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ビートルズ2024年総括と2025年への期待

Merry X’mas!
2024年も暮れに暮れてきました。
ビートルズは半世紀以上前にとっくに解散していますが、今日もあたかも絶賛活動中のバンドかのように書いていきたいと思います。

今回は2024年最後のビー記事になりますので、ここ最近のビートルズ関連情報の他、ドキュメンタリー 『Beatles ’64(ビートルズ '64)』 と映画 『No ハンブルク No ビートルズ』 という2本の新作映像作品の紹介、そして2025年に期待できそうなビートルズニュースをざっくりまとめたいと思います。

ツートルズの共演

(※ ツートルズというのは完全なる My造語です。許して。)

今月(2024年12月)、日本からも少なくないファンの方が渡英された様子ですが、ポール・マッカートニーのツアー “Got Back Tour - 2024” で、遂にポールとリンゴ(ツートルズ)の共演、そしてポールと50年間失われていた元祖ヘフナーベースの共演が見られました。

12月19日のロンドンO2アリーナで行われた今回のツアーの最終日。
ゲストとして登場したのは我らがリンゴ・スター。
ものすごい歓声の中 “Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band” と “Helter Skelter”をポールと一緒に演奏しました。

ポール・マッカートニー公式インスタより

ファンの方のYouTubeで全貌を拝見しましたが、録画で見ていても息をするのを忘れてしまう程でしたので、現地で目撃した方の自律神経や血圧はどんなことになっていたのかと心配してしまいます。
80代のお二人も、自分たちが20代の頃に演奏した音楽をステージで大勢の観客の前で演奏し大合唱されるなんて、きっと嬉しかったはずと身勝手な妄想をしています。
いつまでもビートルズがミラクルで伝説的な存在であり続けている要因のひとつは、確実にポールとリンゴのお陰なんだろうなという気持ちを強くしました。

GET BACK 元祖ヘフナー!

そしてこのライブのもうひとつの大きなビートルズ的な見どころは、ロニー・ウッドを迎えてのシーンです。

ポール・マッカートニー公式インスタ

ポールはここで、1972年に盗まれてしまったものの、今年晴れて再会を果たしたオリジナルのヘフナーベースを手に、ピーター・ジャクソン監督のドキュメンタリー ”The Beatles: Get Back” の1969年のビートルズの映像をバックに熱く “Get Back” のパフォーマンスを行ないました。
ロニーのギターソロももちろん素晴らしいですし、月並みな言葉しか出てきませんが、「ほんとすごい演出だな!!」と思いました。
スーパーエンタメポールマンです。

ビートルズ '64

そんな奇跡の現役ミュージシャンのポールとリンゴが在籍していたのが奇跡のバンドビートルズですが、今年は新しいドキュメタリー "Beatles ’64" 1129日からディズニープラスで配信されています。

ビートルズ '64 - 2024年 Disney Plus

1964年といえばビートルズがアメリカを初めて訪れた年ですが、2024年はそのアメリカ初上陸から60周年の記念の年ということで今年の発表となったようです。
今回ポールやリンゴと共に筆頭プロデューサーとして名を連ねているのは
George Harrison - Living in the Material World(以下、“Material World” )" のドキュメンタリーを制作したマーティン・スコセッシです。
“Material World” の制作チームは、作業を進める中でアップルのスタッフと関係を深め、ビートルズに関する膨大なフィルムの存在を知り、映像や音響の修復を進めるうちにアメリカ上陸60周年の節目の年に公開することになったそうで、“Material World” 公開の2011年くらいからぼんやり計画があったの…?とその長い構想期間にちょっと驚いています。
ということは、今後もそんな風に10年15年越しに温めていたプロジェクトが
どんどん表に出てくるんじゃないの??という期待も湧き上がってきます。

さて、その ”Beatles ’64” ですが、アメリカのドキュメンタリー映画作家のメイズルズ兄弟によって撮影された貴重な映像が使われた完全新作ドキュメンタリーという触れ込みでしたが、そういった舞台裏の映像もありつつ、ポール写真展 “Eyes of the Storm” の素材も結構登場したり、これまで “Material World” や “The Beatles Anthology” で見たことのある映像も使われており、特にNYやワシントンでの演奏シーンは新鮮味は薄かったかもしれません。

しかし、比較にならないほど音も映像も美しく生まれ変わっており、「あ、見たことある映像だな」とは思っても、私はそこまで気になりませんでした。
ワシントンコロシアムでの演奏はジャイルズ・マーティンの手によって本当に迫力のあるサウンドになっていて、1964年のビートルズのエネルギーと勢いを体感することができました。

新しい素材ということに関しては、ポールとリンゴは2023年くらいかな?と思われるインタビュー映像も使われていますが、ジョンとジョージは当然過去のインタビュー映像しかなく、それについては少し寂しさを感じました。

1964年。ビートルズがアメリカに初上陸してからイギリスへ帰国するまでの、特に舞台裏とアメリカ社会、そして彼らから自由と光を受け取った人たちの物語。
中でも特にフィーチャーされていたのがジェイミー・バーンスタインさんとジョー・クイーナンさんという2人のライターでした。

ジェイミーさんはジョージに恋をし、後にジョンに寝返ったという非常に親近感を抱く女性ですが、どうやらレナード・バーンスタイン氏の娘さんのようで、その関係でバーンスタインの当時のビートルズ評も聞くことができました。彼は、

多くの親たちは彼らの音楽を避け禁止しようとした。
騒々しくて意味不明で不道徳という理由で。
でも私は音楽家としても父親としても禁止しない。
この音楽は大人にも大事な何かを教える。
現実から目を背けないほうがいい。

『ビートルズ '64』 レナード・バーンスタインのことば

と語っており、やはり偉大な芸術家というのはいつの時代も非常に寛容で柔軟なんだなと感じました。

中盤で「世間のビートルズについての反応を知りたい!」と取材を試みているファンの女の子二人に対し、自分はビートルズのマネージャー(後に兄弟と言い換え)だと嘯き「知性のない若者が快楽を求めている」などと無礼で高圧的な態度を押し付ける大人も登場していましたが、『よく分からない』ことに対峙する姿勢の対比が見事で、自分も歳を重ね脳が硬直するようになってもバーンスタインのようで有りたいと思いました。

そして、一方のジョーさん(過去にAbbey Roadオマージュの素敵なカバーの著書も出版されている!)は、父親にビートルズを禁止され、これまた寛大なおじの家でビートルズを聴いていたそうです。
彼がビートルズへの想いを語るシーンはとてもエモーショナルで何度かもらい泣きしそうでした。
彼が口にした『突然現れたビートルズが完全な暗闇に光を灯してくれた』という言葉がとても印象に残っています。

ケネディ大統領の暗殺で喪に服していたアメリカにとって、『それでも人生は続いていくし、悲しみから立ち上がるためにビートルズみたいなものが必要だったのかな』と現代のポールも振り返っています。

Everything’s all right
Have some fun tonight

ロング・トール・サリー

とポールがシャウトする “Long Tall Sally”の演奏が一層胸にブッ刺さりました。

1964年と現代のアメリカ社会やファンの様子は、ワイルドでラウドで過剰に感情的な雰囲気さえ感じさせるのですが、ビートルズのライブでの演奏シーンがその熱狂に説得力を持たせるという、なんとも痺れる構成でした。

“Beatles ’64” の中のビートルズは常にカメラが回っているのでもちろん完全オフなわけではありませんが、やや裏側な感じの表情も見せてくれます。
私の印象では、ジョージは無邪気・ポールはマイペース・リンゴは場を和ますムードメイカー・ジョンは幾度もアンニュイな表情を見せ、しかし求められるときちんと機嫌の良い笑顔を作っていて、「頑張ってるんやね…」と親戚のおばちゃんのような気持ちになりました🥺お疲れ。

個人的に一番笑ったのは、現代のリンゴがアメリカのDJ マレー・ザ・Kのモノマネをするところです。
彼は存在自体が THE アメリカ!という感じで、メンバーからも「なんでか知らんけどツアーにずっと同行しとった」などと回顧されていて、その図々しさと胡散臭さに口元が緩みます。

他にも、ビートルズのブラックミュージックへのリスペクトや大人と若者の世代間の壁についてなど、例えば去年放送されたNHKの『映像の世紀 バタフライエフェクト「ビートルズの革命」』と似たような切り口でビートルズが当時のアメリカ社会へもたらしたものを語る要素も見られました。

好きなシーンのひとつは、ジュリアード音楽院でクラシックを学んでいるという女の子が、「ロックンロールは好きじゃないけどビートルズは最高よ!」と言ってイタリアのアリアのスコアを抱えてビートルズを追いかけていく場面です。
ビートルズを好きな気持ちは理屈じゃない!ということを体現していてとても美しいなと思いました。

随分昔に古本屋で買ったビートルズの本で「4人がホテルで使ったシーツが細かくカットして売られていた」というようなエピソードを読んだことがあるのですが、当時小学生の私は「どういうこと?」と理解に苦しんだ記憶があります。
今回、ドキュメンタリーの中に「ビートルズが使ったタオルの切れ端を1ドルか2ドルで購入した」と証言されているファンの方が登場し、冗談みたいな話だと思ってたけど嘘でも誇張でもなく本当のことだったんだ!と数十年越しに震えました。

何度も見たことのあるような映像もいくつかあり、演奏シーンももっと長尺で欲しかったという感想もありますが、とにかく音と映像が綺麗で視聴欲が大いにそそられ、2024年に新作ドキュメンタリーを作ってくれたことには感謝しかありません。
これからビートルズを知る人たちが、「たしかに今見てもこのバンドはめちゃくちゃ魅力的だ!」と思ってもらえる素材が増えることは、ビートルズ妄想家の私にとっては喜びでしかありません。

ディズニープラスのビートルズ関連作品ラインナップ

ディズニープラスには『ビートルズ』というカテゴリが誕生していて、PJ監督の "Get Back" やマイケル・リンゼイ=ホッグ監督の "Let It Be" 、"マッカートニー3, 2, 1 " などビートルズ関連のコンテンツがいくつか並んでいます。
今後もどんどん増えていくといいなと願っています。

Noハンブルク Noビートルズ

“Beatles ’64”のエンディングは、ワシントンコロシアムでジョージがリードボーカルを取る “Roll Over Beethoven” のライブ映像で幕を閉じます。
そして、その “Roll Over Beethoven” で幕を開けるのが、今年2024年のビートルズ新作映画『Noハンブルク Noビートルズ』です。

No ハンブルク No ビートルズ - 2024年

現在もいくつかの劇場で公開中なのでぜひサイトをチェックしてみていただきたいのですが、この映画は個人的にとてもおすすめです。

「ビートルズはデビュー前にハンブルクでどんな演奏活動をしてきたのか?」というのを、第二次世界大戦後のリバプールとハンブルクの社会情勢、当時ハンブルクやリバプールでビートルズを間近で見ていた人たちの証言、そして本人たちがハンブルクについて語る音声を使って時系列に沿ってかなり丁寧にさらってくれています。

ビートルズのハンブルク時代総復習!的な内容に加え、当時の彼らの活動や様子について独自のエピソードを語れる証言者の新しいインタビューをいくつも含んでいるという相当見応えのある内容でありながら、時間は60分程度という短さで非常にテンポが良く、言い方を変えると、ほんの一瞬違うことを考えていたら置いていかれるくらいのスピード感です。
私は映画館で2回鑑賞しましたが、2回目にしてやっと追いつけたような気がします。
パンフレットの内容もかなりボリューミーなので、鑑賞された方は購入をおすすめします。

ハンブルク時代はビートルズが有名になる前なので音源もビジュアル素材もほぼ残っておらず、映画は最近よく見る感じの “当時のファンや関係者のインタビューが大部分を占める構成” ですが、これまでハンブルク時代についてはそこまで掘り下げられていなかったこともあってか、トニー・シェリダンと結婚していた女性や、リバプールに戻ったビートルズがレザーからスーツに着替えた公演やドラマーがピートからリンゴに変わった初めての公演に立ち会い「Pete forever! Ringo never! 」と叫んだというファンの証言は、当時の若いビートルズの様子を生き生きと蘇らせてくれます。

私が一番興奮したのはハンブルクのクラブの用心棒的存在でビートルズとも仲の良かったとされるホルスト・ファッシャーのインタビューが見られたことです。
これまで書籍では何度もその名を目にすることがありましたが、こんな人だったんだ!という感動がありました。
私の脳内にはこれまで勝手にめちゃ強面で巨大な暴れ馬みたいな人が居座っていましたが、ホルスト氏は想像していたよりずっと素敵な紳士でした。

もちろん、ピート・ベストやイグジスのユルゲン・フォルマー、クラウス・フォアマン、在りし日のアストリッド・キルヒヘアやアラン・ウイリアムズ、そしてスチュアート・サトクリフ脱退後にビートルズのステージを数回務めたチャス・ニュービー、ビートルズをアラン・ウイリアムズと共にハンブルクへ連れて行ったロード・ウッドバイン卿の娘キャロル・フィリップス、リンゴが抜けた後ハリケーンズのドラマーを務めたギブソン・ケンプ、更ににはハンブルクのスタークラブで共演したリトル・リチャードのインタビュー映像まであり、様々な角度から当時のビートルズの姿を浮き彫りにしていきます。

クラウスの描いた絵や、当時のビートルズを思わせるような若者の演奏シーンを使用するなど映像にも動きがあり、ひととおり書籍を読むなどしてハンブルク時代のビートルズの様子をご存知の方でも十分楽しめる内容になっていると思います。

当時、ハンブルクのクラブのオーナーたちは若者に何か新しい娯楽を提供したいと考え、その解がロックであると思い至りました。
本場アメリカからバンドを呼ぶにはお金がかかりますが、どうやらリバプールにアメリカンなロックをやってるバンドが結構いるらしいと聞きつけ、アーティストを手配するためにイギリスに向かったということも説明されました。
ビートルズに限らずリバプールのバンドがなぜハンブルクで求められていたのか?というのは長年ぼんやりとした謎だったのですが、今回その解も得ることができとてもスッキリしています。

ロジャー・アプルトン監督は、前作の『ジョン・レノン 音楽で世界を変えた男の真実』でもたくさんの関係者の証言を撮っていましたが、今回もあらゆる方面の人物のインタビューを集めており、ビートルズ史の史料としても非常に重要な作品になるのではないかと思います。

2024年ビートルズ総括

2024年は、60年前の1964年のビートルズ色の濃い一年だった!という印象で暮れていきそうです。

✔︎ ポール・マッカートニー写真展 - Eyes Of The Storm -
✔︎ ザ・ビートルズ:1964 US アルバムズ・イン・モノ
  - THE BEATLES : 1964 US ALBUMS IN MONO-
✔︎  ドキュメンタリー "Beatles '64"

今年は映画 "A Hard Day's Night" も久しぶりにねっとりと鑑賞し直し、改めて1964年のビートルズの素晴らしさと美しさに感動した年でもありました。

そして今、自らのnoteを振り返り、 "I’m Only Sleeping" のMVが第66回グラミー賞【Best Music Video】を受賞したのも、 "Band On The Run 50th Anniversary Edition" がリリースされたのも、" 映画 "The Beatles :Let It Be" のレストア も今年の出来事だったのか!と自分の記憶力の乏しさと、2024年もどれだけニュースがテンコ盛りだったんだビートルズは…と驚愕しています。
他にもちょこちょこ何か発表がある度に「ぎゃー!」と独りごちて来たことがあったはずです。
ガチャガチャも楽しかった…。
しみじみとビートルズに感謝して、2024年も暮れていこうとしています。

2025年ビートルズ予想

最後に2025年のビートルズに期待することを少しまとめます。

数日前に読売新聞の取材にジョージの息子ダニー・ハリスンが答えたという記事をお読みになった方もいらっしゃるかもしれません。
なんでも、ダニーはビートルズのラストソング “Now And Then” と同じようにAIの音声抽出技術を使ってクリーンになった “Free as a Bird” と “Real Love” を聴いたという内容(ジョンの息子ショーン・レノンも聴いたそう)で、それってつまり、スリートルズ時代の2曲の新曲の再リリースが近い将来あるってことなのかな??と興奮しています。

来年は “Free as a Bird” と “Anthology 1” が発売された1995年からちょうど30年の記念の年でもあり、なんとなく噂が聞こえてきていたアンソロジー関連の再販も現実身を帯びてきたのかな?とワクワクしています。

そんな嬉しい横槍も気にはなりますが、2025年はなんといってもやはり
お預けにされているアルバム “Rubber Soul” のデミックスが世に出てきてくれるんじゃないかと期待しています。
ラバソもリリースからちょうど60周年になりますし、それを言うなら “Help!”もだろと言われそうですが、とりあえずラバソの再販は硬いんじゃないかと思います。

そんなこんなで来年もまったく目が離せない奇跡のバンドビートルズですが、心と体と銭の準備をしっかりとしてビートリーな2025年を迎えましょう!

▼ YouTube 動画ver. はこちらから。


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MiHo O'Hara / Mihowell
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