クラブハウスに魅せられて 1.デニーズ
かつて閃光のように現れ散った音声SNSの話ではない。
サンドイッチの話である。
クラブハウスサンドが好きだ。
トーストされたクリスピーなパンに挟まれた塩気のあるベーコンとチキン、そしてフレッシュなレタスにトマト。
三位一体とはクラブハウスサンドを表現するために産まれた言葉ではないかと思う時すらある。
そういえば高級ホテルでワーケーションをした時も、ルームサービスでクラブハウスサンドを食べたことを思い出す。
というわけで、このシリーズではいろんな店でクラブハウスサンドを食べた記録を残していこうと思う。
少しでもクラブハウスサンドの魅力を伝える一助になれば良い。
Vol.1 デニーズ
ファミリーレストランのチェーンの中ではデニーズが好きだ。
理由は明快、クラブハウスサンドを取り扱っているからである。
世にあまねく存在するファミレスチェーンの殆どで取り扱われていないことが不思議でならない。
バーミヤンや夢庵に置けとは言わないまでも、せめてジョナサンにはあってもいいのになと思う。少なくともヘビーユーザーが一人増えるというのに。
かつて住んでいた家の近くにはデニーズがあった。
その頃、昼過ぎにデニーズに出向き、クラブハウスサンドを食べ、ドリンクバーのコーヒーを過剰摂取しながら読書をするのが私の休日のルーティンの1つであった。
気づけばプラチナ会員になるほど通ったデニーズのクラブハウスサンドが、私の中でのクラブハウスサンドの基準になっている。
となればまず最初に取り上げるのはデニーズであって然るべきだろう。
アメリカの大手レストランチェーンからその名前と技術援助を受けて1974年に1号店をオープンさせたデニーズは、米デニーズ社からレシピや調理器具まで日本に持ち込んで洋風メニューを提供したそうである。
クラブハウスサンドはその当時から存在するメニューになっている。
グランドメニューの1ページをサンドイッチが占め、その最上部に彼は鎮座する。
TV番組「ジョブチューン」で一流料理人が店自慢の料理を審査し、しばしば炎上するコーナーにおいても、満場一致で合格したそうだ。
それはそうだろう。私が審査員でも合格にする。
しかし気になるのは、アメリカンクラブハウスサンドが番外編・前座として審査されたらしいということだ。
従業員おすすめTOP10!という企画に対して、クラブハウスサンドは11位だったかららしい。
そもそもおすすめ11位とは一体従業員たちは何を考えているのか。私の中で軽く炎上した。
それはさておき本題である。
コロナ禍になってから導入されたタブレットから注文し、待つことしばし。
主役の登場である。
堂々たる姿ではないか。
分厚いサンドイッチももちろんいいが、盛れるだけ盛ってみました感あるポテトも良い。
ドリンクバーの摂取が進む分量だ。
ポテト用にケチャップも添えられている。
早速食べようと、まずはケチャップの封を開けたくなるところだが、慌ててはいけない。
いかんせんポテトがてんこ盛りに盛られているため、初期状態ではケチャップを出すスペースが確保できないのだ。
それに気づかずケチャップを開封してしまうと、しばらく置き場に困って持て余すことになってしまう。
私クラスになればそんなミスは犯さない。
まずはサンドイッチを食べよう。
パンのクリスピーさがちょうどいい。そしてチキンとレタスとトマト。厚みのある卵とそれを包むオーロラソースのようなソース。
これだ。
これが食べたくてデニーズに来ているのである。
近年のリニューアルでパンが8枚切りから10枚切りに変わったそうだが、それも具材感が感じられ、また重くなりすぎないので個人的にはちょうどよく感じる。
1切れ食べたら、ここでようやくケチャップをオープンするのが定石だ。
空いたスペースに解き放とう。
ところで、デニーズのクラブハウスサンドにおいて、私が地味に評価している点が、サンドイッチを支えるピンである。
デニーズのピンは剣をかたどったものになっている。
食べ終わったピンを使ってポテトをいただくのもいいだろう。
別にピンが剣の形をしていようがいまいが、機能的には何ら変わりがない。
それでもなんとなく剣の形をしている方がいい。
心持ちとしては、お子様ランチの旗に喜ぶ子供のそれである。
男はいくつになっても胸に童心を秘めているものなのだ。
ポテトの山に突き刺せば、それは征服者の証である。
まぁ基本的にポテトは手でいくことになるが、そうなった際にデニーズのおしぼりは比較的厚みがあるのも評価が高い。
そんなデニーズのクラブハウスサンドに欠点を挙げるとすれば2つある。
1つ目はサンドイッチに挟まれたベーコンだ。
デニーズのクラブハウスサンドのベーコンは薄い。存在感がさほどない。
たまにそれが焼き過ぎであるときがあり、そうなるとよくわからない硬い板が挟まっているような感覚になる。
2つ目はケチャップの量の心許なさだ。
ポテトがてんこ盛りがゆえの弊害といえる。
いかに計画的に使おうとしても半分を過ぎた頃には、皿に残った僅かなケチャップをこそぎ取る醜態を晒すことになってしまう。
たまにケチャップが2つついてくることもあるが、毎回ではないので今ひとつ条件はよくわからない。
これらの点が改善された時、完全体となったクラブハウスサンドが誕生することだろう。
ところで、比較的最近デニーズのサンドイッチのラインナップに新たなメンバーが追加された。
ハーブ鶏とアボガドのサンドである。
クラブハウスサンドと同じくトーストされたパンを用いたサンドイッチである。
早速注文した。
クリスピーなパンにアボガドのコクとチキン。
悪くはない。決して悪くはない。
けど、どこか物足りない。
もはやクラブハウスサンドでしか満たすことのできない何かが私の中にあるのかもしれない。
最後までご覧いただきありがとうございました。