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つまり、そういうことだ②

これは実際にあった話だ。
ある国でうつ病の男が脳外科手術を受けた。
脳に電極を埋め込み、脳の電気信号に影響を与え、分泌するホルモンのバランスを変えてうつ病を治すという試みだ。
手術を終えた男は、うつっぽくなったら電極のスイッチを押すように言われた。
たしかにスイッチを入れると気持ちが明るくなる。
男は落ち込むたびにスイッチを入れ、電気ショックでホルモン分泌を促し、気分良くハツラツと過ごした。
ところが、ある日を境にそのスイッチを押しても気分が改善されなくなった。
医師が再び開頭手術し、電極を調べたところ、原因が判明した。
電池が切れていたのだ。
電池を交換したら、たちどころに気分を上げるスイッチの効果は復活した。

つまり、男の気分や感情とは、電気信号とホルモンバランスの具合のことだった。
考えや精神といったものは、電気とホルモンによって起こった反応に、「自分(だけ)が納得できる理由」をつけているだけのものなのだ。
自分の都合に合うように、脳の反応を処理する方程式。パターン。
それをおまえは、自分自身だと信じ込んでいる。

おまえの考えは、おまえではない。
おまえは考える。
しかし考えた結論や思考回路は、おまえではない。
調理方法やルーティンワークや電車の乗り換え経路がおまえでないように。
おまえは、おまえでしかないんだ。

意味が分からないかもしれない。
それでも興味があるなら、つづきを聴いてくれ。

(つづく)

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