台湾食べある記 ①台北・九份
今年の夏休み、私は久しぶりに日本を離れ海外を旅していた。
旅したのは台湾だ。
実は台湾は昨年も訪れており、これでコロナ前から海外旅行は3連続で台湾ということになるが、折からの円安・燃料費の高騰・休みが取れたのがハイシーズン、という事情も重なり欧米などへ向かうことは難しく、なら食事の美味しいところにしよう、ということで3回連続3回目の台湾訪問と相成ったのである。
4泊5日の旅程を立てた。せっかく余裕のあるスケジュールなのだから、行ったことがない街にも行ってみよう、と台北周辺に加えて、南部の街・高雄にも足を延ばすことにした。
予報ではずっと雨マークだったことが気がかりではあったが、ともかく久しぶりのゆったりした旅行に対し、期待は日ごと高まっていった。
そして出発の日、羽田空港へと向かう。
久しぶりの羽田国際線ターミナルは、なぜかもう異国の匂いがする気がした。
沖止めの飛行機に乗り込み、日本を後にする。
帰国予定日に台風の接近予報が出ていることにも一抹の不安を感じながらも、なるようになるだろう、と気にせず機上の人となった。
今回はLCCではなくJALを利用したので機内食も提供された。
メインは1種類のみ、炊き込みご飯的なものだった。
特筆すべきところはなかったが、JAL機内限定だというハーゲンダッツは美味しかった。
そして2時間半のフライトを終え、降り立った台北・松山空港は予報に反して晴れ間がのぞいていた。
蒸し暑い日本を離れて快適な海外へ、と言いたいところだが、日本よりも南にある台湾である。蒸し暑さは同等かそれ以上のものがあった。
さて、台湾に到着したら真っ先にやるべきことがくじ引きである。
訪台観光客向けにキャンペーンが開催されており、事前に登録しておくことで、空港にて5,000台湾ドル(約22,000円)が当たるくじ引きを引くことができる。
旅の軍資金に最適なキャンペーンだ。この旅の景気を占うにもちょうどいい。
早速やってみた。
くじ引きは、タブレットを操作して画面上から落ちてくる複数のコインのうちのどれか一つを選択する、という形式のものだ。
事前にYouTubeで旅行情報をチェックしていた際に、くじの必勝法という動画を見ていた私は、その必勝法を試してみた。
それは、落ちてくるコインのうち、一番最初に落ちてくるものを選ぶ、というシンプルなものであった。
なるほど。確かに唐突に複数のコインが降ってくるので、その一番目を選ぶ人はそんなにいないかもしれない。
一番に落ちてきたコインを自信満々にタップした。
無事はずれた。
そりゃそんな単純なわけないよな。そう思って空港を後にした。
早速市内へと向かう。
台北の空港といえば、桃園空港のほうが発着便数が多くメジャーな空港である。一方、今回利用した松山空港は便数こそ少ないものの、アクセスが抜群に良い。
東京でいうところの桃園が成田、松山が羽田、といったところだろう。
MRT(地下鉄)でわずか20分程度で台北市内の中心部である中山に到着した。
台湾の地下鉄は、東京のそれではなく、どこか大阪の地下鉄に近いものを感じるのはなぜだろう。
まだ時刻は昼を過ぎたばかりだ。ホテルに荷物を預けると、早速観光に繰り出すことにした。
最初に訪れたのは龍山寺だ。
龍山寺は1738年に創建創建された、台北で最も古い歴史を持つという寺院である。
しかしここでついに大雨が降り始めてしまった。
雨が降っては仕方がない。早々に切り上げて食事をすることにした。
向かったのは龍山寺にほど近い華西街観光夜市である。
台湾といえば夜市があまりに有名である。
その多くは夜に路上が歩行者天国になって屋台が集まってくるスタイルであるが、この華西街観光夜市は商店街のようなアーケードタイプの夜市になっていて、かつ飲食店は昼間から営業しているものも多い。
つまり雨に降られた昼下がりに最適といえる。
我々が訪れたのは小王煮瓜(Wang’s Broth)という店だ。
1975年に創業したこの店は、もともとは屋台からスタートしたと思われるが、ミシュラン・ビブグルマンにも選出されている名店である。
最近リノベーションされたらしい店内は清潔で、しっかりと腰を落ち着けて食事を楽しむことができる。
入り口付近には見事な茶色に煮込まれた様々な具材が並び、食欲を掻き立ててくれる。茶色いものは大体美味しい。
台湾ではこの手の飲食店の多くは、注文は紙に書くシステムなので、伝わるかどうか、といった心配をせずに落ち着いて選ぶことができるのもうれしいポイント。この店は英語併記だったので特にスムーズに注文できた。
そして飲みものは冷蔵庫から勝手にとっていくスタイルであることが多いのも台湾の大衆的な食堂の特徴だ。
当然選ばれたのは台湾ビールである。
そうしているうち料理もすぐに到着し、早速食事の時間だ。
台湾料理の代表格、魯肉飯、そして煮卵の滷鴨蛋と角煮、口直しのキャベツを注文した。
台湾らしい八角の効いた味付けの料理たちと、すっきりした台湾ビールが絶妙に合っている。
卵と角煮を魯肉飯にのせて豪華アレンジ丼にするのも楽しい。
この台湾版インバウン丼で165台湾ドル(約750円)だから極めて良心的だ。
※実際には全部載せていないのでもっと安い。
あっさりと平らげて、幸先の良い食事を済ませることができた。
その後、少し市内を散策して迎えた夕方前、ツアーの車に乗り込んで向かったのは台湾屈指の人気観光地、九份である。
九份(Jiufen)は、その名が集落の物資をまとめ買いする際に「九世帯分」と言っていたことに由来する、と言われるように元々台湾北部の山間にある小さな村に過ぎなかった。
しかし、1893年に金鉱が発見されるとゴールドラッシュに沸き大いに発展する。金鉱脈が尽きると再び衰退したものの、映画のロケ地となったことや、その古さを残す町並みが注目を集めて、現在では人気観光地として多くの人でにぎわいを取り戻している。
九份から台北までは車で約1時間程度の道のりである。
ツアーを予約していたが、その日申し込んでいたのは我々だけだったようで、貸し切り状態であった。
日も暮れかかったころに九份の街にたどり着く。
九份らしいランタンの並ぶ道を進む。
街の中心部にたどり着くと、ガイドブックでよく見かけるランタンが連なる階段、豎崎路にたどり着く。
九份は夕暮れ時が最も美しいという。そのため、観光客が押し寄せるピークもこの時間帯で、大層混雑をしていた。
人ごみを抜けて階段を上ると、九份を日本で一躍有名にしたであろう建物に行き当たる。
この阿妹茶樓は街がゴールドラッシュに栄えたころの邸宅を利用した茶屋となっており、そのいで立ちが千と千尋の神隠しの湯屋を彷彿とさせることから、九份の名所となっている。
そんなところへピークタイムに訪れた時には、芋を洗うような大渋滞になる。
写真を撮るのも一苦労だが、この阿妹茶樓を特等席で眺められるのが、向かいに位置する海悦楼景観茶坊だ。
こちらも茶屋となっているので、この店に入ってテラス席に陣取れば、中国茶を楽しみながら外の景色を楽しむことができる。
下界の大混雑を横目に、優雅にお茶をいただこう。
夜間にいっぱいのお湯と茶葉が提供されて、淹れ方のレクチャーを受ける。
まずは茶器を湯で温めてから、茶葉を投入してお茶を淹れる。抽出時間はお替りの度に10秒程度伸ばしていく、、、
そんなレクチャーを受けて、実際に入れた中国茶をいただく。
付け合わせの落花生、ドライマンゴー、ドライ梅とともにいただく。
正直、立地の良さで売っている店だと思われるので、絶品!というよりは、まぁこんなもんだよね、という感想であるが、やはりそれを補って有り余る立地の良さである。
日が沈みゆく海岸線も、それに従って徐々に煌びやかになっていく茶屋も、ゆったりと楽しむことができるのが良い。
九份に公共交通機関で訪れようとすると、電車とバスを乗り継ぐことになり、かつピークタイムはバスが混雑するので、ツアーを利用するのが楽ではある。
しかし、夏の時期にツアーを利用すると、たいていのツアーでは日が落ちきる前に九份を後にするスケジュールになっているのがネックなのだ。
そんな中、一般的なものよりも開始時間の遅いツアーを見つけたのでそれに申し込んだことが結果的には功を奏したといえるだろう。
しばらく茶店でのんびりとした後で、人通りの落ち着いた街を歩く。
ただ、あまりにもダラダラしすぎたために多くの店まで閉まってしまったのはここだけの話である。
九份を後に、台北へと戻る。台北に帰り着いた時には時刻は22時に迫っていた。
しかし台湾の夜はここからが本番だろう。
我々は士林でバスを降りて夜市へと向かった。
外食文化の根強い台湾において、街の至る所にあり、ローカルフードが楽しめる夜市は観光の目玉の一つである。
そんな中で、台北最大級の規模を持つのが士林夜市である。
食事の屋台はもちろんのこと、様々なゲームの出店も並び、毎日が夏祭りといった様相で、にぎやかな空気を楽しむことができる。
士林市場の地下には、巨大フードコートのようなエリアがあったのだが、現在はリニューアル中でそちらを利用することはできなかった。
そこで気を取り直して、地上の屋台を物色する。
結局涼麺をいただくことにした。
屋台ではほとんどビールを販売していないので、近所のコンビニで買いこんで持ち込む。
涼麺とは冷たい麵にニンニクの効いたゴマダレを和えた料理で、暑い時期にスルっと食べることができる逸品だった。
そして屋台グルメ定番の一つ胡椒餅もいただく。
餅というよりパイに近い記事の中には胡椒のきいたひき肉とネギがたっぷりと入っており、満足感もありビールも進む味わいだった。
本日のマグネット
本日のマグネットがこちら。
九份の提灯並ぶ階段が描かれた逸品だ。
これを購入したのは過去に訪問した際のことなのだが、せっかくなのでこの機会にお披露目しておこう。
こうして初日からフルスロットル大満足な一日を過ごした我々は、本日の宿がある台北の中心地・中山に戻ってくると、翌日に備えて眠りにつくのであった。
もちろん締めのビールを決めて。
最後までご覧いただきありがとうございました。
これから台湾シリーズスタートしていきますのでよろしくお願いします。