サラヤ・アブディーン(アブディーン宮殿)ー全ては黒海地方出身美人姉妹から始まる
いつも世界中の素晴らしい音楽や書物、プロ並みの手料理などNOTEでご紹介されている島村徹郎氏が「エジプトの輪舞(ロンド)」を記事に取り上げてくださいました。優しいお方です。そんな慈悲深い島村氏にはオスマン帝国からはベイの称号と、エジプト王国からはパシャ、イギリスからも特別にナイトの称号を差し上げましょう。
さて、トップ画像はMBCエジプトが2014年に製作した「サラヤ・アブディーン(アブディーン(の)宮殿)」のドラマからです。
ストーリーは「エジプトの輪舞」のファルーク国王の祖父だったイスマイール副王時代(1800年代)で、アブディーン宮殿の中で巻き起こる正妻たちと側室、奴隷女たちとの「愛と憎しみ」の物語です。どうです?つまらなさそうでしょう?
しかし、アラブ最大のスケールのヒストリカルドラマだそうで、総制作費は2,000万米ドルで、250人以上のアラブ人俳優(ざっと名前を見ると、エジプト人俳優が大半。イスマイール副王役はシリア人俳優です)が出演しています。脚本はベテランのクウェート人女性ライター。でも大口叩きますが、脚本は私に任せて欲しかったです🤣
① ロケーション空間が狭い
ドラマの何がいけないのかというと、タイトルそのまんまなのですが、画像の大半が宮殿の中だけで飽きる。しかも奥行きをあまり感じない。
②フランス語が出てこない
仕方がないのですが、実際はイスマイールは母親とだけはオスマン・トルコ語(現代トルコ語とは別物です)を話したものの、あとは一切フランス語。アラビア語は話せませんでした。そして身分の高い人々もフランス語で会話をしていました。
ところがドラマではALLエジプト語です。本当に仕方ないのですが、エジプト訛りのアラビア語で宮殿の華麗な世界を描かれても、バタ臭く感じます。
関西の方には大変失礼なのですが、河内弁版皇室ドラマを見させられている感覚を覚えます。
それに正室がイスマイール副王との会話で「マンマ・ミーア!」て言うとか、思わず音量を上げて巻き戻ししちゃいました。
③ 小道具がめちゃくちゃ
イスマイール副王はかつてのベルサイユ宮殿の宮殿文化、しきたりも含め使用人の服装も何もかもベルサイユを真似ていました。それがドラマでは全然ない、
宮殿の昼餐会、晩餐会の食器にも王冠のマーク&イスマイールの頭文字「I」が必ず入っていましたが、お茶を飲むシーンでもカップに「I」がない。
それからイスマイール副王の寝室にハンハリーリ市場で売られているショボい香水瓶を飾るのもいかなるものか?
1860年頃はまだ存在していなかったクォーツ時計が映っているとか、、、。
④ 「国王陛下」
ドラマでイスマイール副王が人々に自分のことを「ケディブ(副王)陛下」と呼ばせていますが、実際は「国王陛下」と呼ばせていました。
エジプトはまだ独立した王国ではなく、オスマン帝国の州の一つだったので、本当は「国王陛下」の称号はありえないのですが、アブディーン宮殿の中だけは「国王陛下」で通していました。少なくとも「副王陛下」はありえません。
⑤主役の顔(毛)が生理的に受け付けない
主役のイスマイール副王↑を演じた男優はシリア人のクサイ・クーリで、大ベテランで多くの賞をとっています。法学部も出ており、アメリカ国籍を取得後、アメリカに住んでいます。
このドラマでは、頭の髪と口髭と顎髭が全部合体しているのが私はダメでした。
実物に似せたのはよおく分かりますが、解せないのは女優は実在した女性たちよりずっと美人を起用しているのに、、、。
ドラマの監督とPDの名前をチェックしたらみんな男性でした。分かっていませんね、女性に好まれる容姿を主役に持ってこないと、女性の視聴率が取れない法則を優先してほしかったです。
⑤時代考証があかん
服装の時代考証がだめ。気になったのが、女優たちは全員西洋ドレスを着ていますが、手の置きどころ、ポーズがだらしない。お辞儀の仕方も酷い。見苦しいお辞儀の仕方ばかりです。なぜBBCの歴史ドラマの専門家を呼ばなかった?BBCドラマの「高慢と偏見」でも見て勉強して欲しい。
ただし、ムスリムの男たちの祈りシーン(本当にメッカの方角を見て撮影したんだと思います、多分)と女たちのベリーダンスのシーンだけは完璧でございました。
ストーリーが実際の歴史とは大きくかけ離れていること、当時の国際情勢や政治、宗主国のオスマン帝国もフランスも出て来ないのもいいとして、これはやはりMBC TV(本社はサウジ)は資金だけを出してBBCに全部製作を任せるべきだった、
フランス語を話すレバノン人やモロッコ人俳優たちを起用しフランス語でやるべきだった。
それから中国の宮廷(後宮)ドラマの「瓔珞〈エイラク〉」や「宮廷の諍い女」でも先に見て研究すべきだった。中国の後宮ドラマは、正室側室たちの足の引っ張り合いがもっと凝っています。絶対、このドラマの脚本家も見ておくべきでした。(女官を生きたまま火であぶるとか、鍼で血管に毒を注入していくとか)
最低でも時代考証専門家を入れるべきだった。(入れていたのかもしれませんが)
だけど翌年の2015年に「サラヤ・アブディーン」のシーズン2も製作されており、たまげました。
ついでに書きますが、私がもうすぐ仕上げようとしている「エジプトの輪舞」の続編「エジプトの狂想」がまさにドラマ「サラヤ・アブディーン」と多少ダブるのですが🤣、内容はまるで違います。
ちなみになぜ「輪舞(1900年代編)」を先に出して、「狂想(1800年代編)」を後にしたのかと言いますと、私なりのマニアックな「仕掛け」が複数あるからなんです。
ここでもう先に発表します。ドラマ「サラヤ・アブディーン」でも一切触れていない(脚本家も知らなかったと思いますが)
どんでん返しがあるからなんです。それは、
イスマイール副王もエジプト最後の国王ファルークは、ムハンマドアリ王朝の末裔ではなかった!
「輪舞」を読んで下さった方、ひっくり返ると思います。「えっ?どういうこと?さんざんムハンマドアリの子孫って書いていましたよね?」
これをどかーんと持ってきたいがゆえに、「エジプトの輪舞」を先に出して、続編として、(続編だけど過去に時間は遡る。
この手法は「スターウォーズ」「ゴッドファーザー」の真似です、もちろん)過去の物語「エジプトの狂想」を後に回しました。
なお、だから「輪舞」((輪舞=おおぜいが輪になって回りながら踊ること)のタイトルにもしました。
またこのエジプト最後の王朝の王族の「キーパーソンたち」は
黒海地方から連行されたチェルケス人(もしくはヨーロッパ人)の美人姉妹です。
1800年代前半、姉妹はオスマン帝国の首都コンスタンティノープルのハーレムに奴隷として連れて来られ、二人はそれぞれオスマン帝国のスルタンとエジプト州の総督に嫁ぎ、それぞれ将来の跡継ぎを産みます。
息子がスルタン/総督になると、彼女たちは政治に口を挟んできます。そして妹は
エジプトの後継者指名制度を改正
するよう、姉の息子のオスマン帝国スルタンに命令します。
「輪舞」を先に見て「狂想」を後で読むと
「そういうことだったのか!」
となるはずです。(自分でハードルを上げすぎたかも、、、)
「エジプトの狂想」、
最後の修正を頑張っている最中ですが、 「輪舞」を読んでくださった方には特に読んで欲しいです。
もう少しでアップロードできます。読み放題でまたやりますので、どうぞ宜しくお願いします。「エジプトの輪舞」の方も誤字脱字チェック済バージョンを上げています(まだ残っていたら、こっそり教えてくださいm(_ _)m))よければ宜しくお願いします。
(ここまで書いておいて「サラヤ・アブディーン」よりつまらない、と言われたりして、キャッ😱)