるような気がします。
このストリングスのレコーディングに関して、ポールは「これがビートルズの曲だということは隠して自分の曲だと説明」して演奏してもらったそうです。
所感
私は既に公になっているらしいジョンのバージョンの "Now And Then" を
今日まで聴かないできたので、とても新鮮にこのビートルズの新しい楽曲を聴くことができました。
とにかくポールのベースが優しくて、ポールがジョンと歌っていて、多分、ジョンと一緒に過ごしていた時にはお互い言えなかった "I love you" も "I miss you" も一緒に口にしています。
あらゆるところにポールの切なさが漂っています。
そしてリンゴはちゃんとリンゴで、後ろから支えてくれてて安心します。
ジョンが歌う切なすぎる歌詞のタイミングで聞こえてくるジョージのギター。
ストリングスも、1960年代のビートルズのコーラスも、全ての音が必要不可欠で過不足なく収められているように感じます。
MALで抽出されたジョンの声がほんとうに自然でそれも驚くけど、ジョンはこれを、テレビも点いていてニューヨークの街の雑音も聞こえてくるような環境でホームレコーディングしてたんだって想像すると、ジョン・レノンの声の素晴らしさと歌のうまさに改めて驚かされます。
やっぱりわたしはこの声が好きでたまらないなって思わされます。
ジョンの書く歌詞
そして歌詞がとてつもなく切ないです。
サーカスから降りて、自分と静かに向き合う時間が増えた、すこし歳を重ねたジョンの "In My Life" のその後って感じにも聞こえました。
リリース前のインタビューの中でジャイルズ・マーティンは、「この曲は、ジョンの、ポールや他のビートルズのメンバーに対するラブソングだ」と語っていました。
「ポールがどう思っているかはわからないけど」とも言っていましたが、きっとポールもこのテープを手にして楽曲を聴いた時、ジョンの想いが強く胸に響き、突き刺さったからこそずっとこの楽曲をいつか形にしたいと思い続け、今回リリースまでもってきたのではないかと思います。
本当に胸が締め付けられる歌詞です。
(私が書き出したものなので間違っていたらすみません。)
これがジョンからポールジョージリンゴへの言葉だったとして、でも今このタイミングでリリースされて読むと、ポールジョージリンゴからジョンへのラブソングにも思えますし、ジョンとジョージを失ったポールとリンゴや私たちファンの声のようにも思えます。
ジョンはビートルズ時代、特に後半は普遍的でありながらも敢えて意味不明だったり色んな風に解釈できそうな詞を書くこともありましたが、解散後、ハウスハズバンド生活を経て音楽活動を休止したのちに戻ってきた時のジョンの言葉は、とてもストレートで、歌を送る誰かや聴いている私たちに語りかけるようなものでした。
この "Now And Then" もそんな雰囲気の言葉が並んでいて、これが本当にジョンからポールへの気持ちだとしたら、そしてそれをポール自身が感じ取っていたとしたら、どんなに嬉しくて愛しくて寂しくて切ないんだろうと到底想像が及ばない気がします。
でも、きっと世界中のビートルズファンが、"Now And Then" を聴いてポールやリンゴとほんの少し同じ類の気持ちを抱けてるんじゃないかと思うと、ビートルズの最後の新曲のリリースに立ち会えて本当に良かったなという気持ちが湧き上がってきます。
まとめ・今後のリリース
以上、色々詰め込みましたが、"Now And Then" のドキュメンタリーと楽曲の公開を受けて湧き上がった思いをまとめてみました。
また少し時間が経つと、抱く感想や感情も変わってくるかもしれません。
実はジャイルズのお母さん、つまりジョージマーティンの妻のジュディ・マーティンさんが、先月他界されました。
ジャイルズはインタビューの中でそのことにも触れていて、彼の母親の埋葬の日が、"Now And Then" のレコードのリリースの日なんだと明かしています。
彼にとって "Now And Then" がこの世に出ることは、とても個人的な意味合いも含むことになりました。
世界が注目するビートルズの新しい、そして最後となる楽曲のプロモーションをこなしながら、母親との別れを受け止めなければいけない。
ジャイルズは「人生において大切なことって何なのかな?」と語り、続けて
「だからこのレコードを聴いて、愛する人のことを考えてほしい。それが僕の願いなんだ。」と思いを伝えています。
今年2023年は音楽界だけでも多くの偉大な方々を失いましたし、世界各地で紛争が勃発し、落ち着かない日々が続いています。
私たちの未来はどちらかというと不安定に見え、毎日降りかかってくる出来事も話題も明るい事ばかりではありません。
ビートルズはこれまでも、ずっと愛を歌ってきました。
そして、4人が一緒に生み出す最後のこの "Now And Then" でも、変わらず愛を伝えてくれています。
それが、ビートルズが、解散から半世紀以上経っても未だにに世界中で愛され必要とされている理由なんだと思います。
この後まだまだビートルズからのギフトは続きます。
"Now And Then" の各種フォーマット、そしてピータージャクソン監督による短編映画のようなミュージックビデオ。私たちはそれを見て、きっとまたビートルズを一層好きになるでしょう。
さらに11/10には、ジャイルズ・マーティンの渾身の最新ミックスによる赤盤・青盤のリリースが待っています。
こちらもとても楽しみです!!
10/26に情報が解禁されてから、限定版が出てきたり、CDが出てきたり、最新情報をキャッチするのに忙しくて仕方ありませんが、こんなビートルズ祭りももしかしたら最後かもしれない…と思うと全てに愛しさとありがたみを感じています。
皆様もどうぞ、Now and Then and Forever なビートルズからの最新の贈り物をゆっくりじっくり堪能してください!
▼この記事のYouTube版もあります。🐈
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