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目川探偵事務所 The GORK 1部「沢父谷姫子の失踪」編

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#転移

The GORK  2: 「学生街の喫茶店」

The GORK  2: 「学生街の喫茶店」

 2: 「学生街の喫茶店」

 ドアを押して入ると僕の頭上で、ガランゴロンと金属の空洞の中を、丸い玉が転げる音がした。
 ワックスと木の臭いのする店内は、やけに甘ったるい男性コーラスの歌声で満ちている。
 その発信源は、この店の一番奥にある派手なデコレーション付きの洗濯機の親玉みたいなものだった。
 確か「ジュークボックス」って言うんだ。
 僕は自分の頭の中に正解を見つけだし、ちょっといい気分で店

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The GORK  3: 「どしゃぶりの雨の中で」

The GORK  3: 「どしゃぶりの雨の中で」

3: 「どしゃぶりの雨の中で」

 その日、家に帰った僕は、早速、沢父谷から手渡されたDVDをデッキに入れてみた。
 円盤の表面にタイトルの類は一切ない。
 プレィが始まる短い空白時間に、嫌な予感がした。
 もしかしたらこれから僕の目の前で、沢父谷がくわえ込んだ男どもとのセックスシーンが展開されるのかも知れない。
 ・・屈折した意味のない冗談。
 何処かで、沢父谷とこのDVDに登場する男が、自分た

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The GORK  4:  俺たちは天使だ、ったっけ?

The GORK  4:  俺たちは天使だ、ったっけ?

4: 俺たちは天使だ、ったっけ?

「で、本気なのか?」
 所長は目を丸くしながら言った。
 どこの世界に、自分に依頼が来た事を驚くような探偵がいるだろうか、、でもいるのだ、それが僕のアルバイト先の所長である目川純という男だった。
「料金はウチのCランクでいいだろう?僕のバイト料からさっぴいてくれればいい。」
「しかしそれなら、、」
「それなら、そのバイト料持って他の探偵事務所に行けばいいって顔し

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The GORK  5: 「白いブーツの女の子」

The GORK  5: 「白いブーツの女の子」

5: 「白いブーツの女の子」

 沢父谷姫子の捜索は困難を極めていた。
 まるでこの世界から蒸発してしまったかのようだ。
 だから俺は回り道でも、あのDVDから沢父谷姫子の足取りを辿ろうとしていたのだ。
 そして失踪前の沢父谷を撮影した嘉門の居場所を突き止めた。

 その嘉門を歌舞伎錦町の路地裏で見つけ出したのは、いいものの、そこには思わぬ先客がいた。
 遠目では嘉門が「悪い女」に引っかかって絞り

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